武内舞子~家具作りと向き合う現場女子~/CIRCLE of DIY VOL.19

ものづくりと真摯に向き合うヒト・モノ・コトにフィーチャーする連載企画。今回は「現場女子」ことkoma furnitureで働く武内舞子さんです。数少ない女性家具職人として働く彼女がなぜこの道を選んだのか、そして家具作りに対する思いを伺いました。

公開日 2017.05.31

更新日 2018.04.16

––笠木は独特のカーブを描いていますが、あれは木を曲げて作っているんでしょうか?

「いえ、曲げじゃないです。元々はとても大きな木の塊なんですよ。それを型に合わせて切り、その後手作業で削り出して曲線を作るんです。この仕上げ作業は全部感覚でやらないといけないので、できるのはKOMAの中では社長と私だけなんです。出来不出来は感覚なので難しいですし、感覚なんでうまく説明出来ないですね」

イスの笠木部分。型に沿って切り出した木をアールの付いたカンナで削りなめらかな曲線を手作りで生み出します。

––家具職人の世界で、4年間という期間で仕上げの作業を任されるってのは珍しいことじゃないんですか?

「なかなか無いと思います。そういう意味では本当に貴重な経験をさせてもらっていると思います」

ここで、ひと仕事終えた社長の松岡さんがインタビューの場に顔を出してくれました。
(松岡)「ここにいると邪魔かな?」

(武内)「いると喋りづらいです(笑)」

––せっかくなので松岡さんにもお話を伺ってもいいですか?松岡さんからみて「現場女子」こと武内さんはどんな職人さんですか?

(松岡)「まず根性がありますね。あと刃物を使うセンスはいいなって思います。木材を刃物で加工するのって、刺し身を切るのとは全然違って、そもそも刃が入りにくい。それをスッと入れていくセンスは目を見張るものがありますね。センスで言えば、造形のセンスもいいものを持っていると思いますよ」

––師匠から見ても優秀な職人さんなんですね。先程、4年目で仕上げの工程をするのは家具職人の中は珍しいことだと伺ったのですが、その仕事を武内さんに任せているのは何か狙いがあるのでしょうか?

(松岡)「いや、狙いがあってというよりか、ただ単純に出来るので。だからやってみなって。最初はもちろん簡単なところからだったんですけど、やっていくうちに難しいのも出来るようになっていましたね。うちの社風として、年功序列では全く無い。出来る人が出来ることをやれば良いんです。もっと言えば、KOMAの家具は年配のおじいさんでは作れません。加工の方法として刃物で削り出す量がすごい多いので体力が必要ですし、造形力やセンスが問われるので職人としてただ熟練しているだけでは出来ませんから。そういう意味では、彼女みたいに若い女の子だからこそって部分はあるんじゃないかな」

––ホームページなどでは「現場女子」ということで大々的に取り上げていますが、これも狙いが?

(松岡)「会社として、顧客やファンを獲得することはやはり命題です。家具工房なので製品でファンになってもらうことは大前提だと思うんですけど、その中でどんな人が作っているんだろうってことを知ってもらうことも大事だと思っています。特に彼女は最終的な仕上げでお客さんが最後触る部分を作る職人なので、そういう部分も含めて顔が見えたほうがいいかなと」

––確かに手作り家具だからこそ、作り手の顔が見えれば購入した家具がもっと好きになれますね。こういったKOMAという会社について、武内さんはどう思っていますか?

(武内)「私はKOMAの社風や考え方にはとても共感しています。本当にやりたいことはやりたいだけやれば良いよっていうスタンスは好きですし、他の会社と比べてもいいところだなと思う反面、自分ももっとやらなければ、とも思います。あと、直営店もあわせて平均年齢は29歳と全体的に年齢層が若いので話しやすかったりもしますね。いま工場にいるメンバーはみんな後輩です」

––直営店といえば、荻窪に拡大移転しましたよね。そちらは以前中を拝見させていただいたんですけど、洗練された空間作りがされていて、家具屋さんというよりアトリエとか画廊みたいな印象を受けました。

(松岡)「嬉しいです。手作りの家具屋である以上、やっぱり作り手のいる工場がメインの空間。だからショップにもファクトリー感とかアトリエ感を出そうというのが一つのキーワードだったんですよ」

