バリアフリー化とは?取り組みの現状や事例、導入のポイントを徹底解説!

本記事では、住宅をバリアフリー化する方法を紹介します。そもそもバリアフリーとはどのような意味か、現状の課題点には何があるのかなどを踏まえた上で、バリアフリーリフォームのポイントをまとめました。リフォームにかかる必要な費用や改修事例などを知りたい人は、参考にしてみてください。

2023.04.15

今暮らしている住宅をより長く快適に使うために、バリアフリーリフォームを行う人が増えています。水回りを中心にさまざまな種類の施工がありますが、どのような点に注意して、リフォーム計画を立てればよいのでしょうか。この記事では、バリアフリーリフォームのコツや費用相場、導入事例などをまとめました。今後、家のバリアフリー化を考えている人は、本記事をきっかけに検討してみてください。

バリアフリーとは

「バリアフリー」とは、高齢者や障がいを持った人が快適に社会生活を送れるように、”障壁”となる問題を取り除くことです。障壁のイメージとしては、「車椅子だと入り口が狭くて通れない」「階段に手すりがなく上りにくい」「スロープやエレベーターが設置されておらず不便」など、移動に関する不具合を思い浮かべる人は多いでしょう。これらは「物質的なバリア」と呼ばれており、ほかにも「制度的なバリア」「文化・情報面でのバリア」「意識上のバリア」など、さまざまな種類の障壁があります。
バリアフリーでは、高齢者や障がい者が日々感じているさまざまな障壁を理解し、より快適に過ごせる設備や仕組みを作っていくことが大切です。

バリアフリー関連の法律

政府は、日本のバリアフリー化を促進するため、2006年に「バリアフリー新法」を制定しました。バリアフリー新法とは、高齢者や障がい者、妊産婦、ケガ人などが安心して移動や施設利用ができるように、設備の改修を求めた法律です。

バリアフリー新法は、高齢者や障がい者から直接聞いた、改善してほしいポイントにより、内容を決定したことが特徴と言われています。これにより、以前よりも安全性の高い施設や交通機関などが増え、体の不自由な人でもスムーズに移動しやすくなりました。また、2018年にバリアフリー新法の一部が改定され、近年はいっそうバリアフリーの取り組みが強化されています。
こうした新法への理解が広まる今日、ハード面の対策だけでなく、従業員の教育や意識といった、ソフト面の対策も注目を集めています。つまり、障がいを感じる人の身になって考え、行動を起こす「心のバリアフリー」を進めることも、現在の課題のひとつとなっています。

バリアフリー化の問題点

日本では、以前よりも社会のバリアフリー化が進み、多くの設備が改修されてきました。しかし、まだまだ物質的な問題点は多く、設備自体の問題点が解消したとしても、上手に活用できていないケースも少なくありません。
例えば、「優先席が満席で利用したい人が使えない」「点字ブロックに自転車が置かれており、ぶつかって怪我をしてしまった」など、高齢者や障がい者への理解が及ばず、適切に設備を提供できていない事例も見られます。このような問題を解消するには、利用者に対する意識や思いやりを深めることが大切です。

また、「バリアフリーに改修したものの、対象者以外の人が使いづらい設備になる」というトラブルも発生しています。そのため、近年はバリアを生み出さずあらゆる人に利用しやすい「ユニバーサルデザイン」の考え方を取り入れた、対象者を限定しない街づくりが主流です。設計段階からさまざまな状況の人々を考慮することで、さらに多くの人々が暮らしやすい社会を目指しています。

バリアフリー化の費用相場

バリアフリーリフォームの費用は、改修内容や住宅の状況などによって異なります。中心価格帯は400万〜500万円ほどですが、大掛かりな施工となると1,000万円ほどの費用がかかることもあるなど、相場はさまざまです。
加えて、「間取りの変更や廊下の拡張・階段の移動・ホームエレベーターの設置・住宅をまるごとバリアフリー化する」といった場合は、費用が膨らみやすいので注意しましょう。

バリアフリーリフォームのコツは、改修の優先順位を決め、予算に合った計画を立てることです。必ずしもすべての部屋や設備を改修する必要はなく、「水回りのみを重点的にリフォームする」「危険な箇所に手すりを付け、段差を減らす施工を行う」など、必要な工事をしっかりと見極めるとよいでしょう。

バリアフリー化を行う際のポイント

ここでは、バリアフリーリフォームで依頼が多い玄関や廊下、階段、トイレに焦点を当て、改修のポイントを解説します。リフォーム内容で迷っている人や、失敗しないコツを知りたい人などは、ぜひ参考にしてみてください。

玄関のバリアフリー化

外出の多い人にとって、玄関は毎日使用する大切な場所です。玄関は住宅の顔とも呼ばれるため、すっきりとした印象を保ちつつ、利便性や安全性を向上できれば理想的でしょう。また、日本の玄関は段差が多いため、「いかに段差を減らして導線を確保できるか」がリフォーム成功の鍵と言えます。

玄関の主なリフォーム内容は、段差の解消や手すり・スロープ・足元照明の設置、ドアの改修などです。階段が急でスロープを横に設置できない時は、庭や家の周りを通るルートに変えるなど、玄関までの距離を長く取るとよいと言われています。
スロープの床材はタイルや天然石、コンクリート、レンガなどさまざまなものがありますが、費用を抑えたい人はコンクリートがオススメです。表面に模様を入れることで滑りにくくなり、さらに安全性がアップするでしょう。

