DIYもお任せなカフェのマスター〜café craft〜/CIRCLE of DIY Vol.01

新連載となる本企画はタイトルの通り、DIYの輪を広げるのが目的。ここ数年のうちに確かな市民権を得たこの文化はもちろん都心だけに限らず、全国各地で普及しています。ということで、我々のベースである品川オフィスから飛び出し自らのスタイルを築く人や企業にフィーチャーしていきます。そしてvol.01となる今回は東北の中心地となる宮城県にて取材を敢行。それぞれ違った形でDIYを発信する『café craft』、『analog』、『石巻工房』の紹介を3章に渡りお届けします。

公開日 2016.04.01

更新日 2022.01.07

DIYもお任せなカフェのマスター〜café craft〜/CIRCLE of DIY Vol.01

“家具作りの相談に乗ってくれるマスターがいるカフェ”というと、何だか物知りな人が喫茶店をやっていて色々なアドバイスをしてくれるというザックリとしたイメージを思い描く人も多いはず。でも、実際にしっかり相談に乗ってくれるうえに自分が作りたい物を形にできるカフェがあるんです。それが宮城県仙台市宮城野区にある『café craft』。

 

 

もともとは焼肉屋さんだったという建物を改装し作られた石黒建築工房に併設してcafé craftを運営。なぜこのような注文住宅や店舗の新築、リフォームの設計、施工を手がける建築会社と家具教室スペースもあるカフェを作ったのか、代表の石黒さんに話を伺ってみた。

 

「もともとの話しを辿ると大学は経済学部を出て、大工になってログハウスを建てていたんです。就活している時に一般職じゃ自分はダメなんだなって思ったんですよ。そこで何をしようと思った時に、手に技術をつけたいなと。通っていた大学も福島県にあったので、夏の合宿ゼミも森の中のログハウスのペンションなんかで受けられたんです。そういう自然のある環境が好きだったので、最初からログビルダーになろうと思いました。なので、ログハウスの雑誌を買ってきて、手当たり次第電話をかけて雇ってくれるところを探しましたね。そこが建築業界への入り口となり、とても厳しい師匠のもとで大工を3年間真面目にやったんです。そこで確信したんですが、やっぱり大工の確かな技術は本当に素晴らしいんですよ。でも、給料体制が日当だったり、社会保険がなかったり労働環境が厳しいのが現実でした。だからそういうことではなく、大工であっても安心して子育てができるような環境を作りたいなと思ったんです。あと、自分がやってみて感動した職業なので語れる人間になりたかった。それは大工としてじゃなく、結果的に落ち着いたのがちょっと変なんですけどカフェのマスター。実際に喫茶店で働いた経験もあるんですけど、モーニングをやっていると毎日来るお客さんもいるんですよ。そういった人はカウンターに座って頂けることが多いんです。カウンターってお客様との心の距離が不思議ととても近くになれるんですよ。初めて会った者同士なのに、自然と話ができる場所なんです。その環境でモノ作りの素晴らしさを語れたらと思い、将来絶対カフェを作ろうと思ったんです。博物館とか科学館とか市役所の施設じゃなくて、お茶を飲みに行ったら楽しくモノ作りしてるのが見える場所を作りたかった。そう思ったのが18年前。ようやく3年前に形にすることができましたね」。

 

 

経歴は特殊ながらもすべては自分の目標を叶えるため。取材を行った日もカフェには多くのお客さんが集まり、和やかな時間が流れていました。また、工房のほうでは実際に利用されている方もおり、「前に作った娘の学習机に合わせて棚を作っているんです。量産品の家具を買うよりも高くはつきますがやっぱり愛着度が違うし、娘も作業している姿を見ているので完成した時にすごく喜んでくれるんですよ」と優しくお話してくれました。その言葉通り、ここにも石黒さんの狙いが。

 

「ここは大人に向けての場所であってほしいんです。お父さんお母さんがここで学んだことを子供に教えてくれるのが理想。やっている工程を子供たちも見てるから、興味を持ってもらう機会にはなるので。あと、モノ作りをすることのメリットなんですが、モノの見方が変わるんです。一個何かしら作ってみると、実際に家具を見に行った時にその価値がわかるようになるんですよ。ブランドだけでじゃなくて、手のかけ方や素材のこだわりを見て判断できるってことは大事だと思うんです。だからこそ一度は経験してもらうということを切に願いますね。そのためにも最近は月に一回、ワークショップを開催しているんです。今までは会員限定だったんですが、そうじゃない人も参加できるようにしています。あとこういうことをやると自分の想像を飛び越えたアイデアを思いつく人がいるんですよ。そういう経験があると僕自身も勉強になりますね」。

