dugudagii、レジンに閉じ込めた芸術性/CIRCLE of DIY Vol.12

日本各地のDIYを紹介し、大きなサークルを作ろう!という本連載。ロゴも新しくなり気分も一新です。12回目となる今回は、アートワークレーベル「dugudagii(ドゥグダギ)」をご紹介。

公開日 2017.03.01

更新日 2022.01.07

dugudagii、レジンに閉じ込めた芸術性/CIRCLE of DIY Vol.12

dugudagiiのアイコニックなプロダクトである置き物(右)と一輪挿し(左)。どちらもレジンクラフトと呼ばれる、溶かした樹脂を型に流し込み、形成する手法で製作されています。ドクロの置き物¥4,700+TAX、一輪挿し¥12,000+TAX<ともにdugudagii>

 

こちらもレジンクラフトで製作したスケートボード。花で作られたメッセージはまるでデッキアートのよう。トラックは実際のスケートボードに使用されているものをあしらっている。こちらは2016年12月に開催された個展で展示された作品。

 

こちらはセレクトショップ「2−tacs」とのコラボレーションで誕生した、リンゴを閉じ込めたレジンクラフト。¥20,000+TAX<dugudagii>

 

dugudagiiからリリースされている透明な樹脂で作られたドクロ型の置き物。その中には花や植物、種などを使って作られた人の顔がレイアウトされています。そんな毒気があるプロダクトながら、どこかインテリアとしての洒脱さとユーモアが漂います。その理由は、作り手の存在を感じさせるハンドメイドによる製造工程や、死を連想させるドクロと生きたまま閉じ込めた花のアンバランスさ。

ほかにも“I THINK YOU”と直球のメッセージを落とし込んだ一輪挿しやフルザイズで製作したスケートボードデッキ、リンゴを閉じ込めた置き物など、芸術性の高いプロダクトが並びます。そしてそれらのプロダクトは現在、感度の高いインテリアフリークからエッジの効いたストリートカルチャー好きまで幅広い層からの熱い支持を獲得中。そこで今回、dugudagiiの作品が生まれるアトリエへお邪魔し、デザイナーである福崎さんへ話を伺いました。どのような製作工程なのか?インスピレーション源は?気になる疑問に答えていただきました。

 

dugudagiiのデザイナーである福崎 進さん。

 

作業場に設置されたデスク上には、シリコンで製作した型やボトルに入ったレジンワークに使うエポキシ樹脂が並んでいます。

 

こちらはリンゴのレジンクラフトの製作風景。

 

-dugudagiiというブランドについて教えてください。

「ドクロの置き物で知ってもらえた人からは意外と思われるかと思うんですが、dugudagiiはクラフトブランドではなくアートワークレーベルなんです。もともとセレクトショップで働いていましたが、その後独立してdugudagiiの前身となるファッションブランドをやっていたんです。その後、グラフィックを中心にしたdugudagiiに変遷していった流れですね」

 

-ブランドを象徴するドクロの置き物はどういう経緯で誕生したんでしょうか?

「グラフィックって基本平面のところに描いていくと思うんですが、そのグラフィックを立体にしたいという思いがあったんです。なので、最初は透明でもないし、花や植物を使ってない、全く別の造形物を作っていました。その後に、花や植物を使ったドクロの置き物を作ったんです。そこに至る経緯ってすごく単純で、花や植物って生き物だから人間の内臓とかに似ている部分があるなって感じたんです。植物の根っこと人間の血管や神経だったり。それで顔を表現するってなった時に、同じくその時に興味を持っていた透明の樹脂が使えるなって思ったんです。とはいえ、固まるのに24時間以上かかったり、気泡が出来るだろうなっていう不安要素はありましたね」

 

プロダクトに使用している生花たち。プロダクトの仕上がりを左右する大事なパーツです。

 

使い終わった花は吊るしてドライフラワーに。

 

-花や植物をセレクトした理由はそういう部分にあったんですね。

「普段から特別大きな愛情を持っているわけではないんです。父親が実家で色々と植物を育てていたので、触れる機会は多かったとは思うんですが、花が好きというよりは材料として面白いなといった感覚です。ほかには絵を描くには0から製作しなくてはいけないですが、花ならそれを編集する作業なので、作業の1歩目は踏み出しやすいですよね」

 

-インスピレーションを受けたカルチャーなどはありますか?

