武内舞子~家具作りと向き合う現場女子~/CIRCLE of DIY VOL.19

ものづくりと真摯に向き合うヒト・モノ・コトにフィーチャーする連載企画。今回は「現場女子」ことkoma furnitureで働く武内舞子さんです。数少ない女性家具職人として働く彼女がなぜこの道を選んだのか、そして家具作りに対する思いを伺いました。

武内舞子~家具作りと向き合う現場女子~/CIRCLE of DIY VOL.19

これまでの「CIRCLE of DIY」

これまでの「CIRCLE of DIY」
全国各地の注目のDIYerや、DIYにまつわるスポットを訪ね歩くシリーズ企画。手を動かし、知恵を絞り、ものを生み出す人や場所からは、人生を自分らしくマネジメントし、ポジティブに生き抜くためのマインドやエネルギーを受け取ることができます。
DIYやものづくりと聞いて、真っ先に木工のイメージを思い浮かべる人は多いのではないでしょうか。切断やサンディングで思い思いの作品を作り出す木工は、DIYer(s)でも記事やコラムとして多くの読者に見てもらっています。中でも家具やインテリアに関心を持っている人も多い様子。

そんな木製家具の世界で、今注目を集めているのが東京都武蔵野市に工房を構える「KOMA」です。
職人の手によって一つ一つ生み出された家具の数々は、海外の展示会や万博などでも好評価を獲得し、日本でもウッドデザイン賞2015、2016と二年連続受賞とそのクオリティの高さが話題となっています。「KOMA」を支える家具職人は少数精鋭。その中には職人としては珍しい「現場女子」の姿も。今回は、家具職人という厳しい世界に身を置く武内舞子さんにフォーカスをあてて、彼女の家具作りに対する姿勢を伺いました。

大工ではなく、もっと身近なものを作る職人になりたかった。

––まず、この家具職人という道を選んだ理由や経緯について聞かせてください。

(武内)「実家がおじいちゃん、お父さん、お兄ちゃんと三代続く大工の家系で、小さい頃からうちの工場が遊び場みたいなものでした。そのせいか、小さな頃から何か作ったりするのは好きでしたし、得意でした。ものづくりに対する興味や職人になるルーツはそこにあるのかもしれませんね。高校も産業高校に進んで、ずっとものづくり一筋でした。高校を卒業後は家具の専門学校に通い始めました」

––そのときには家具を作ってみたいと思っていたわけですね?

「そうですね。なんとなくですけど、もともと家具職人になりたいなとは思っていましたよ。まあ家は大工なので大工じゃないの?ってよく言われるんですけど、大工にはなりたくなかったです(笑)。それよりもっと身近なものを作りたいなと思っていて」

––それでより身近なもの、手作りの家具に繋がったと。現代大工には興味が無かったんですか?

「それはあるかもしれません。木を思いっきり削りたいみたいな。そういうのが前からあって、組立て工よりも手作りの家具に興味があったんです。おじいちゃんの時代はまだカンナが当たり前の時代だったようで、憧れていました」

KOMAでは多種多様な刃物、工具を使ってオリジナルの手作り家具を作り出しています。

––なるほど。その後、家具の学校に進んだというわけですが、周りも家具職人になりたい人が集まってきたんですか?

「いえ、そうでもなく、定年後の趣味の延長で家具を作りたいというような、本当に様々な人がいました。そこでたまたま知り合った人がKOMAの代表の松岡さんを紹介してくれたんです。それも初めからKOMAに入ってみたら?ではなくて、面白い人がいるからあってみたら?みたいなきっかけでしたね。実際に会ってみると、ゴリッゴリの職人で、その迫力に気圧されました(笑)」

––それがKOMA入社に繋がると。

「その後KOMAの仕事が忙しくなってきた時、松岡さんからバイトしにこない?ってお誘いがあって。最初は週一だったんですけど、週一が週二になり、週三になり、週四になり……。初めはそのまま入社するかどうか迷っていた部分もあったんですが、そんな時に先輩が3人やめちゃったんです。これは辞められないなと思った反面、逆にチャンスだとも思い、入社を決めました。これが今から4年前。それ以来ずっと家具作りに奮闘しています」

KOMA代表の松岡さんからみた職人・武内舞子

––では現在はどんなお仕事をされているんですか?

(武内)「KOMAのメイン商品でもあるイスを主に作っています。」

––今後ろに積んであるのもほとんどがイスですね。実際どんな工程を経ていらっしゃるんでしょうか?

