一人一人に向き合うことで生まれる、世界に一足の登山靴。〜goro〜/CIRCLE of DIY Vol.13

全国各地さまざまなモノ作り文化を発信しているDIYerをフィーチャーする本連載。今回は卓越した職人の技術で一つ一つオーダーメイドで登山靴を作り続ける「goro」に取材に伺いました。

一人一人に向き合うことで生まれる、世界に一足の登山靴。〜goro〜/CIRCLE of DIY Vol.13

大通り沿いに店を構える。この日も靴を作りに来た多くの人でにぎわっています。

 

ハンマーをモチーフにしたアイコンが目印。

 

巣鴨駅から歩いて10分、駅前の大通り沿いに店を構えるgoro。その人の足型から、一つ一つオーダーメイドで手作りも可能なこだわりの登山靴は、足元の悪い岩場や長時間のハイクで質の高さを実感できると評判で、全国から多くの登山愛好家が訪れる人気店です。1階にはグッズ、2階には手作りされた靴が所狭しと並んでいて、老若男女問わず、常にお客さんでにぎわいを見せる店内。その中で、一人一人と親しげに会話を交わすのが店長の森本さんです。

 

お客様それぞれのニーズにしっかりと耳を傾ける店長とウエルカムな雰囲気のお店。そして、その要望をきっちりと具現化してくれる優秀な職人さんたちが支えている工房。お客様一人一人と向き合うgoroの靴作りについて、森本さんに伺いました。

 

サイズや形状の異なる靴型がシェルフにずらりと並びます。

 

このお店を始めたきっかけは何ですか?

森本さん「きっかけはすごく単純ですよ、好きなことができるから。もともと卸売をやっていましたが、いいものを作ることより商売が先行していることに違和感を覚えてしまってね……。まぁ当たり前なんですけど、儲けの考えより、もっといいものを作りたいっていう気持ちの方が私は強かったんです。こうやって店に立ってお客さんの声を聞いて、お客さんの『もっとこうしたい!』っていう直接の要望に応えたいんです。この店をスタートさせてから44年、気がつけばあっという間ですよ」

 

店長のゴローさんはこの道60年のベテランです。

 

44年の歴史が詰まっている、まさに老舗といった印象ですが、ずっと靴作りをされているのですか?

森本さん「もちろん。僕は靴作りしか能がないんだから(笑)。今は登山靴がメインだけど、昔はスキー靴なんかもやっていたんですよ。でもそれは一過性のブームで需要がなくなったこともあり、登山靴やウォーキングシューズといった今の形に落ち着きました。あと僕自身、山登りが好きっていうのが大きいですね。もう歳なので、昔ほどはやれないですが、今でも続けています。山登りではすごく“靴”が重要で、自分も山登りをしていると、『もう少し小指の部分が広かったら』『カカトの芯が当たらなければ』とか色々な不満が出てくるんです。足場が悪いところを長時間歩いたとしても負担が少ない、そんな理想的な靴は、どれだけ自分の足に合っているかが大きなポイント。足のクセがある人は多いですから、自分の足に100%フィットする靴なんて普段から履く靴も含めて、レディメイドからは絶対に見つかるわけがないんです。そういった想いと、“理想の靴に近づけたい!”というシンプルな動機がgoroの原点にあります」

 

お店から少し離れた東十条にある工房。製甲から底付けまですべてこの工房で行なっています。

 

使い込まれた職人たちの道具があちこちに。

 

お客さんそれぞれのわずかな違いまで記された革を丁寧にカットしていきます。

 

50年以上を靴づくりに投じてきたベテラン職人によって“革”が“靴”へと姿を変えていきます。

 

