結局のところ、何が違う?リノベーションとリフォームの違いを解説!

「リノベーション」と「リフォーム」は、しばしば混同されがちで、曖昧なまま使われています。どちらも住宅に手を加え、性能やデザイン性をアップさせる手段をいいますが、明確な基準はありません。このような記事では、それぞれの違いやメリット・デメリット、リノベーションの例などについてご紹介します。

2023.04.20

「リノベーション」と「リフォーム」は、どちらも住宅に手を加え、住み心地やデザインなどをアップさせる手段として認識されています。しかし実際は、これらの違いをはっきりと理解している人は少なく、同様のものとして扱われているケースがほとんどです。
そこで当記事では、リノベーションとリフォームの違いやメリット・デメリットなどについて解説します。理想の住宅にどこまで近づけられるのか、考える参考にしてみてください。

知っているようで知らないリノベーションとリフォームの違い

「リノベーション」と「リフォーム」はそれぞれ、法律などによる明確な定義がなく、メディアや建築・不動産業界が各々の解釈で使い分けをしているのが現状です。「一般社団法人 リノベーション協議会」の定義・分類によると、リフォームのほうがより広義的な意味を持ち、リノベーションを含むとされています。
目的で比較してみると、リフォームは原状回復を目的に行う改築および修繕箇所への部分的対処であるのに対し、リノベーションは機能や価値を再生させる改修で、家の暮らし全体に対処した包括的な修繕を指します。

リノベーションとは?

リノベーションとは、中古住宅を住人のライフスタイルや好みに合わせてつくり変え、新たな価値を与えることをいいます。部屋の壁や床、天井などを取り払い、骨組みだけのスケルトン状態にしてから、希望する間取りに変更します。普段は見られない給排水管のダメージもチェック可能で、プランニングの自由度が魅力です。
そのほかの施工イメージとして、狭い間取りを広いLDKに変える、仕事や趣味に使える書斎スペースを設ける、映画・音楽鑑賞に適したシアタールームを設けるなどの例が挙げられます。住宅が持つ美点を最大限に活かしつつ、住宅の性能の向上が期待できます。

リフォームとは?

リフォームとは住宅の模様替えから設備交換、増改築まで幅広い範囲の工事を指しますが、一般的には「古くなった住宅の一部を新築時の状態に修繕・回復する」という意味合いで使われるケースが多いようです。経年劣化などにより性能が落ちた住宅を、新築時の状態に戻すような工事が該当します。
見積もりの観点から考えると、リノベーションはプランニングからデザイン設計、施工までを一括りに考えるのに対し、リフォームは純粋に工事内容・工事費用に着目しているのが特徴です。トイレやキッチンなど水回り設備を最新の商品に交換する、汚れが目立ってきたクロスを張り替える、老朽化した屋根や外壁の塗装・張り替えなどが主な施工例です。

リノベーションとリフォームのメリット・デメリット

出産や定年、子供の独立など、暮らしの変化を機に住まいを変えたいと考える方は多いでしょう。しかしながら、すべての理想を実現させようとすると、それなりの手間や費用が必要となります。リノベーションとリフォームそれぞれのメリット・デメリットを踏まえ、どこまで希望が実現できるのか検討してみましょう。

リノベーションの特徴

メリット1:物件の選択肢が増える
希望エリアで予算内の新築物件を探すのは難しく、東京・名古屋・大阪などの都市部ではなおさらです。さらに立地や土地の広さ、公共施設や自然環境などを加味すると、いっそう困難になります。
一方、国土交通省が発表した「既存住宅市場の活性化について」によると、全住宅流通量のうち中古住宅の流通シェアは約14.5%(平成30年)にとどまるものの、首都圏の中古マンションの成約数は約3.81万戸と、新築マンション販売戸数3.12万戸を上回りました。
事業者の広告時に、国が商標登録したロゴマークの使用を認める「安心R住宅(平成30年4月1日標章使用開始)」制度の創設など後押しもあり、中古住宅市場は今後、さらに供給が安定していくと見られています。リノベーションを前提に物件を探せば、希望に適った物件が見つかる可能性が上がるでしょう。

メリット2:自分好みの空間を設計できる
リノベーションには自分好みの空間設計が可能という、新築にはないメリットがあります。内装やインテリアはもちろん、間取りや建具など住宅一棟を自分好みに演出できます。漆喰の壁や無垢材のフローリングなど自然素材を取り入れる、和室を撤去し仕切りのない広々リビングにする、部屋の中央にアイランドキッチンを配置する、輸入設備機器や造作洗面台を取り入れるなど、新築設計に比べ臨機応変に対応できるのが魅力です。

メリット3:同条件なら新築に比べて費用が安い
新築は購入時をピークとし、時間とともに資産価値が下がり続け、築15年を超えた辺りで減りが緩やかになります。周辺地域の開発状況や立地によって、価値が維持されたり、上昇したりするケースがあるのです。
一方リノベーションは、費用こそかかりますが、新築と比較して資産の目減りが少なく、中古住宅購入時よりも価値をアップさせることも可能です。また、リノベーション用に売り出されている物件には、購入後に施工を進めていく物件と、すでに施工済みの物件があり、特に後者は自分でプランニングするよりも工事費用が割安な場合が多いです。オーダーメイドに比べ、ノウハウが蓄積されているため施工がスムーズなうえ、業者が建材や設備機器類を一括購入しているためコストダウンできます。