「いわゆる男の子が通るであろうカルチャーは基本的に好きですね。スケボー、ファッション、音楽だったり。その中でも音楽が一番のベースですかね。中でも、海外メタル・ロックのCDジャケットって変なのが多くて、強いて挙げるならその辺りに影響されましたね」

 

作業場内には福崎さんの過去の作品やインスピレーション源となるアートワークなどがレイアウトされています。

 

スケートボードなどがディスプレーされた作業場。一番左のデッキは、福崎さんがアメリカのスケートボードブランド「CONSOLIDATED SKATEBOARDS」にアートワークを提供したもの。

 

こちらは福崎さんが製作したアートワーク。アブストラクトな雰囲気を放つ。

 

CDジャケットのグラフィックに影響を受けたと語る福崎さん。作業場にはギターやベースが飾られていました。「なんでもない安いやつを買ってくるのが好き」と福崎さん。

 

-レジンクラフトとはどう言ったプロダクトなんでしょうか?

「レジンクラフトって聞くと、ほとんどが女性の作るアクセサリーだったりして、大きいものを作ろうというものではないんです。僕はエポキシ樹脂を使っているんですが、大きいものを作るとしたらポリエステル系の樹脂の方が適しているでしょうね。今では大きいサイズを作っていますが、やっぱり気泡ができないように作ることが難しい素材です。あとは、エポキシ樹脂を流し込む型が自分で作れるようであれば、かなり楽しめると思いますよ」


こちらがシリコンの型を作るための“型の型”と呼んでいるもの。このベースに合わせて、樹脂を流し込む型を作ります。

 

こちらが実際に樹脂を流し込んでいる様子。

 

-大まかな製作の流れを教えていただけますか?

「まずは流し込む型を作る前に、その型を作るためのベースを作るんです。ポリウレタン系の素材で作るんですが、これがいわゆる“型の型”となるものです。それに合わせて樹脂を流すシリコンの型を作るんです。それが完成してようやく樹脂を流し込むわけですが、一気に流し込むわけではないんです。脳や目、鼻などの材料が程よく立体的に見えるように、いくつもレイヤーに分けて少しずつ樹脂を流し、材料を置いていきます。ここでレイヤーを作りすぎても、逆に平面に見えてしまったりと塩梅が難しい工程ですね。さらには樹脂が乾燥するのに24時間以上かかるので、作業日数も5〜6日かかるんです。そのほかにも気泡ができないために樹脂を真空状態にして空気を抜いたり、温めて粘度を低くして扱いやすくしたり、どうしても浮かんでくる気泡を処理したりと、細かな工程がいくつもあります」

 

製作途中の置き物。1度に樹脂を流し込むのではなく、少しずつ流し込んで形にしていきます。薄い層でも冬場なら1日は乾燥にかかってしまうそう。

 

サイズの異なるドクロの置き物。左が研磨前のもので、右が研磨済みのもの。水ヤスリなどを使って、丁寧に磨いていきます。

 

先述のように数日間にかけた工程を経て完成したドクロの置き物がこちら。確かにレイヤーに分けることで、奥行きが生まれ、レジンの透明なボディを生かした仕上がりに。平面と立体の繊細なバランス感覚が求められます。気泡に注意を払って製作することで、鮮やかな花が透明な樹脂の中で、しっかりと存在感を放ちます。

 

まずは正面から。程よい立体感を持たせるための工夫が施されています。それは複数のレイヤーを作って、植物の位置をずらすこと。

 

横から見た様子がこちら。素材がそれぞれ異なる位置に置かれているのがわかります。

 

脳みその部分はナツメの実を使用しています。背面には1つ1つ異なるメッセージが。

 

丁寧に時間をかけて生み出されるdugudagiiのレジンクラフト。グラフィックデザインを得意とする福崎さんによるプロダクトだからこそ、毒気の中にもアート性を感じさせる仕上がりとなっていんですね。ぜひ玄関やデスク、棚などに取り入れてみてはいかがでしょうか。

 

電球型のレジンクラフト。こちらは過去に商品として発売されたもの。

 

PROFILE

dugudagii(ドゥグダギ)

2000年よりスタートした福崎 進氏によるアートワークブランド。dugudagiiでのアイテム製作のほか、ファッションブランドやスケートボードブランドへのグラフィック提供を行います。ちなみにブランド名の由来は、苗字の福崎を“ふくざき…ふくだぎ…ドゥグダギ…”ともじったという、ユニークなもの。

ブランドHP:http://susumufukuzaki.com/

 

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