「まずは製材って作業から始まります。板の状態から木を寸法に合わせて削って、その後型を使って、縁取り。この時、強度が変わってしまうので、木目を見ながらの作業です。それが終わったら、ほぞ(接合部分)を作ったり、組む部分作業したり、その後に笠木(背もたれの部分)を切り出して、仕上げの作業に入ります」

––笠木は独特のカーブを描いていますが、あれは木を曲げて作っているんでしょうか?

「いえ、曲げじゃないです。元々はとても大きな木の塊なんですよ。それを型に合わせて切り、その後手作業で削り出して曲線を作るんです。この仕上げ作業は全部感覚でやらないといけないので、できるのはKOMAの中では社長と私だけなんです。出来不出来は感覚なので難しいですし、感覚なんでうまく説明出来ないですね」

イスの笠木部分。型に沿って切り出した木をアールの付いたカンナで削りなめらかな曲線を手作りで生み出します。

––家具職人の世界で、4年間という期間で仕上げの作業を任されるってのは珍しいことじゃないんですか?

「なかなか無いと思います。そういう意味では本当に貴重な経験をさせてもらっていると思います」

ここで、ひと仕事終えた社長の松岡さんがインタビューの場に顔を出してくれました。
(松岡)「ここにいると邪魔かな?」

(武内)「いると喋りづらいです(笑)」

––せっかくなので松岡さんにもお話を伺ってもいいですか?松岡さんからみて「現場女子」こと武内さんはどんな職人さんですか?

(松岡)「まず根性がありますね。あと刃物を使うセンスはいいなって思います。木材を刃物で加工するのって、刺し身を切るのとは全然違って、そもそも刃が入りにくい。それをスッと入れていくセンスは目を見張るものがありますね。センスで言えば、造形のセンスもいいものを持っていると思いますよ」

––師匠から見ても優秀な職人さんなんですね。先程、4年目で仕上げの工程をするのは家具職人の中は珍しいことだと伺ったのですが、その仕事を武内さんに任せているのは何か狙いがあるのでしょうか?

(松岡)「いや、狙いがあってというよりか、ただ単純に出来るので。だからやってみなって。最初はもちろん簡単なところからだったんですけど、やっていくうちに難しいのも出来るようになっていましたね。うちの社風として、年功序列では全く無い。出来る人が出来ることをやれば良いんです。もっと言えば、KOMAの家具は年配のおじいさんでは作れません。加工の方法として刃物で削り出す量がすごい多いので体力が必要ですし、造形力やセンスが問われるので職人としてただ熟練しているだけでは出来ませんから。そういう意味では、彼女みたいに若い女の子だからこそって部分はあるんじゃないかな」

––ホームページなどでは「現場女子」ということで大々的に取り上げていますが、これも狙いが?

(松岡)「会社として、顧客やファンを獲得することはやはり命題です。家具工房なので製品でファンになってもらうことは大前提だと思うんですけど、その中でどんな人が作っているんだろうってことを知ってもらうことも大事だと思っています。特に彼女は最終的な仕上げでお客さんが最後触る部分を作る職人なので、そういう部分も含めて顔が見えたほうがいいかなと」

––確かに手作り家具だからこそ、作り手の顔が見えれば購入した家具がもっと好きになれますね。こういったKOMAという会社について、武内さんはどう思っていますか?

(武内)「私はKOMAの社風や考え方にはとても共感しています。本当にやりたいことはやりたいだけやれば良いよっていうスタンスは好きですし、他の会社と比べてもいいところだなと思う反面、自分ももっとやらなければ、とも思います。あと、直営店もあわせて平均年齢は29歳と全体的に年齢層が若いので話しやすかったりもしますね。いま工場にいるメンバーはみんな後輩です」

––直営店といえば、荻窪に拡大移転しましたよね。そちらは以前中を拝見させていただいたんですけど、洗練された空間作りがされていて、家具屋さんというよりアトリエとか画廊みたいな印象を受けました。

(松岡)「嬉しいです。手作りの家具屋である以上、やっぱり作り手のいる工場がメインの空間。だからショップにもファクトリー感とかアトリエ感を出そうというのが一つのキーワードだったんですよ」

