貞森“Velo”博喜:読むだけで終わらないスポーツ新聞の新しい姿

プロダクトやカルチャーを自ら生み出し、独自の世界観を発信するDIYerにフィーチャーする連載企画。今回は、スポーツ新聞を財布やカードケースにDIYで生まれ変わらせるアーティスト貞森“Velo”博喜さんをピックアップしました。

貞森“Velo”博喜:読むだけで終わらないスポーツ新聞の新しい姿

スポーツ新聞。その名の通りスポーツはもちろんのこと、ゴシップ、芸能、レジャーなどの娯楽関連のニュースが掲載される新聞紙。読者の方々もほとんどの人が一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。ただ、そんな身近なモノを読み終わったら捨てるのではなく、財布やコインケースなど今までになかった姿へと生まれ変わらせるアーティストが福岡県にいるんです。そのアーティストが貞森“Velo”博喜さん。まず、なぜこのアーティストを紹介するに至ったかというと、かく言う筆者の専門学校時代の恩師なんです。当時からアッパーな方で既成概念を打ち壊す作品を数多く見てきたんですが、今回満を持してインタビューを敢行。恩師と生徒という関係性は一度置いて、改めてなぜスポーツ新聞に注目したのか、モノ作りにたいしてのこだわりなど気になる問いに答えていただきました。

姿を変えたスポーツ新聞がコチラ。

——まずご自身の中でDIYという言葉に対してのイメージはいかがですか?

「自分がスケーターというのもあって、日曜大工ってよりはパンクスピリッツなイメージがありますね。DIYしたいからやるっていうより、欲しいモノは自分で作るのが当たり前みたいな」

作業現場に同行させてもらったんですが、場所はまさかの公園。小学生に絡まれたり、見知らぬおじさんと話したり、意外なコミュニケーションが生まれるのが楽しいんだそう。

野外ということもあって蚊取り線香は必須アイテムとのこと。

——そのモノ作りにおいても、0から1という状態から作るということと、元からあるモノに手を加えて姿を変えるというのがあるかと思うんですが、ご自身のスタイルはどちらになりますか?

「スポーツ新聞で言えば後者になりますが、前者ももちろんあります。モノ作りする上で、自分の足元を掘り下げることを意識しているんですよ。そのほうが自分らしい作品ができるので。かのニーチェも『足元を掘れ、そこに泉あり』と明言を残していますし。あと、否定しているわけではないですが、身近なモノよりレアなモノや遠い存在のモノの方がオシャレでカッコイイと固定観念にとらわれてる人が多い気がするんです。例えて言うなら映画。なんか邦画より洋画のほうがオシャレ、面白いという声を聞くことがあるんですが、本質は映画であることに変わりはないし、どちらもそれぞれの良さがあるんです。だから、自分のモノ作りも海外で仕入れたモノで作ったらオシャレとかではなく、極力自分の身の回りにあるモノを使っています。その掘り下げる感覚こそDo it yourselfなのかなと」

使う道具も色々使ってみた結果、今のモノに落ち着いたそう。

——なるほど。そこで着目したのがスポーツ新聞だったんですね。Veloさんにとってその魅力はなんだったんですか?

「まずは家を出て、近所のコンビニに行ったら買えるという身近さ。そして、誰もオシャレな素材だと思わないから、いざこれで何かを作った時の変身っぷりが自分のセンスだと自覚しやすいんですよ。あとはやっぱり人の目を惹きつける見出しのクリエイティブは感服。新聞社の方になぜこのデザインなのか聞いたことがあるんですが、彼らもよくわからないまま今の形になったと言っていて、ストリートファッションに近いなと思ったんです。だから、僕にはポップアートに見えてしかたない」

この色やフォントなどにこだわった見出し使いはスポーツ新聞ならでは。

財布は蛇腹型になっていて、収納力も申し分なし。

——ポップアート!?大衆文化を人の目により多く触れさせるという目的は確かにその一種と言えるかもしれませんね。ちなみに使う新聞にもこだわりはあるんですか?

