オフィスで採用されるフリーアドレスとは? メリット・デメリットから導入成功の流れまで解説

この記事では、フリーアドレスとはどのような仕組みを指すのかを紹介します。導入のメリット・デメリットに触れながら、成功率を上げる導入のポイントをまとめました。これからフリーアドレスの導入を検討している人はぜひ参考にしてください。

2022.11.18

リモートワークや在宅勤務などと相性がよく、ポストコロナ時代の新たなオフィスの在り方として注目を集めているフリーアドレス。近年、従業員一人ひとりに合った柔軟な働き方を実現するために、フリーアドレスを導入する企業が増えています。

この記事では、フリーアドレスの概要や目的などの基本知識に触れながら、導入によるメリット・デメリットなどをまとめました。オフィス環境の改善について調べている人はぜひ参考にしてください。

オフィスで導入されるフリーアドレスとは?

そもそもフリーアドレスとはどのような仕組みのことを指すのでしょうか。ここでは、意味や特徴、日本で注目を集めている背景などを紹介します。

フリーアドレスの特徴

フリーアドレスとは、従業員一人ひとりが個別のデスクを持たず、カフェや図書館などのように自由に席を選んで働くワークスタイルのことです。従来のオフィスは、個別のデスクを配した執務室、来客を招く応接室、ミーティング用の会議室といったように用途によって部屋を分ける間取りが主流でした。しかし、フリーアドレスは仕切りを取り払った広い部屋に一人用のカウンター席や少人数用のテーブル、休憩にも使えるソファ席などさまざまな席を設け、空間を柔軟に使用できることが特徴です。

フリーアドレスを導入する際は、従業員それぞれが自分の仕事道具をロッカーなどで管理し、業務はノートパソコンやタブレットなどで行うため、事前にインターネット環境を整えるだけでなく、オフィスの収納を増やしたり、紙資料をデータ化したりする準備が必要となるでしょう。従業員一人ひとりが場所や環境にとらわれずに働けることが重要視されるため、業務に必要なデータにいつでもアクセスできる仕組みづくりや、セキュリティの強化なども求められます。

フリーアドレスが広まった背景

2000年代の始め頃から徐々に広まっていたものの、近年の新型コロナウイルスによる影響や働き方改革などによって急激に普及が進みました。以前は紙資源の削減やオフィス規模の縮小など、コスト削減を目的とするケースが少なくありませんでしたが、現在は働き方改革のひとつとして導入を検討する企業が多いようです。

働く場所の選択肢が増えている中、個人がデスクを有する従来のオフィスでは、「出社人数は減ったが空いている空間を有効活用できない」「急なミーティングなどに対応できず柔軟性に欠ける」などの問題が起こることもあります。フリーアドレスは、社員の出勤状況や部署ごとのスケジュールなどに縛られる必要がないため、より自由な働き方を実現できるのです。

フリーアドレスが導入される主な目的

企業はどのような目的でフリーアドレスの導入を検討するのでしょうか。ここでは、代表的なものを2つピックアップし、それぞれのケースを紹介します。

スペースを有効活用するため

リモートワークを取り入れている企業や日中の外回りが多い企業などは、個人用のデスクを配置しても使用頻度が低く、スペースが無駄になってしまうことがあります。空いている席をほかの業務で使うわけにもいかず、「デスクは空いているのにミーティングスペースや応接室などが足りない」という悩みを抱える企業も多いのではないでしょうか。

フリーアドレスは、基本的に従業員全員分の席を用意しません。一般的には従業員数の50〜80%ほどの座席数で運営し、パーテーションや可動式の家具などを活用して用途に応じてレイアウトを変更することもあります。スペースを効率よく使えるだけでなく、オフィスの規模を縮小してコスト削減にもつなげられるでしょう。

社内でのコミュニケーションを活発にするため

従来のオフィスは、部署やチームごとにデスクを向き合わせて配置する島型レイアウトが一般的でした。上司や部下と協力して業務を取り組みやすいメリットがある一方で、会話をする人が固定化してしまい、他部署との連携やコミュニケーションが取りづらいデメリットも見受けられます。

フリーアドレスは、座る席を個人が自由に選ぶため、今まで接点のなかった従業員と席が隣になることもあるでしょう。何気ない会話から人脈が広がったり、情報を交換できたりと社内コミュニケーションを活性化させる効果が期待できます。

フリーアドレスを取り入れるメリット

導入のメリットは、社内コミュニケーションの促進や業務効率化、オフィス環境の美化、柔軟なチーム編成などです。ここでは、それらを項目ごとにくわしく紹介します。

社員同士の交流を促進できる

フリーアドレスは、所属チームや業種などに関わらず、全ての従業員が自由に席を選んで業務を行います。用途ごとに部屋を分けるのではなく、広いワンフロアにカウンターやテーブル、ソファなどさまざまなタイプの席を設けるため、今まで交流のなかった従業員と顔を合わせる機会も増えるでしょう。人脈を広げることで、情報を交換したり、他業種とのコラボレーションが生まれたりと、新たなアイデアや価値を創造できる可能性もあります。

