モクタンカン:森林と「単管システム」が生み出すやさしい素材/CIRCLE of DIY Vol.28
建築中の家やビルの外壁部分に、職人さんが作業する足場として金属のパイプが組まれているのを見かけませんか?その金属パイプ、通称“単管”を木の棒に変えたものを“モクタンカン”というそうで、足場の素材が変わるというシンプルな変化ですが、もの作りにおいて無限の可能性を秘めているのだとか。そこで詳しい話を、開発者の荒木源希さんにお話を伺いました。
公開日 2017.11.02
更新日 2022.01.11
大きな建物などを作る際に、パイプや金具を使用して足場を組むことを単管システムといいます。従来このシステムには規定のサイズの金属パイプが使われてきました。しかし、それを木製に変えることで、細かなサイズの調整が可能となったり、少人数で簡単に組むことができたりと、もの作りの現場に大きな変化が生まれるようです。
この木製のパイプの名はモクタンカン=木単管。小型の家具から野外用の大型構造物まで好きな形に組み立てられ、しかも木製のため加工も簡単です。一体どんな方が生み出しているのか、さっそく東京都は調布市深大寺に向かいました。
株式会社アラキ+ササキアーキテクツ共同代表の荒木源希さん。一級建築士のほか、首都大学東京非常勤講師、ICSカレッジオブアーツ非常勤講師としても活動されています。
―まずは、モクタンカンについて教えて下さい。
「町の建設現場で見かける足場には金属パイプをクランプという金具で固定する単管システムが使われています。モクタンカンは、その金属パイプを国産材のヒノキから削り出した丸棒へと置き換えたものです」
クランプは、金属パイプを繋ぎ合わせる金具。単管システムに欠かせないアイテム。
―単管システムとはどんなものでしょう?
「建築する建物全体を覆って、職人の足場を作るシステムです。パイプの直径を48.6mmに統一することで、どのクランプにも合わせることができます。たくさんの種類のクランプを使うことで、どんな構造にも対応出来るようになっています。ここに48.6mmに削った丸棒を当てはめれば、このシステムをそのまま使えます。ちなみに昔の足場は全て木で作られていて、今でもお寺の工事は木で作ります。現代の技術であるクランプと、古くからある木の足場、両方の技術を組み合わせたものがモクタンカンなんです」
社内の作業スペース。ここで製品を組み立てることも。
資材と同じく道具もズラリ。クランプだけでも色々な種類がありました。
―どのように48.6mmの丸棒を作るんでしょうか?
「テーブルの脚やイスの背中部分のパーツを作る技術なのですが、木材を丸く削り出す専用の機械があるんです。木の丸棒は金属に比べて3分の1の軽さなので、簡単に組み立てることが出来ます。使う道具も6角のスパナ1種類だけです」
―木でタンカンを作ることのメリットは何でしょう?
「天然の素材を使っているので自然の風景によく馴染みます。次に行うイベントでは、道端にベンチやイス、ハンモックを掛けるためのやぐらを組み立て、外でゆったりできる空間を作る予定です。ほかのメリットとしては、木の方が柔らかいので安心感が生まれますね。最近は偶然モクタンカンを見た方から、子供用の平均台を作って欲しいと依頼を受けました。お子さんが通っている体操教室では金属の平均台が使われているそうで、木の方が安全だろうと。わざわざ会社に来てくれてサイズから話し合いました」
モクタンカンで作るハンモックの模型。
お客さんの依頼から得た着想が、モクタンカンへ
―モクタンカンを作ったきっかけを教えて下さい
「以前から単管システムに興味を持っていたんです。単管はホームセンターに行けば、すべてのパーツが揃います。それを使って趣味でガレージを作るなど、いろいろとカスタマイズをして楽しむカルチャーがあるんです。そういう物を日々町で見かけて気になっていました。モクタンカンの発想は4年ほど前。団地をリノベーションした事がきっかけになりました。そのときに、金属の単管でインテリアを作りたいと依頼があったんです。棚やベッド、家具っぽい物を全て単管で作りたいと。一般的には使わない工業製品を、便利にカッコよく使いたいと考えている人は意外と多くいます。実際作ってみると、金属は雰囲気が固く、当たると痛い。これは木に置き換えた方がいいんじゃないのかと思いました」
―興味深いですね。製品化まではどのような道のりだったのでしょう?
「動き始めたのは、2016年の年末くらいからです。製品化にあたっては、木材流通の専門家・井上達哉さんに協力をして貰いました。一般の人にどうやったら木を楽しく使ってもらえるかを考えている方です。ご挨拶したのは、東京で行われた井上さんのトークイベントの会場。そのときにモクタンカンの話をしたら凄く気に入ってくれて、そこから一気に動き出しました」
山から暮らしへ。木こりが切った木が身近な存在になります。
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Japan
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