デメリット1:住めるようになるまで時間がかかる
リノベーションの場合、中古住宅を購入してから建築検査や設計、施工などの工程が加わるため、引き渡しまでおよそ3~6ヶ月かかります。多忙により打ち合わせの時間がなかなか取れない方や、賃貸物件の更新・退去が迫っている方、子供の小学校入学などタイミングを合わせなければならない方は、事前に入念なスケジュール調整が必要となります。
また、リノベーションに限った話ではありませんが、いざ着工できても遅延トラブルが生じれば、すべての予定が後ろにずれこんでしまいます。

デメリット2:構造によってはできない施工がある
建物の構造上、施工範囲が制限されるケースがあります。
一般的な中・低層マンションは、住戸の四隅に太い柱や、壁に凹凸があるRCのラーメン構造をしています。しかし、極まれに室内に柱が1本もない「壁式構造」が採用されているケースがあります。壁式構造では動かせない壁や梁があるため、構造壁をパーテーションとして活用したり、建具で隠したりなどの工夫が必要です。
またマンションの管理規約上、共用部に当たる玄関扉や窓、バルコニー、一部専有部などは自由に変更することができません。設備機器にも制限が設けられるため、制限の枠を超えた工事も対応不可となる点にも注意が必要です。

デメリット3:予期せぬ瑕疵が見つかることも
イレギュラーな補修や補強により、当初予定していた予算をオーバーしてしまうリスクがあります。「瑕疵」とは、欠陥を意味する法律上の用語で、あるべき機能や性能が備わっていないことをいいます。見た目には問題がなさそうでも、解体時に排水管の破損やシロアリによる躯体の腐食など、予期せぬダメージが発見されることもあります。
また、築年数が長くても丈夫な住宅は間々ありますが、1981年以前に建てられた住宅に関しては新耐震基準を満たしているか要確認となります。

リフォームの特徴

リフォームの最大のメリットは、住み慣れた家にそのまま住み続けられる点です。
建て替えやスケルトンリノベーションを選択すると、愛着のある面影や見慣れた景色は消えてしまいます。不備のある部分だけを修復するので工期も短く、躯体に関わる工事などを除き、仮住まいが必要となるケースはほぼないでしょう。
施工に関するデメリットはリノベーションと重複します。家の雰囲気を残したい方や、予算をなるべく抑えたい方はリフォームがオススメです。

リノベーションで叶う!素敵な間取り実例

家族の生活をイメージし、動線をつくり生活を重ねていくなど、理想の間取りに至るまでには多くのステップがあります。
ここからは、ライフスタイルから導き出したマンション・戸建てのリノベーションの実例をご紹介します。家づくりのヒントにしてみてください。

中古マンション間取り変更実例

マンションは躯体や窓が共用部である都合上、戸建てよりも成約が多くなりますが、その分工夫を凝らす楽しみがあります。
まずご紹介するのは、約40㎡の築6年の築浅マンションで、LDKをリノベーションした例です。工期は1ヶ月で、費用は約260万円です。

事例1:和室の壁をなくして一体感のあるLDKに
マンションのリノベーションにおいては、家族のライフスタイルに合わせたカスタマイズが重要なので、和室より洋室のほうが適しています。また、開放感のある空間を希望する方が多いので、細かく仕切られた和室を改装するのは効果的です。
和室は真壁で柱を露出させたつくりになっており、洋室に変更する際は、石膏ボードを重ねてからクロスを張ります。床や天井の出っ張りは削れないため、高いほうに合わせて下地をつくります。障子はカーテンにチェンジし、押し入れは洋室仕様のウォークインクローゼットを導入。淡いパープルグレーの壁と、ホワイトアッシュの無垢フローリングで、洞窟をイメージしたテーマカラーでプランニングしています。天井のスポットライトは黒をチョイスしているので、空間の雰囲気がグッと引き締まります。

事例2:見せる収納計画
収納計画はリノベーションの要です。好きなものに囲まれて暮らせる“見せる収納”なら、ディスプレイ用の家具を置く必要もなく、壁面を有効活用できます。
キッチンの背面にある造作棚にはお気に入りの食器を設置。お皿がさっと取り出せるため、使い勝手のよさも兼ね備えています。

中古住宅の間取り変更実例

続いては、軽量鉄骨造の112.8㎡、築40年の中古一戸建てを費用1,630万円でリノベーションした事例です。軽量鉄骨造には筋交いの「ブレース」が不可欠なので、ブレースを避けて間取りを考えていきます。

事例1:土間から和室とLDKがつながる開放的なプラン
玄関には両開きの大きな扉を採用し、8畳の和室を玄関土間につくり変えました。玄関前にある駐車場からアウトドア用品をまとめて収納できる空間になっています。
土間と和室の間にはペアガラスの内窓を取り付け、LDKまで一体感のあるデザインに。天井高を抑えることで、開放感と広さがより強調されています。国産杉の無垢フローリングはやさしい肌触りが特徴で、日焼けによる経年劣化が独特の味を演出します。

事例2:キッチンから浴室まで回遊性のある家事動線
キッチンには、シンクとコンロが別になっているセパレートタイプを採用。壁面にモザイクタイルを使ったオシャレな空間となっています。シンクの奥には大容量のパントリーが配置されていて、キッチンからパントリー、その先には洗面所と浴室が続きます。
オリジナルの洗面化粧台や、モロッカンタイルのクッションフロアなど、温かい風合いの素敵な空間に仕上がっています。

細かな差異こそありますが、理想の住宅に近づけるという一点においては、リノベーションとリフォームの間に何ら違いはありません。いずれにせよ、入念な計画と予算が必要になるため、いざという時はリフォーム業者に相談してみるのもオススメです。プロの観点から有益な意見をもらえるかもしれません。

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