––すごく素敵なショップだと思います。武内さんはショップでも働く時があるとお聞きしたのですが。

(武内)「そうです。お客様と直接話しが出来る貴重な場になっています。納品の場に立ち会うこともあるんですけど、喜んでいるお客様の顔が見れた時は、家具を作っていて良かったなって思う瞬間ですね。KOMAの家具は決して安価ではないのに、ボーナスで一脚ずつ買い揃えてくれるお客様もいらっしゃるほど愛されています。」

(松岡)「購入した家具をうちの子って言って生き物扱いしてくれるお客さんもいらっしゃるんです。やっぱ手作りだから微妙に形も違うし、木目も様々。そんな個性を気に入ってくれているので、お店に遊びに来てくださったときにはやっぱりうちの子のほうが良いなんてことも(笑)」

––お客さんが愛着を持ってくれているということですね。作り手としても自分の作った製品に愛着とかあったりするんですか?

(武内)「私は結構あります。これ可愛い!みたいな(笑)」

(松岡)「製品は自分の分身に近いです。自分の表現のカタチ、クリエイティビティそのものだから変なものはお客さんの前には出せません」

受け継いだものを、さらに次の代へ

––では続いて、未来の話をお聞きしてみたいと思います。今後作ってみたいものってありますか?

(武内)「やっぱり作りたいのはイスですかね」

––それはまだまだ道半ば、という意味でしょうか?

(武内)「もちろんそれもありますし、自分なりのイスを0から作ってみたいという部分もあります。それこそデザインを書き起こすところから」

(松岡)「それにはまだまだ修業が足りん」

––親方からすればまだまだのようですね。

(松岡)「うちは基本を大事にしていますので。それこそ道具の持ち方から。彼女の得意な刃物だってそうで、日本刀と同じように手首を返して持つのが正しいかたちなんです。図面の段階でも、まずは鉛筆の持ち方から。基本の型を身に着けてからじゃないと、良いものは作れません。だから型を身に着けないと『型なし』って呼ばれるし、『型破り』も基本の型があってこそだと思うんです。自分は運良く昭和最後の職人さんのもとで修業して、型を学ばせてもらいましたから、それを彼女には伝えているつもりです。それを彼女が後輩やさらに次の世代に伝えてくれたらいいなと思いますね」
(武内)「実家が親子三代続く大工ってこともあるように、基礎や技術は受け継いでいくものなんだって意識は自分にもあります。だからこそ、自分も社長から学んだことを次に引き継いでいかないといけないなと感じています」

(松岡)「そういう意味ではリーダーリップの取れる子なので、KOMAの中でも後輩たちまとめるなど期待してます」

工場では積極的に後輩たちとコミュニケーションをとっているという武内さん。

––では最後になりますが、これから武内さんのようにものづくりや職人の道に進みたいと考えている女性も多いと思います。そんな方たちにメッセージをいただけますか?

(武内)「自分には力こぶがないから無理、みたいなイメージを抱く人もいると思います。でもそんな先入観や初めの印象だけで諦めるんじゃなくて、続けてみてほしいです。私の通っていた学校にも女性の方がいたんですけど、一回やってみてすぐ辞めちゃったんです。でも好きなことなんだったら、きっと続けられるはずだし、続けると楽しさや魅力に気付けると思います。やりたいことをやる上で男女は関係ありません。自分の好きなことをとことんやってみてください」
今注目を集めている手作り家具工房「KOMA」で「現場女子」として働く武内さんのリアルな姿とは、日々奮闘し、ひたむきに己の技術やセンスを磨く1人の若い職人でした。親方の厳しい指導も武内さんへの期待の現れ。その才能をさらに発揮させ、素晴らしい家具を作るであろう武内さんのこれからの活躍が楽しみです。

INFORMATION

株式会社KOMA
工房
東京都武蔵村山市伊奈平1-29-1
TEL:042-531-5995
FAX:042-843-8996
直営店
東京都杉並区上荻1-24-10 1F
TEL&FAX 03-6383-5585
OPEN 10:00 - CLOSE 17:00
HOLIDAY 水曜日、木曜日

PLOFILE

武内舞子
家具職人
1993年、東京都生まれ。家族は親子三代続く大工職人ということで小さなころから木工に触れて育つ。2012年に株式会社KOMAに入社し、以来「現場女子」として日々家具づくりに励む注目の若手職人。
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