【空き家の明日Vol.1】 “手を加えて価値を高める”、家との付き合い方

DIYerたちと一緒に、空き家の未来について考えていく本企画。第1回目となる今回は、千葉県松戸市にて約2年半空室だった和室を約1年がかりで、見事にセルフリノベーションしたKさん宅にうかがいました。海外の建築について造詣の深いKさん。人と家との関わりについても考えさせられる住宅でした。

2017.12.27

【空き家の明日Vol.1】 “手を加えて価値を高める”、家との付き合い方

今や全国各地で問題として浮き彫りとなっているのが空き家。そんな中、あえて空き家物件を選んで住まわれている方も増えているんです。その理由は、DIYという言葉と共にセルフリフォームやセルフリノベーションという考え方。自分の手で空き家を自分らしく改築して暮らしを楽しむ、そんなDIYerに視点を当てた連載【空き家の明日】がスタート。

そもそも空き家の定義とは?

国土交通省では1年以上住んでいない、または使われていない家を「空き家」と定義しています。 その判断基準として、人の出入りの有無や、電気、ガス、水道の使用状況ないしそれらが使用可能な状態にあるか、物件の登記記録や所有者の住民票の内容、物件が適切に管理されているか、所有者の利用実績などが挙げられています。

暮らしの質を求めた先にある、空き家

千葉県松戸市にある一軒のアパート。こちらには同市にてDIY可能な賃貸物件を扱うMAD Cityが管理サポートする部屋があります。もともとは古い和室だったこの部屋を、歴史あるデザインに裏打ちされたヨーロピアンスタイルへと改装したKさん。今回はそんなKさん宅にお邪魔しました。
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白を基調とした落ち着きのある玄関。なんと靴を履いたままリビングへと向かう海外スタイルのKさん宅。

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扉を開けると広がる明るいリビング。シンメトリーの構造がとても美しいですね。この梁のない壁式構造だった点もここを借りることになった理由の一つだったそう。

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笑顔で出迎えてくれたKさんと、ワイヤーフォックステリアの愛犬。

「これまでデザイナーズマンションなどを転々としてきました。でも、どこも似たような感じなんですよね。そういう日本の画一的な住宅に飽きちゃって。それならもう自分でDIYしようと思って4年前にこちらに越してきました」。そう語るKさんは青森県、三沢市生まれ。小さい頃から米軍ハウスなど日本の一般な物件とは違う家に慣れ親しんできたと言います。

そんな中でも特に印象深く今でも覚えている物件があるのだとか。「いつもと違う道を通ってみた時のことです。緑の草原のなかに一軒の家が立っていたんです。それまでも海外風のいわゆる“米軍ハウス”的な物件はよく見ていたのですが、その白い家だけは全然違う雰囲気だったんです。その後、調べてみてわかったのは、その家は日本人が作った米軍ハウスと違い、アメリカ人が本国から材料などを運んで建てたゲストハウスだということ。この出来事も、海外の家に関心を持つようなったきっかけの一つかもしれませんね」。
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幼い頃Kさんが見た物件に似ているジョージアン・コロニアルの物件。

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さりげなく飾られている季節の花。ここからもKさんの意識の高さが感じられます。

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ハットや小物の収納に使うトルソーも部屋の雰囲気にマッチしています。

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フランス製のアンティークベッド。シェスタ用に使われていたものだといいます。

物件を選ぶ時から、部屋のイメージはフランスの“コテージスタイル”にすると決めていたというKさん。その理由について聞いてみました。

「コテージスタイルというのは、その名の通り小さめの家に適したスタイルです。そのなかでも“クレオール”と呼ばれた、フランス系の黒人たちが確立したクレオールコテージ形式を選んだ理由は、これがルイジアナなど南部の熱い気候に適したスタイルだからです。日本の狭めの家や、気候にマッチするんじゃないかと思って選びました」。家というのは、その国の風土や文化と関係しているもの。Kさんの住まいに対する哲学がうかがえます。
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部屋の壁は3,600種類から選べる米国の塗料ブランド『ベンジャミンムーア』のホワイト系(約150種類)の中から「ムーンシャイン」をセレクト。ホワイトの中にも青緑の色彩が混じっているため、グリーンや床のブラウンと調和しやすいのだそうです。

