SEE SEE〜静岡挽物〜デザインと出会った伝統工芸/CIRCLE of DIY Vol.10

自らの手でプロダクトやカルチャーを生み出すDIYerをフィーチャーする連載企画。記念すべき第10回目となる今回は、伝統工芸である静岡挽物(ひきもの)をモダンなインテリアへ昇華させたホームウェアブランド「SEE SEE(シー シー)」。地元である静岡から世界へ発信する彼らにインタビューを行いました。

公開日 2017.02.03

更新日 2022.01.07

SEE SEE〜静岡挽物〜デザインと出会った伝統工芸/CIRCLE of DIY Vol.10

SEE SEE

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スケートボードやスプレー缶、スープ缶といった多種多様なモチーフを一輪挿しというプロダクトへ落とし込んだホームウェアブランド「SEE SEE」。代表を務める湯本弘通さん、挽物師(ひきものし)である百瀬聡文さんによって、2014年11月にスタートしました。

特筆すべきは、先述のアイテム群はすべて挽物という静岡の伝統工芸である木工技術によって、オールハンドメイドで生み出されている点にあります。とはいえ伝統工芸と聞くと、丁寧な手仕事というイメージの反面、どこか古臭さや堅苦しさなどを感じてしまうのも事実。

しかし、そんなイメージを払拭するパワーがSEE SEEのプロダクトからは感じられます。その大きな理由は、伝統工芸の確かなクオリティや生産背景を感じさせながらも、しっかりと“今っぽさ”を取り入れたデザイン。過去と現在をミックスさせることで、伝統工芸の新たな未来を予感させるのです。今回は静岡県にあるSEE SEEの工房で取材を行い、ブランドの歴史や哲学、発想源について伺いました。

 

ひきもの【挽物】
“木材をろくろ(轆轤)や旋盤でひき,椀,鉢,盆など円形の器物をつくる技術およびその製品をいう。法隆寺の百万小塔は古代の挽物として著名である。” via:「コトバンク

 

SEE SEE

静岡県清水市の山間部にSEE SEEの工房はあります。同じ敷地内には、築150年の古民家を改築した百瀬さんのギャラリー「挽物所639」を構える。

 

工房内には挽物に欠かせない道具がずらり。窓に陳列された彫刻刀のような道具は、のみと呼ばれるもの。これ自体、挽物師自身の手で作っているのです。

 

SEE SEE

工房にある作業途中の材料たち。挽物は大きな木材を削り出し、小さなプロダクトを作り出していく木工技術です。

 

-2014年11月にスタートしたSEE SEEですが、ブランド設立の経緯を教えていただけますか?

湯本さん「以前勤めていたセレクトショップのバイヤー時代に、年3回はサンフランシスコへ買い付けに行っていたんです。その時に、エンブレムに枝を挿した鹿のような形のオブジェをよく見かけていて。それを日本の生花でやったら、メイドインジャパンらしさが出るのかなと思ったんです。その話を挽物師の百瀬に話をしたら、面白そうだなってなったのがきっかけですね」

百瀬さん「ひろさん(湯本さん)と初めて会った頃は、僕が挽物の師匠へ弟子入りした頃だったんです。その後2014年に独立して、さきほどのオブジェを挽物で作りたいっていう話をされて。感覚としては、元々の出会いが10年経って実ったという感じでしょうか。きっと出会いたての頃だったら技術的にもSEE SEEはできなかったと思うんです」

-まさに巡り合わせだったということですね。プロダクトのイメージソースを教えていただけますか?

湯本さん「西海岸のカルチャーですね。スケートボードやサーフィンはもちろん、フリーマーケットで出会えるアンティーク、ヴィンテージがイメージソースになっています」

-湯本さんからエンブレムを挽物で製作しようと提案された時はいかがでしたか?

百瀬さん「素直に面白いなって思いましたね。SEE SEEっていうブランドは、自分には持っていない発想力をひろさんからもらって、その分技術を自分が提供しているっていうイメージなんです。サンプル製作の前に打ち合わせをするんですが、1発OKの事もあれば、何回かやりとりを行ったりして形にしていきます。時間のかかる作業ですが、世の中にいいものを出したいっていう意識はあるので、妥協できませんね」

 

SEE SEE

SEE SEEの代表を務める湯本弘通さん。セレクトショップのバイヤーやバリスタの経験を経て、現在に至ります。西海岸好きと公言する湯本さんだけあって、ブラック×オレンジのジャイアンツカラーがしっくりとはまります。

 

SEE SEE

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挽物師である百瀬さんの作業風景がこちら。高速で回転する“木工ろくろ”や“旋盤”に木材をセットして、のみで削っていきます。

 

削り出した木くずたち。これを見れば職人の技量や使用した道具、何を作ったかまで、わかってしまうんだとか。そのため工房に関係者以外が立ち入ることは一般的には許されません。なかなか目にすることができない、貴重な1カットです。

 

-それぞれが考えるSEE SEEについての哲学を教えてください。湯本さんはいかがでしょうか?