オーダーメイドで靴を作ると当然ながら時間がかかりそうなイメージですが、1日でどのくらい作れるのですか?
森本さん「みんなで作っているから1日に10足くらいかな。もちろん作る工程の中でノリ付けをして乾かさないと次の工程に進めないなどあるので、厳密に言うと1日では一足も作れないんですが……。こだわっているのは、大量生産じゃなくて手作りの少量生産。お客さん一人一人のニーズと向き合って、ギリギリのところでやっているから苦労ももちろんありますが、反対に楽しい瞬間もあります。さっきのお客さんは登山靴作りに来たのに飼い猫の話で盛り上がっちゃって(笑)。オーダーメイドで靴を一つ作るとなると、お客さんと話す時間が長くなりがちなので、こういうことがよくあるんです。そうなると、ただ靴を作るっていうことじゃなくて、どんなお客さんなのかをきちんと知っている、いわば友人の靴を作っているような感覚でモノ作りができるんです。あまり意識したことはないですが、実はこれも大きな僕たちのやりがいですかね」

 

革を使用した靴は専用のミシンで丁寧に縫っていきます。

 

タカタカタカタカタカ……とミシンの小気味良い音が工房に響きます。

 

ドイツのミシンメーカー「PFAFF(パフ)」。プロアマ問わず、世界的にも有名な一流メーカー。

 

靴作りへのこだわりを教えてください。

森本さん「1番はなんといっても木型や革といった材料ですね。靴作りを60年続けてきましたが、当初からここだけは変わっていません。これは僕らの靴作りに限ったことじゃないと思いますが、やっぱり良いものを作るには良い材料と良い職人の両方が揃って初めて理想のものができあがると思うんです。創業当初から根底のポリシーだけは絶対に曲げず、がむしゃらにやってきました。新商品を生み出すことに苦労したり、試作品を試行錯誤したりといろいろ大変なことはありました。今も大変ですが(笑)。それでも自信を持ってgoroの靴をお客さんにお渡しできるのは、自分で目利きした良い革使っていることと、お客さんの注文をしっかりとヒアリングしていること、そして最高の一足を生み出してくれる良い職人がいるからこそだと思います」

 

使い込まれた味のある機械。DIY心をくすぐります。

 

これからの展望を教えていただけますか?

森本さん「展望っていうほど、立派なもんじゃないですけどね(笑)。今はどんな靴も軽量化だったり防水性だったり機能面の進化がすごく進んでるでしょ?だからそういったところは僕らも負けじと追求していきたい。それから登山靴だけじゃなくてウォーキングシューズにも、さらに力を入れていこうと思っています。まぁ、いろいろチャレンジすれば当然失敗もするだろうけど、それも楽しいんです。ただ、もっともっとお客さん一人一人が“いい!”って思ってくださるものを作りたいだけですよ」

 

長年培った手触りや感覚を頼りに、微調整を重ねていく。

 

制作途中の靴たちが次々と並べられていきます。

 

オーダーした人の名前がうっすらと書かれているのがわかります。オーダーメイドによる手作りの証。

 

それぞれの担当箇所を流れるように淡々と仕上げていく様子は、見ていてとても気持ちがいいです。

 

大量生産のモノが溢れる中で、その時代の流れに逆行するgoroのモノづくりは、「ないものは作ればいい」という“DIY”な精神と、それをお客様に提供するための“プロの技術”が伴ってこそ生み出されます。「そうは言っても、商売としては効率よくないし苦しいね(笑)。それでも好きだし作り続けますよ」と笑うゴローさんの心意気と、その姿勢に信頼を寄せるたくさんのファンがいるからこそ「goroのオーダーメイド登山靴」は、今もこれからも世界中で愛され続けるのです。

 

SHOP INFORMATION

goro(ゴロー)

登山靴を中心に、ウォーキングシューズからタウンシューズまで、お客さんのニーズに合わせて一点一点手作り。靴作り60年以上のベテラン店長とそれを支える職人さんが昔ながらの製法で生み出す“自分だけの一足”は、都内だけでなく、全国から足繁く通うファンも多いそう。

URL:http://www.goro.co.jp/

TEL:03-3945-0855

Text=岩田翼/Edit=effect

 

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