「使っているのはスポニチ(※スポーツニッポン新聞)と九スポ(※九州スポーツ)。スポニチは行きつけの喫茶店でもらえるからってのもあるんですが、カラーページが豊富。九スポはかなりマニアックな感覚ですが、スポーツ新聞の中でも洗練されていてオシャレ。他紙よりもデザインがシンプルで発色が良い気がします」

その行きつけという西鉄大牟田線、高宮駅近くにある珈琲ハウス詩州乎にも同行させてもらいました。

——細かい部分でそんな仕様の違いがあるんですね...。未知の世界だけに奥が深いです。話は戻りますが、そのスポーツ新聞をなぜ財布やカードケースにしようとなったんですか?

「これにはエピソードがあるんです。ガキの頃、新聞配達していたんですが、自転車の荷台に新聞を米袋に包んでタイヤチューブでくくりつけて配達するんですよ。言ってしまえばその構造もとに、新聞紙をラミネートしてタイヤチューブで縛って財布にしたっていう。ラミネートにも実は種類が沢山あるんですが、色々と試してみて今の柔軟性と強度を兼ね備えたモノを使っています」

タイヤチューブにビラミッド型の鋲を打って、ちょっとした反骨精神を表現。またピラミッドという所で自身のオカルト好きもアピールしてるそう。

——その新聞配達員の姿は目にしたことはありますが、まさかそれが発想の原点になってるとは思わなかったです。確かに理にかなった構造というわけですね。

あと、作られたモノを見るとスポーツ新聞をそのまま使ったのではなく、紙面をうまくコラージュしている印象を受けました。

「文字並びは大事にしてますね。財布やカードケースだと見える面が限られるので、一目のインパクトと開けた時の面白さを意識してます。ポーチになると完全に文学。実際に作る時は1ヶ月分ぐらいのスポーツ新聞を2、3日かけて切り抜いてファイリングして、言葉を繋げていく。人が見てプッと笑わせる文章を常に考えてます(笑)」

紙面で使われていた見出しをコラージュすることによって、文章に。その破壊力は読んでいただけたら伝わるかと。

——ポーチは初めて拝見したんですが、途中で韻を踏んでいたり、スポーツ新聞ならではのギリギリな言葉を使っていたりとインパクトがすごいですね。

「有名なブランドのいいモノを買うことをモチベーションの1つにする方もいると思うんですが、そのベクトルとはまた違って、文字を見るだけでテンションがあがるということもあるんです。それだけ文字には力が備わっていると思うんです。あとはモノがモノだけに会話のきっかけになるんですよね」

あの芸人さんの紙面を使ったモデルもありました。

——確かにカードケースを使っていた時に、「それ何?」って言われることが多かったです。ただのツールだけとして終わらず、コミュニケーションが生まれるのは素敵なことですね。

「オシャレなモノとか便利なモノとかを作ろうとしてるけど、その真理をつくと自分探しだと思うんです。自分が何者かっていう核を見出せるし、作ったモノには自分のクセが出る。もはや自分の分身というモノだからこそ、人が興味を持ってくれる。そういったモノ作りを今後も続けていきたいです」

カードケースはタイヤチューブのほかにボタンで留めるタイプもあります。この他にも、HPではVeloさんが手がけたプロダクトが見れるので要チェックです。

生活を豊かにするためのDIYだけではなく、自分探しのためと語るDIY。その思いがこもったプロダクトは確かに1つ1つ違った表情を見せ、存在感を放っていました。そして、皆さんも改めて自分の足元を掘り下げてみて、モノ作りを楽しんでみてはいかがでしょうか。もしかしたら、今までになかった自分と出会えるかもしれませんよ。

PROFILE

貞森“Velo”博喜
1974年生まれ、福岡在住。アパレル、専門学校講師、ギャラリー経営を経てものを産み出す側に転身。不思議で面白いこと、何気ない日常に隠された盲点や真理を見つけることが好き。趣味はスケートボード。

HP:http://velo-velo.com/
ブログ:http://velo-blog.jugem.jp
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