湯本さん「デザイン面としては伝統工芸品なんだけど、“今っぽい”っていうところですね。伝統工芸を取り入れたプロダクトは当時からあったと思うんだけど、設立当時は高い技術レベルでありながら今っぽさのあるプロダクトがなかったんですよね。だから僕たちの場合は、スケートだったりグラフィティだったりを、シンプルなライフスタイルに落とし込めるものをブレずに作る、ということですね。あとは生花もブランドを語る上で大切な哲学のひとつです」

-多肉植物やサボテン、エアプランツといったグリーン人気が高まる中、生花にこだわる理由は何でしょうか?

湯本さん「お店をやっていた時も自分で花を活けていたり、活け花を2年くらい習っていたり、元々花が好きというのもあるんですが、子どもが学校の帰り道で摘んできた季節の花をそのまま刺して楽しめたらいいなっていう思いがあるんです。ハンドメイドのぬくもりと家族のぬくもりが一緒になった時の温かさが素敵だなって。それにアメリカだとダイニングに花を飾るってすごく普通のことなんです。そういうアメリカのカルチャーが、日本文化の挽物で体現されているのが面白いなって。あとは、大きい木材を小さく削り出す挽物の繊細さを表現するなら、生花の一輪挿しが最適だったんです」

-アメリカ×日本のカルチャーミックスということですね。次に作り手としての百瀬さんの哲学を教えてください。

百瀬さん「工芸品なんだけど、工業品でもあるというか。高いクオリティのものをたくさん作れるようにしたいですね。静岡挽物の調子が悪くなってしまった原因の一つに、機械化が進んでしまった点があるんです。なので、気持ちを込めて一つずつ作っていくことにつきますね。僕が100個作ったとしてもお客さんの手に届くのは1つだから、ばらつきがあってはいけないんですよ。自分にしかわからない小さなヒビだとしても基準値をクリアしていないのであれば、いくら製作に時間がかかった商品であっても破棄するんです」

-クオリティの基準値に関してお互い強い信頼関係が感じられますね。

湯本さん「本当に技術が高いので、信頼していますし、安心感がありますよね。カチッと期待以上のものを出してくれるので、安心して商談に出られるし、お客さんの前に出すことができています」

百瀬さん「こうやって信頼されていることも嬉しいですし、ひろさんは挽物のよさが伝わるようにうまくデザインしてくれるんですよね。そうなると、120%で返したくなりますよ」

湯本さん「ブランドも3年目に入って成熟していく中で、ものを作るのに理想的な関係性が作れてきましたね。お互い認め合う部分は認め合うことで、SEE SEEの色が出てきました」

 

SEE SEE

のみで削り出した後のヤスリがけの作業。挽物独自のツルツルとした手触りを生み出す、大事な工程です。

 

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番手の異なるヤスリを駆使して、仕上げていきます。ミクロ単位の微調整を手作業で行います。

 

SEE SEE

完成した挽物がこちら。左側の8角柱は削る前のもの。このカクカクとした状態から、美しい曲線を生む卓越した技術は圧巻の一言。

 

-ブランドも3年目に突入しましたが、大変だったとこはありましたか?

湯本さん「プロダクトデザインに関しては初めての挑戦だったので、静岡挽物という技術を使ったSEE SEEのデザインが受け入れられるかっていう不安感がありました。どうやったらバイヤーさんの目に止まるのか、スタイリストさんに使ってもらえるのか、わからないことばかりでしたね。ただ大変なことよりも、嬉しいことの方が多くて。お客さんに買ってもらうことだったり、セレクトしてくれるショップが増えたりと、嬉しくないことがないですよ」

百瀬さん「僕も苦労はないですね。当時は嫌だったことも、今覚えば全部プラスになっているんですよ。作り手側からすると、こうやって挽物師として生活できていることがすごく幸せなんです。それにこうやって地元に残っていても、日本や世界の人がSEE SEEの商品を手に取ってくれる。田舎な環境でも世界に発信できるんだよって、子どもに教えてあげることができることが嬉しいんです」

-最後に今後の展開を教えてください。

湯本さん「2017年は今以上に海外に挑戦したいですね。ヨーロッパ以外にもアジアの百貨店での取り扱いも始まるので、メイドインジャパンを広めていきたい。あとは、アーティストとのいいコラボレーションをたくさんしていきたいです」

百瀬さん「確実なものを確実に作っていく。これに尽きますね!あとは挽物師として弟子を取って、静岡挽物を広げていきたいです」

-どうもありがとうございました。

 

SEE SEE

 

SEE SEE / HOMEWARE COLLECTION

SEE SEE

60年代のヴィンテージスケートボードをモチーフにした二輪挿しは、伝統工芸の技術とストリートカルチャーのミックス感に注目を集めました。ファッション雑誌にも数多く取り上げられるブランドを代表するプロダクトの一つ。60 Skateboard [White Ash]¥38,000+tax<SEE SEE>

 