 

 

提供するだけじゃなく、相乗効果がある関係性。素敵なことが生まれるこの工房の利用方法も伺いました。

 

「入会費が2000円。その際にノートを進呈して、そこにどういう風にモノ作りの絵を描くかをお教えします。実際やってみるとけっこう難しいし、プレッシャーを感じると思うんですよ。だから、基本材料の厚さや大きさなどを加味した材料の取り方までレクチャーするんです。そして、例えばベッド脇のスペースにぴったりの家具を探すとして、それまでは買ってきた家具に合わせてベッドを移動しなくてはいけなかった。でも、自分で作ることができるなら隙間に合わせてぴったりの寸法にできる。最初はどうしても普通の大きさでって皆さん言いますが、その普通というのが本当はいらないんですよ。それを踏まえて絵を描いてきてもらうんです。そしてノートを持ってカフェに来てみたら、マスターが詳しかったっていう設定なんです(笑)。その時点ではお金を頂かずに製作可能な図面に手直ししていき、そこに材料費とキット加工費を書いて確認してもらって大丈夫であれば次回までに諸々用意しておくという感じになります。工房の仕組みとしては場所代が1時間1000円。道具はすべて利用できて、消耗品はグラムで値段を決めています。作ってもらった家具が納得できないと嫌なので、オシャレかつ完成度が高くて、長く使えるようなモノ作りをしてもらいたいです。だから、道具も消耗品はプロ仕様です。あと、初めての人は必ずマンツーマンで見て、しっかりとコミュニケーションを取りながら作っていくようにしています。そして、慣れていったお客さんに関しては徐々に距離をとって、自分の手だけで作る喜びを感じてもらっています」。

 

 

環境作りもさることながら、キットに関してもこだわりがあるとのこと。さらにその材料から生まれたノベルティも意外な結果に。

 

「カット材料も高いクオリティで提供しています。1㎜単位の精度管理で作っているので、組み立てたときのずれや隙間は生じません。お客様から聞いた話ですが、その辺りがホームセンターとは違うようです。納得のいくものを作ってもらって、それを見た人がどこで買ってきたのって言われたら嬉しいですよね。あと、端材で作ったつみきが人気なのも意外でした。集めてるんですっていう声をお客さんから聞くので、こういうことも来てもらえるきっかけとなるならいいなと思っています」。

 

 

知れば知るほど、行ってみて何か家具を作ってみたくなる場所じゃないでしょうか。そして、昨今の何事も続けていくことが難しい時代において、石黒さんの経営者のポリシーも非常に感慨深いモノでした。

 

「カフェもおかげさまで2人正社員を雇うことができたんです。思いがあるからって、ブラック企業のようにはなりたくないんです。給与も基準法にのっとって出しています。有給休暇もきちんと提供しています。当然アルバイトのスタッフさんにも有給休暇制度を設けています。基本的なところをやらないと、やったことに対して語れないですよね。企業として長く続けていくことが大切ですから」

 

 

自分の目標に向かって、ここまで信念を持ち続けることは簡単ではないはずです。だからこそ、こうやってここにはDIYを楽しみ、自分の生活に彩りを加える人が集まるんだなと思わされました。宮城県の方に限らず、近郊の方はぜひ一度足を運んで見てはいかがでしょうか。最後にお届けする写真はランチメニュー。こちらも絶品だっただけに合わせてご賞味あれ。

 

 

SHOP INFORMATION

café craft

住所:宮城県仙台市宮城野区鶴ヶ谷京原200

電話番号:022-385-7311

営業時間:平日11:00〜18:30(L.O. 18:00)/日・祝11:30〜17:30(L.O. 17:00)/ランチタイム11:00〜14:00

定休日:毎月第2月曜日(祝日の場合は営業。翌火曜日は店休)

URL:http://www.iadw.co.jp/cafecraft/

 

 

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