足元照明の設置は、夜間の歩行を助け、転倒を防ぐ役割を担っています。人感センサー付きの照明なら、わざわざ使用時にスイッチを入れる必要がありません。ホームセンターなどで気軽に購入できるものもあるので、費用を抑えて住宅をバリアフリー化したい人にもうってつけです。

廊下・階段のバリアフリー化

廊下・階段のバリアフリーリフォームは、車椅子を使用する家族や足腰の悪い高齢者と一緒に住んでいる家庭に多いです。廊下を拡張したり、階段を移動させたりする場合は、併せて間取りの変更や壁の取り壊しなどが必要になることもあり、費用が高くなりやすいので注意しましょう。

廊下・階段の主なリフォーム内容は、手すりの設置や廊下幅の拡張、勾配の変更、踏板幅の縮小などです。手すりの設置は、比較的安く施工できるうえに短期間で行えるため、多くの人がバリアフリーリフォームに取り入れています。
もし「まだ必要ないが将来は手すりを設置したい」と考えている場合は、壁の下地補修だけ先に済ませておくのがよいでしょう。必要になったらすぐに設置できるので、急な体の不調やトラブルが起きた場合、慌てなくても大丈夫です。

廊下の拡張は、車椅子の移動をスムーズにする役割があります。多くの住宅では、内法幅75〜80cmほどの廊下が採用されていますが、これでは車椅子を使う人は狭く感じるでしょう。ぶつかったり、ひっかかったりせずに廊下を移動するには、最低でも内法幅80〜90cmほどの幅を確保するのが理想的と言えます。

階段の勾配・踏板幅を変更する工事は、階段の移動を楽にしたい人に適しています。特に、昔ながらの住宅は急な階段が多いため、転倒のリスクが高く危険です。踏板の幅を縮小し、階段の数を増やすことで勾配を緩やかにしたり、ストレート階段からU字型階段に変更したりすれば、安全性の高い階段に生まれ変わるでしょう。

トイレのバリアフリー化

限られた空間であるトイレですが、体の不自由な人にとっては、案外使いづらい設備が多いものです。トイレのバリアフリーリフォームは、利用者の身体状況を考慮し、適切な施工を選びましょう。設備の入れ替えのみであれば、比較的安く施工可能です。ただ、入り口や部屋を拡張する必要があると、費用が高くなることもあります。

トイレの主なリフォーム内容は、手すりの設置やドアの改修、洗浄レバー・ボタンの変更などです。車椅子を利用している人にとって、入り口の段差や開き戸は怪我につながる恐れがあります。ドアを拡張して引き戸に改修すれば、付き添い不要でも使えるようになるでしょう。

洗浄レバー・ボタンの変更で重要なのは、位置や大きさに注意することです。小さいボタンや細かい文字の注意書きなどは、高齢者にとっては使いづらいかもしれません。また、洗浄ボタンの位置がわかりづらいと、どれを押してよいか迷ってしまう人もいます。ボタンやレバーなどは、座ったまま手を伸ばせる範囲にまとめ、操作が簡単なものを導入することも大切です。

バリアフリーリノベーションの事例集

リフォーム内容を決める時は、なるべく多くの事例を参考にして、取り入れる設備を取捨選択することが大切です。ここでは、一戸建て住宅にホームエレベーターを導入した事例や、ドアを引き戸に変更した事例など、参考にしたいバリアフリーリノベーションをまとめました。

段差をなくし開放的な空間に

「SUVACO」より、部屋の間の段差をなくしたバリアフリーリフォームの事例を紹介します。昔ながらの住宅では、和室と洋室の間に段差がある間取りをよく目にすると思います。しかし車椅子の人や高齢者にとっては、この小さな段差によって転倒リスクも生じるのです。すべての床面をフラットにしたことで、空間の開放感をアップさせつつ、安全性の高い住まいになりました。

安心して移動できるホームエレベーター

次は「SUVACO」より、住宅にホームエレベーターを設置した事例です。階段に手すりを設置したり勾配を緩やかにしたりして、安全性をアップさせる方法もありますが、思い切ってホームエレベーターを設置する手もあります。
水回りが分散している家やリビングが2階にある家などは、高齢になると階段移動が億劫になるかもしれません。ホームエレベーターがあれば、気兼ねなく上階へ移動でき、日々の暮らしが楽になることでしょう。

車椅子での移動もしやすい引き戸

「東京ガスリノベーション」より、ドアリフォームで引き戸を導入した事例を紹介します。「車椅子でも楽に動けるようにしたい」という要望に沿って、寝室からリビング・トイレへの導線をスムーズにするために、大きな3枚引き戸を設置しました。開口部が広く、段差のない引き戸なら、車椅子でも手間取ることなく移動できます。

最後にバリアフリーとは、高齢者や障がいを持った人が快適に社会生活を送れるように、障壁を取り除く考え方のことです。日本ではバリアフリーを促進するさまざまな取り組みが見られますが、設備を活用しきれていなかったり、バリアフリーの利用者に対する配慮が足りなかったりと、解決すべき課題点も見られます。
近年、住宅をバリアフリー化する人も多く、玄関や廊下、階段などの通路や、水回りの施工の依頼が増加しています。施工によって費用に幅があるので、利用者の身体状況を考慮し、適切な設備を選びましょう。
具体的なリフォーム内容を相談したい人は、「カシワバラ・コーポレーション」にぜひお問い合わせください。

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DIYer(s)

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