また、執務スペースは一人作業だけでなく、ちょっとしたミーティングにも利用できます。会議室を予約する手間も省け、隙間時間に情報共有ができるため、スムーズに業務が進められるメリットも期待できます。

業務効率化とコスト削減につながる

個人用のデスクを廃止すると、業務で使う紙資料やファイルなどは、自分で管理しなければなりません。オフィスのロッカーにしまう方法もあるものの、容量に限りがあるため、全てのデータを紙資料で保管するのは難しいでしょう。

そのような理由から、フリーアドレスを導入するとペーパーレス化や業務のデジタル化が自然と促進されるため、結果的にコスト削減や業務効率の向上につながるケースも少なくありません。それらをまとめて推し進めたい企業や、働き方を根本から見直して業務効率向上につなげたい企業などは、フリーアドレス導入の恩恵を受けやすいでしょう。

オフィス環境を美化できる

自分専用のデスクがあると、使わなくなった資料や業務に関係のない私物などをつい置きっぱなしにしてしまう人も多いでしょう。フリーアドレスでは、ロッカーから業務に必要なものを取り出し、最低限の荷物を持って移動するケースがほとんどです。テーブルの上に不必要なものを置かなくなり、すっきりとしたオフィス空間を実現しやすくなるでしょう。

また、企業によっては、内装デザインにこだわった、オフィスカフェを兼ねたフリーアドレススペースをつくることもあります。ミーティングや来客対応などにも利用できるため、オフィスを訪れるお客様によい印象をもたらす効果が期待できます。

自由にチーム編成ができる

新たなプロジェクトが始まる時や、チームのメンバーが入れ替わる時などは、席が固定されていると打ち合わせに手間がかかってしまいます。チーム編成が毎回決まっている場合はよいものの、短期間のプロジェクトで人の入れ替わりが激しい場合や、外部との連携が必要な場合などは柔軟に対応するのが難しいでしょう。

フリーアドレスは空いているスペースを活用してすぐにミーティングが行えるため、自由にチームを組みやすいメリットがあります。口頭で必要事項を素早く伝えられるため、スピード感を要する業務にも適しているでしょう。

フリーアドレスのデメリット・失敗の原因

近年多くの企業で導入が進められているフリーアドレスですが、中には思うような結果が得られず、結局もとのレイアウトに戻してしまうケースもあるようです。ここでは、失敗の原因になりうるデメリットを四つ紹介します。

社員の管理や連携が難しくなることもある

フリーアドレスは、基本的に社内チャットなどで情報共有を行います。しかし、直接話をしたい場合は誰がどの座席にいるのかを確認しなければならず、探すのに時間や手間がかかるかもしれません。

また、チームメイトで顔を合わせる機会も減るため、部下の健康状態や仕事のモチベーションなどを把握しづらくなるデメリットもあります。週に1回は対面のミーティングを行うなど、意識的にコミュニケーションを取る必要性があるでしょう。

フリーアドレスが向かない人もいる

フリーアドレスは全ての業種に適しているわけではありません。機密情報を扱う業種や、業務に多くのものを使う業種、業務のデジタル化が進んでいない業種などは、思うように効果を得られない可能性が高いでしょう。

また、向き・不向きは人によっても異なります。話し声などで集中力を削がれてしまう人や、チームメイトと顔を合わす機会が減ることで疎外感を感じてしまう人などは、かえって業務効率が低下してしまうかもしれません。

帰属意識や組織力が低下する可能性がある

「自分の机がある方が安心感がある」「お気に入りの写真やリラックスアイテムを置けなくなって寂しい」などと思う従業員は案外多いものです。決められた座席がなくなると喪失感を感じ、会社への帰属意識が低下してしまう可能性もあります。

また、チーム内でのコミュニケーションが減り、仕事のモチベーションや団結力が低下してしまうケースも多く見受けられます。リモートでの情報伝達に慣れてきたとしても、対面ミーティングや面談などを定期的に行うのが望ましいでしょう。

席が固定化してしまうことがある

失敗の原因として多いのが、「毎日同じ席に座る人が多く、席が固定化してしまった」というパターンです。これでは社内コミュニケーション活性化などのメリットが享受できず、フリーアドレスを導入する意味がなくなってしまいます。運用ルールや導入の目的などを周知し、席を固定化させない工夫を取り入れる必要があります。