ブランドを語る上で欠かすことのできないファーストプロダクトである、エンブレムモチーフの二輪挿し(右)。バイイングのため訪れたサンフランシスコで見かけた鹿のオブジェから着想を得た本作。また、レジンクラフトをハンドメイド行うdugudagiiとのコラボレーション作もお目見え(左)。エンブレム型にかたどった樹脂の中にドライフラワーを閉じ込めています。右/Nirinzashi [White Ash]¥16,800+tax、左/SEE SEE x dugudagii¥22,000+tax<SEE SEE>

 


湯本さんが「ブランドらしさが詰まっている」と話す、スプレー缶をモチーフにしたお香立て&一輪挿し。名だたるアーティストが愛用したメジャースプレーブランド“KRYLON”のヴィンテージ缶を原寸でサンプリングしています。アメリカのストリートカルチャーと日本の伝統工芸のマッシュアップが実現しました。Spray Wood¥8,600+tax<SEE SEE>

 

SEE SEEのプロダクトと切っても切れない関係にある、アーティストとのコラボレーション作品。伝統工芸だからと堅い考えにとらわれず、人気作家から新進気鋭作家まで、湯本さん自らが気になったアーティストとのジョイントワークを行います。左上から順にFLOWER BASE (TESCO,CAMBELL'S)[SEE SEE×NAIJEL GRAPH×journal standard Furniture]¥6,800+TAX(each)、SEE SEE x YUSUKE HANAI¥6,800+tax、Forbidden Fruit (ABC) [SEE SEE x KDM products]¥6,900+tax、Jounal Standard × see see × Naijel Graph[参考商品]、KEY & COIN [SEE SEE x KDM products]¥5,900+tax、Plants [SEE SEE x KDM products]¥5,900+tax、Sango Bachi¥3,800+tax、Forbidden Fruit (Steve Jobs) [SEE SEE x KDM products]¥6,900+tax<SEE SEE>

 

スケートボードをモチーフにした、据置型の小さなお香立て&一輪挿し。こちらも実物のスケートボードさながら、趣向を凝らしたアートが落とし込まれています。左から順にSK8 Okoutate¥6,900、MARK GONZALES SK8 OKOUTATE [SEE SEE x MARK GONZALES]¥6,900+tax、Jounal Standard × see see × Naijel Graph[参考商品]、E.T. SK8 OKOUTATE[SEE SEE x NAIJEL GRAPH]¥6,900+tax、JACKSON MATISSE SK8 OKOUTATE [SEE SEE x JACKSON MATISSE]¥11,000+tax<SEE SEE>

 

SEE SEE

長崎県波佐見町の伝統工芸である波佐見焼で作られた生け花皿。SEE SEEらしいグラフィックアートを街中ではなく、波佐見焼にボムしています。SEE SEE x TALKY¥8,800<SEE SEE>

 

静岡のオーダーメイド家具ブランドKDM productsが製作したウッドフレームに、アーティストfaceが書き下ろしたスニーカーをプリント。大判のウッドフレームの中で表現されるスニーカーの迫力に圧倒されます。ALL STAR FLAME[SEE SEE x KDM products x face]¥58,000<SEE SEE>

 

SEE SEE / SOURCE of INSPIRATION

SEE SEEのプロダクトデザインのインスピレーションとなった、湯本氏のプライベートアイテムを特別にご紹介。カリフォルニアの空気感をまとったコレクションの根幹はここにありました。

木工のエンブレムに廃材で動物のオブジェが取り付けられたアート作品。先述の通り、サンフランシスコでも多く見受けられたというオブジェは、Nirinzashiのインスピレーション源となりました。日本に帰国後、百瀬さんに連絡を取り、思い浮かんだアイデアを伝えたところ意気投合。ファーストプロダクトの製作が始まりました。

 

サンフランシスコカルチャーとして欠かせないのがスケートボード。坂の多い街だけあって、数々のレジェンド級のスケーターが誕生しました。そんなスケーターたちが愛した60年代のスケートボードをサンプリングしたのが60 Skateboardです。ストリートと伝統工芸の融合を果たすことで、ユニークなインテリアが誕生しました。

 

アーティスト小田原愛美のイラスト。“なに見てんだよ”と波からのひねくれたメッセージが込められた、葛飾北斎の『波間の富士』をオマージュしたアート作品。こちらを60 Skatebordに落とし込んだコラボ作がリリースされました。

 

PROFILE

SEE SEE

SEE SEE

静岡県発のホームウェアブランド。静岡県の希少な伝統工芸である静岡挽物にモダンなエッセンスを取り入れた、一輪挿しやお香立て、フラワーベースなどのインテリアを取り揃えます。秀逸なミックス感覚によって生み出されるプロダクト群は、日本だけでなく海外のバイヤーをも魅了し、パリやドイツといったヨーロッパのほかアジアなど世界的に展開中。

URL:http://seesee-sfc.com/

Instagram:https://www.instagram.com/see.see.sfc/

TEL:Hanx PR 03-6677-7741

 

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