小さな家で心地よく暮らす。参考にしたい施工例と、狭小住宅設計のポイント

近年人気を集めている小さな家。この記事では、狭小住宅で暮らすメリット・デメリット、快適に暮らすための設計ポイントなどを紹介します。限られた空間を上手に使うアイデア満載の施工例にも触れていくので、ぜひ参考にしてください。

2022.01.07

これから中古住宅を購入し、リノベーションを検討している場合、なるべくお得に物件を取得できれば嬉しいもの。狭い土地に建てられた狭小住宅は、間取りや構造などの関係で安く購入可能案ケースも多いです。ここでは、狭小住宅のメリット・デメリット、設計のポイント、施工例などを紹介します。小さな家に住みたい人や、狭い土地に家を建てたい人などはぜひ参考にしてください。

「狭小住宅=暮らしにくい」ではない!小さな家で暮らす3つのメリット

住宅は必ずしも広い方がよいとは限らず、ライフスタイルや生活の優先順位などによって必要な広さを見極めなければなりません。近年、「都会の限られたスペースを活用したい」「土地代を安く済ませたい」などの声も多く、小さな家が注目を集めています。
ここでは、ほかの住宅とは異なる、狭小住宅ならではのメリットをまとめました。

土地代はもちろん、固定資産税や都市計画税など、税金面の負担も軽く済む

狭小住宅は、言葉の通り通常よりも狭い土地に建てられた住宅のことで、多くの場合は50㎡(15坪)以下の土地に建てられたものを指します。土地代が安く済むのはもちろんですが、固定資産税や都市計画税など、税金の負担も一般的な住宅より軽くなるのです。特に、200㎡以下の土地は小規模住宅用地に認定され、評価額が減額されるため、税額の大幅な削減が期待できます。

【固定資産税の算出方法】
一般住宅用地:3分の1に減額した評価額×税率
小規模住宅用地(200㎡以下の場合):6分の1に減額した評価額×税率

【都市計画税の算出方法】
一般住宅用地:3分の2に減額した評価額×税率
小規模住宅用地(200㎡以下の場合):3分の1に減額した評価額×税率

また、税金だけでなく、建築申請や登記費用を抑えられるメリットもあります。物件取得や維持にかかる費用をなるべく安く抑えたい人にオススメです。
参照元:https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/shisan/kotei_tosi.html#ko_04_02
https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/shisan/kotei_tosi.html#ko_02_07

立地条件のよい土地を選択でき、生活における利便性の向上が望める

狭小住宅は、都市部の限られたスペースを活用して建てられます。例えば、「駅から近い・都心に出やすい」といった高い利便性を備えた土地にも、建設しやすいでしょう。通勤や通学が電車だけで可能になれば、自転車や車などを所有する必要もなくなるかもしれません。駐輪場・駐車場代や保険代、車関連の税金などをカットできるメリットも得られます。

冷暖房やメンテナンスの費用効率がよく、将来の出費が抑えられる

狭小住宅は空間が狭いので、冷暖房効率がよいという特徴もあります。夏や冬もすぐに空調を整えられるため、快適な空間を作りやすく、光熱費も抑えられるでしょう。
また、床材の張り替えやクロスの交換、外壁・屋根塗装など、必要なメンテナンスの面積も狭いため、将来のリフォーム費用を抑えられます。つまり狭小住宅は、上手に使用すれば税金や物件取得費用だけでなく、日々の出費やランニングコストなども削減できるのです。

一方でリフォーム時にはデメリットも?知っておきたい「小さな家」の注意点

土地代や税金などコスト面でメリットの大きい狭小住宅ですが、リフォームを行う時にはデメリットが伴う可能性もあります。ここでは、小さな家だからこそ起こりうるトラブルや注意点などを紹介します。

資材運搬が難しい場合など、建築費用が割高になりやすい

狭小住宅は、建築費用やリフォーム費用が割高になりやすいデメリットがあります。「大型トラックを家の近くに停められず、資材を小分けにして運ぶ必要がある」「資材の搬入に人手が必要で人件費がかかる」などのケースも多く、工事費用や諸経費が膨らみやすいのです。また、駐車場や資材を置くスペースがない場合、プラスの費用がかかることもあります。ほかの住宅よりも、建築費用の単価を多く見積もっておくと安心でしょう。

将来的なメンテナンスや追加工事を考慮しておく必要がある

住宅を建てる時には、隣の家との距離が近くなりすぎないよう、ルールが定められています。敷地境界線から建物外壁の距離は、最低でも50cm空けなければなりません。「一火災が起きた時に被害を最小限に抑えること」「騒音などの近隣トラブルを防ぐこと」などを目的とするルールで、地域によって最低距離が異なることもあります。

狭小住宅もこのルールの範囲内で家を建てる必要があります。特に注意するべきは、エアコンの室外機設置時や外壁塗装時などです。隣家との距離が50cmギリギリだと、室外機と塀との隙間が狭過ぎ、エアコンが故障したり、効きが悪くなったりすることもあります。また、隣の住宅との距離が近過ぎると「外壁塗装の際に足場を設置できない」といったトラブルも起こり得るでしょう。
たとえ狭小住宅の建築自体は問題がなくても、将来メンテナンスや追加工事を行う時にさまざまなトラブルが起こる恐れもあります。そうした点を考慮し、隣家との距離にはある程度余裕を持たせてください。