「DIYをする際には、自分で何かをデザインするのではなく、トラディショナルなデザインをいかにしっかり再現するかにこだわりました」。と語るKさん。そのこだわりは、部屋の各所に見受けられます。
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クレオールコテージでは、ワイドプランクと呼ばれる広めの床材を使用。幅25cmの床材は売っていないため、自ら切り出したといいます。床材同士はタン&ブルーブという凹凸を組み合わせる方法で接合していました。

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窓は日本やドイツの物件で採用されるスライド式ではなく、「ケースメントウインドウ」と呼ばれるフランスの開閉式、両開きで風通しの良いものに付け替えました。

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ベランダもホワイトで塗り、床板を渡してあります。

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床に対して高い位置に取り付けるモールディング(壁にほどこす装飾)もクレオールコテージ形式の特徴です。こちらもKさん自身が専用の道具を使って作製しました。

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生活感を出さないよう工夫しているというKさん。一見、ワードローブのように見えるこちらを動かすと…。

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なんと、ベッドが現れました!こちらのキットもアメリカから取り寄せて組み立てたものだといいます。狭い空間でもいかにスペースを無駄にせず、快適に暮らすか。Kさんのお部屋は、アイデアに溢れています。

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“シンプリシティ”を追求した19世紀アメリカのシェイカーズスタイルを取り入れたキッチン。シンクは広く、野菜などをそのまま入れて洗えるファーマーズシンク、天板はここでそのまま肉などを切っていたといわれるブッチャーズスタイルを採用。

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蛇口や取っ手は、ブロンズにオイルを付けてこする「オイルラブドブロンズ」という加工を施しています。独特の色合いが印象的ですね。

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軽食などを食べるのにも最適なシェルフ兼テーブルも便利そうです。

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家の中で最初に取り掛かり、最後に仕上がったというバスルーム。壁はホワイトジンファンデルというワインレッドが入った塗料でペイントされています。

もともと3ヶ月で終えるはずのDIYでしたが、実際にかかったのは3年以上。海外の動画サイトやWEBサイトで調べれば調べるほど、こだわりが増して時間がかかってしまったんだそう。また、海外の規格に合わせるために機材を購入し、板などの加工も実践。「まずは壁などを解体してから、床、キッチンと作っていきました。挫けそうにもなりましたが生活に必須の部分以外は、気が向いたときにやるようにしていました」。
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ベランダの一角にはドイツから輸入したという木材加工用の機材が並べられていました。

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モールディングやタン&ブルーブなど木材の加工に使用したビットパーツ。

「僕はDIY自体これが初めてだったのですが、作業を通して“自分の本当に欲しいものがなければ、作ればいいんだ”ということに気づきました。今までの世界観が大きく変わった感じがします」と語るKさん。

同じく海外の事例などを調べていくうちに“家”に対する考え方も変化したと言います。「日本では新築で購入してから家の価値は下がっていく一方で、20年経つともう価値としてはほぼゼロになってしまいますよね。でも海外では、人がどんどん手を加えるにしたがって家の価値が上がっていくものなんです。アメリカの新築物件は30万ドルくらいが相場ですが、築100年以上の住宅になるとその価値は100万ドルにもなります。ここには、消費財としての家という日本の考え方と、財産として価値を高めていくための家という考え方の違いがある気がします」。
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“家”に対する考え方や取り組みの違いは、日本とヨーロッパでそれぞれ一番景気が良かった時期の家を見ると明白とのこと。「日本のバブル期には量優先で家を建てていたのに対して、ヨーロッパではそういう時期にこそ天井の高さや内装にこだわった家を作っているんです。量を求めるか質を求めるか、そういう根本的な部分に空き家問題の原因があるのかもしれませんね」。

海外では、4、5回の引っ越しは当たり前。まず新築を購入しその価値を上げてから販売していくパターンが多いのだとか。また、築100年の家を人が住める用に改築するビジネスなども盛んです。日本でもKさんのようにDIYで空き家の価値を上げていく人や、MAD Cityのようにそれができる環境を整える団体があれば空き家問題は良い方向に向かっていくかもしれませんね。

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