OIL MOUNT PRINTERS:人と人を繋げるシルクスクリーン

全国各地のDIYerにフィーチャーし、それぞれが発信するDIY文化を追いかける本連載。今回は前回の 貞盛“Velo”博喜さんと同じく福岡在住のアーティストをピックアップ。趣味で始めたシルクスクリーンが生涯の仕事へと変化させたOIL MOUNT PRINTERSの日高太一さんに話を伺いました。

2022.01.11

シルクスクリーン。最近はワークショップなどでも多く聞く言葉になり、読者の方々も耳にしたことがあるかと思いますが、改めてご紹介。孔版画の技法の一種で、メッシュ状の版にインクが通過する穴を作り、その箇所だけインクを落として印刷する方法なんです。ポピュラーな印刷方法で、Tシャツや生地へのプリントで多く使われています。そして、今回このシルクスクリーンを使ったワークショップを精力的に行うなど、印刷の面白さを自らの手で伝えているOIL MOUNT PRINTERSの日高太一さんにインタビューを敢行してきました。

秘密基地のようなアトリエで日々作業をしているとのこと。

——モノ作りをする方法は多岐にわたりますが、なぜシルクスクリーンに辿り着いたんですか?

「きっかけで言うと兄からもらったTシャツくんというシルクスクリーンのキットを譲ってもらったことでした。自分でやってみてすごく楽しかったんですよ。あと、クラブイベントでシルクスクリーンをライブでやっていた方の姿がとてもかっこよくて、自分も本格的にやってみようとなりました。それが23歳の時ですかね」

アトリエには実際に刷った作品もチラホラ。

——きっかけは趣味だったけれど、そこで意識が変わったんですね。そこからは仕事として請けていったんですか?

「まだ独立せずに再度就職して印刷の勉強しながら、シルクスクリーンでオリジナルも作っていて、10枚とかの少数の依頼とかも請けていました。あと、その当時から継続してAmbivalent.という福岡のアパレルブランドとは1点物の製作は行ってますね」

こちらがその1点物。ブランドのアートワークを使って、日高さんがシルクスクリーンを行うんだそう。

——すぐにOIL MOUNT PRINTERSというわけではなかったんですね。どのタイミングで独立を?

「実は実家も印刷会社で26歳の時に一回手伝う形で入社したんです。その時に窓口がしっかりしたので今までよりも大口で仕事を振ってもらえるようになりました。でも、印刷会社とはいえシルクスクリーンができる人間が僕しかいなかったので、そろそろ独立しようと思って去年の3月にOIL MOUNT PRINTERSを立ち上げました」

——屋号がOIL MOUNT PRINTERSと変わった名前ですが、理由はなんだったんですか?

「ここの地名が油山で、それを英語にしただけ(笑)。本当は予定にもなかったエリアだったんですが、油山の展望台が自分にとって安らげる場所だったのですぐ行けるところでいいかなと思って選びました」

油山には野生のイノシシが生息していることから、キャラクターにも使用したとのこと。

せっかくなので展望台まで連れていってもらいました。

——そんな基準で場所を決めて、屋号までそうしたんですね(笑)。では、話を戻してシルクスクリーンについて伺います。日高さんにとって、その魅力は?

「例えば外注で100個同じ物を作ってほしいって場合だと1mmでもずれが許されない。打って変わって、さっきの1点物みたいな依頼だと過去に300着ぐらい作ったんですが、何をどう印刷するかは自由。ただ同じことはできないし、かっこよくしなきゃいけないので、こちらもこちらで気が抜けない。そういう振り幅の広さが楽しいんですよね。やるたびに新しい発見があるし、奥が本当に深い。自分が知ってるのもまだまだ全体の1割程度だと思うから常に勉強です」

せっかくということで、目の前で1枚刷ってもらいました。手刷りはやはり機械プリントにはない温かみがありますね。

——その勉強ということでワークショップも積極的に行っているんですか?

「ワークショップは福岡でも徐々に増えてきていて、その流れでお誘いいただいたり、自分でも企画したりしてやっていますね。老若男女、色々な人が参加してくれるんですが、毎回新しい出会いがあるので楽しいんですよ。あと個人的に教育という面でも関わっていけたらなと思っているんです。保育園から小中学校ぐらいまでで、ただシルクスクリーンを伝えるのではなく、一回刷るためにインクを何グラム使ったとか作業過程の中で学びが生まれたらいいなと。ワークショップはとにかく、どれだけお互い楽しめるかが重要かなと思っています」

ワークショップ中の姿がコチラ。

——確かにワークショップは運営側も楽しむのが大事ですよね。ぜひ今後も色んな人を巻き込んでほしいです。日高さん自身は今のDIYが市民権を得ている状況をどう感じますか?

「福岡にサンマートというホームセンターがあるんですが、そこのノボリにDIYにかけて“どーんといっぺんやってみよう”って書いたあったのを見て面白いなと思った。なんかそういう風に日常で当たり前になってきている印象もあるんですが、モノの構造が知れるのがいいですよね。自分もアトリエ用に2×4材で棚を作ったり、持っていた木製ボックスの構造を真似て作ってみたり、色々やっています。その自分で切ったり、組み立てたりという経験値って絶対どこかで生きてくると思うし、アトリエを引越しするので新しい場所でもまた作りたいですね」
※無事に引越しが完了したご報告をいただきました。
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