延床面積確保のために階数を増やすと、設計の自由度が下がる

狭小住宅は、限られたスペースを有効活用するために、間取りや設計を工夫することが多いです。延床面積を増やすために3階建住宅にするケースもありますが、地域や住宅の状態などによっては施工できないこともあるので注意しましょう。防火地域に指定されている地区では、3階建て以上の木造住宅を建てることができません。

また、3階建住宅は2階建や平家などに比べて地震で揺れやすいデメリットも。リフォームで階数を増やす場合は、併せて耐震補強や地震に強い構造に変更する工事などが必要になるケースもあるでしょう。

オススメの間取りは?狭くても、家族みんなが伸び伸び過ごせる住まいづくりのポイント

小さな家でも、間取りの工夫次第で開放感のある居心地のよい空間になります。ここでは、狭小住宅だからこそ取り入れたい間取りのコツや、住まいづくりのポイントを紹介します。

「間仕切り」は少ないほどいい?スキップフロアなどの活用で空間に区切りを

限られた空間に開放感を持たせるポイントは、なるべく間仕切りを減らすことです。部屋を細かく区切り過ぎると圧迫感が生まれ、1つひとつの部屋も十分な広さが確保しづらいでしょう。どうしても部屋を分けたい場合はカーテンや可動壁を導入し、必要な時のみ使用するのがオススメです。
また、床の高さを変えて部屋を分けるスキップフロアは、壁を造らず視覚的に空間を分ける効果があります。部屋に奥行きを与え、開放感をアップしてくれるので、狭小住宅にぴったりです。加えて、スキップフロアの下部を収納として使えるメリットもあります。

収納問題は、「階段下」「壁」「家具の下」などのデッドスペースを逃さず解消

小さな家では、収納スペースを確保するのが難しいもの。タンスやクローゼットなどの収納家具を設置するほかに、階段下や壁、家具の下などのデッドスペースを有効活用することが大切です。狭小住宅の間取りを決める時は、余ったスペースを収納として使えるかどうか業者に相談してみてください。
「ニッチを作れる壁が限られている」「大きな収納を作れるデッドスペースがない」といった時は、既存の家具やインテリアなどに合わせて、収納量を増やした造作家具を設置するのもオススメです。

家事動線や家族のコミュニケーションも◎!「リビングは2階」が暮らしやすい

敷地の狭い家を3階建にする場合、上下の移動が多くなる分、水回りやリビングなどをどこに配置するかが重要です。よく使う部屋を1階や3階に配置すると、移動が大変になってしまいます。
例えば家族全員が使用するリビングは、2階に配置するのがベターです。また、最もアクセスしやすい階にリビングを置くことで、家事の導線を確保したり、家族のコミュニケーションを促したりといった効果も期待できます。

狭小住宅とは思えない!居心地のいい「小さな家」施工例5選

ここでは、デザインや間取りなどにこだわり、暮らしやすい空間を実現した狭小住宅の事例を紹介します。無駄なスペースをなるべく削減した住宅や、大容量の収納を設置した住宅など、小さな家だからこそできるアイデアをまとめました。

リビングの吹き抜けが開放的!小さくても圧迫感なく暮らせる家

「イエタッタ」より、約109平米(33坪)の小さな3LDK住宅です。家の中心には4.5帖の吹抜けを造り、開放的な空間に仕上げました。階段下収納やスキップフロアなど、空間を無駄なく使う工夫も見られます。

採光・目隠し・広々見え!一石三鳥のウッドデッキが特徴的な小さな家

「stylekoubou」より、LDKの南側にウッドデッキを設置した事例をピックアップしました。採光を確保し、家の中を広々と明るい空間に見せています。ほかにも、圧迫感の少ないスケルトン階段を取り入れる、窓の位置を工夫するなどのアイデアで、開放的な空間を演出しています。

廊下のスペースをカット!無駄を省いた15坪の平屋の事例

「LIFULL HOME’S」に掲載されている、コンパクトな1LDKを紹介します。わずか16坪(約52平米)の土地に、無駄を省いた15坪(50㎡)の平家を建築しました。廊下を省いた最小限の導線と、光を取り込みやすい大きな窓がポイントです。

大容量の屋根裏収納が嬉しい、工夫の詰まった「茶室のある家」

「ハウスネットギャラリー」より、限られたスペースを活用して茶室を造った事例を紹介します。客室としても使える茶室は、手漉きの和紙を施したおもてなし感溢れるデザイン。ロフトや屋根裏収納などでスペースを生かしつつ、こだわりの空間を造りました。

吹き抜けより省スペース!光を通す強化ガラスの廊下で、暗さと閉塞感を解消した小さな家

「エスリンク」に掲載されている、敷地面積79.74㎡の小さな住宅です。2階の廊下に強化ガラスを使用し、下の階が透けて見える大胆な設計。吹き抜けよりもコンパクトに、実用性を兼ねながら閉塞感を解消しました。

狭い土地でも、間取りや設計を工夫すれば住みやすい家が建てられます。最近では、物件取得の費用を抑えられる、ランニングコストがかからないなどの理由で、中古の狭小住宅を購入する人も多いのです。立地条件に合わせた設計や、ライフスタイルに合わせた最適な間取りなどを相談したい人は、住宅設計のプロ「カシワバラ・コーポレーション」にお任せください。

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DIYer(s)

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