フリーアドレス導入を成功させるための流れ

フリーアドレスはただ漠然と導入するだけでは、思うような効果が得られないことがあります。ここでは、導入を成功させるための流れを、ステップごとに解説します。

フリーアドレス制が適しているのか検討する

フリーアドレスは、全ての業種に適しているわけではなく、場合によってはかえって働きづらい環境になってしまうこともあります。まずは、「フリーアドレスが自社の環境に適しているか」「導入によってどのような効果が期待できるか」などをしっかりと精査することが大切です。必ずしもオフィス全体に導入する必要はなく、向いている部署や職種から検討・採用を進めていくと失敗が少ないでしょう。

【フリーアドレスに適している企業】
・固定電話を使用しない
・ペーパーレス化、IT化が進んでいる
・ノートパソコンのみで仕事ができ、物理的な作業をあまり伴わない
・営業や会議などが多くオフィスの在席率が少ない

適しているのは、上記のような特徴がある企業です。パソコンのみで業務ができるIT企業・マーケティング職、外回りの多い営業職などは導入を進めやすいでしょう。また、すでにリモートワークを実施している企業や比較的自由な働き方を推進している企業などにも適しています。

【フリーアドレスの導入が難しい企業】
・固定電話を使う業務が多い
・紙資料を扱うことが多く、それらを保存しておく必要がある
・機密情報を扱うためセキュリティ性の確保が必要
・従業員の在席率が高い

一方、導入のハードルが高いのは上記のような企業です。金融系の企業や、総務・人事・経理などの職種が挙げられるでしょう。適切なデジタルツールやセキュリティシステムを導入することで解決できる場合もありますが、本当に効果が得られるのかを慎重に見極める必要があります。

座席数や運用方法を検討・決定する

フリーアドレスは、一般的に在籍者の50〜80%ほどの座席数で運用します。まずは現在の在席率を調査し、適切な座席数を検討しましょう。設ける座席数によって導入するオフィス家具やレイアウトなども変わってくるので、早い段階で決めておくとよいでしょう。また、この段階で「部分的に導入するのか・全体に導入するのか」などの運用方法も決めておきましょう。

導入の目的を明確にして周知徹底する

専用のデスクがなくなったり、チームで直接顔を合わせる機会が減ったりすると、従業員は企業への帰属意識が薄れてしまうこともあります。あらかじめ導入の目的をしっかりと説明し、従業員の不安を解消したうえで準備を進めていくことが大切です。また、「私物を席に置いて帰らない」「座る席は毎日システムによって割り振られる」など、運用ルールはしっかりと導入前に周知しておきましょう。

目的に合わせてレイアウト設計・物品の手配

適切なレイアウト設計は、オフィスの快適さを左右する重要な要因です。最初に決めた座席数をカバーしつつ、導入の目的に合った適切な配置を検討しましょう。また、専用のデスクがない分、私物を置くロッカーや共用の収納設備などを設けなくてはなりません。あらかじめそれらのスペースを確保したうえで、テーブルやデスク、椅子などのレイアウトを検討するとよいでしょう。

フリーアドレス導入の成功事例

さまざまなワークスペースを設けたレイアウトや、コミュニケーションの取りやすい空間デザインなど、優れたフリーアドレスの導入事例を紹介します。

バリエーション豊富なワークスペースを用意

「KOKUYO」より、「朝日放送グループホールディングス東京支社」の導入事例を紹介します。
オープンな執務エリア、窓際の共有スペースなど、さまざまな種類のワークスペースを設けることで、自由度の高い働き方の実現を容易にしています。従業員一人ひとりが快適に過ごせるオフィスを目指したレイアウト設計だと言えるでしょう。

丸みを帯びた温かみのある空間でコミュニケーション促進

「丹青社」より、「富山銀行新本店」のフリーアドレス事例を紹介します。全てのフロアをフリーアドレスにするのではなく、執務フロアのみの部分的導入です。空間全体を落ち着いた色味の柔らかな雰囲気にまとめ、コミュニケーションの取りやすい環境を実現できています。

ジグザグな座席配置でコミュニケーションが2倍にアップ

インターネット関連サービスを展開するIT企業のフリーアドレス事例を紹介します。長机とカラフルな椅子を配置した執務ルームは、あえて座席をジグザグに配置した歩きづらいレイアウトを採用しました。それにより従業員が顔を合わせる機会が増加し、コミュニケーションが活発化しました。

まとめ

フリーアドレスとは、従業員の固定席を廃止し、カフェや図書館などのように自由に席を選んで働くスタイルのことです。社内コミュニケーションの活性化や業務効率化、コスト削減などのメリットがありますが、一方で従業員の連携・管理方法を見直さなければならないデメリットもあります。また、企業や人にとってはフリーアドレスが適さない可能性があるため、適性や期待できる効果をしっかりと見極めることが大切です。

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