––すごく素敵なショップだと思います。武内さんはショップでも働く時があるとお聞きしたのですが。

(武内)「そうです。お客様と直接話しが出来る貴重な場になっています。納品の場に立ち会うこともあるんですけど、喜んでいるお客様の顔が見れた時は、家具を作っていて良かったなって思う瞬間ですね。KOMAの家具は決して安価ではないのに、ボーナスで一脚ずつ買い揃えてくれるお客様もいらっしゃるほど愛されています。」

(松岡)「購入した家具をうちの子って言って生き物扱いしてくれるお客さんもいらっしゃるんです。やっぱ手作りだから微妙に形も違うし、木目も様々。そんな個性を気に入ってくれているので、お店に遊びに来てくださったときにはやっぱりうちの子のほうが良いなんてことも(笑)」

––お客さんが愛着を持ってくれているということですね。作り手としても自分の作った製品に愛着とかあったりするんですか?

(武内)「私は結構あります。これ可愛い!みたいな(笑)」

(松岡)「製品は自分の分身に近いです。自分の表現のカタチ、クリエイティビティそのものだから変なものはお客さんの前には出せません」

受け継いだものを、さらに次の代へ

––では続いて、未来の話をお聞きしてみたいと思います。今後作ってみたいものってありますか?

(武内)「やっぱり作りたいのはイスですかね」

––それはまだまだ道半ば、という意味でしょうか?

(武内)「もちろんそれもありますし、自分なりのイスを0から作ってみたいという部分もあります。それこそデザインを書き起こすところから」

(松岡)「それにはまだまだ修業が足りん」

––親方からすればまだまだのようですね。

(松岡)「うちは基本を大事にしていますので。それこそ道具の持ち方から。彼女の得意な刃物だってそうで、日本刀と同じように手首を返して持つのが正しいかたちなんです。図面の段階でも、まずは鉛筆の持ち方から。基本の型を身に着けてからじゃないと、良いものは作れません。だから型を身に着けないと『型なし』って呼ばれるし、『型破り』も基本の型があってこそだと思うんです。自分は運良く昭和最後の職人さんのもとで修業して、型を学ばせてもらいましたから、それを彼女には伝えているつもりです。それを彼女が後輩やさらに次の世代に伝えてくれたらいいなと思いますね」
(武内)「実家が親子三代続く大工ってこともあるように、基礎や技術は受け継いでいくものなんだって意識は自分にもあります。だからこそ、自分も社長から学んだことを次に引き継いでいかないといけないなと感じています」

(松岡)「そういう意味ではリーダーリップの取れる子なので、KOMAの中でも後輩たちまとめるなど期待してます」

工場では積極的に後輩たちとコミュニケーションをとっているという武内さん。

––では最後になりますが、これから武内さんのようにものづくりや職人の道に進みたいと考えている女性も多いと思います。そんな方たちにメッセージをいただけますか?

(武内)「自分には力こぶがないから無理、みたいなイメージを抱く人もいると思います。でもそんな先入観や初めの印象だけで諦めるんじゃなくて、続けてみてほしいです。私の通っていた学校にも女性の方がいたんですけど、一回やってみてすぐ辞めちゃったんです。でも好きなことなんだったら、きっと続けられるはずだし、続けると楽しさや魅力に気付けると思います。やりたいことをやる上で男女は関係ありません。自分の好きなことをとことんやってみてください」
今注目を集めている手作り家具工房「KOMA」で「現場女子」として働く武内さんのリアルな姿とは、日々奮闘し、ひたむきに己の技術やセンスを磨く1人の若い職人でした。親方の厳しい指導も武内さんへの期待の現れ。その才能をさらに発揮させ、素晴らしい家具を作るであろう武内さんのこれからの活躍が楽しみです。

INFORMATION

株式会社KOMA
工房
東京都武蔵村山市伊奈平1-29-1
TEL:042-531-5995
FAX:042-843-8996
直営店
東京都杉並区上荻1-24-10 1F
TEL&FAX 03-6383-5585
OPEN 10:00 - CLOSE 17:00
HOLIDAY 水曜日、木曜日

PLOFILE

武内舞子
家具職人
1993年、東京都生まれ。家族は親子三代続く大工職人ということで小さなころから木工に触れて育つ。2012年に株式会社KOMAに入社し、以来「現場女子」として日々家具づくりに励む注目の若手職人。
72 アイテム

DIYer(s)

WRITTEN BY

DIYer(s)

Japan

DIYer(s)編集部です。DIYのアイデアやハウツー、おすすめツールやショップ情報まで幅広くお届けします!