UPCYCLE OUR LIFE Vol.2 工業×工芸の美しい融合。 Bouillonが提案する生活の“うまみ”とは?

ライフスタイルショップ「IDÉE」が取り組むアップサイクルをテーマにしたプロジェクト「IDÉE GARAGE」がこのたび、本格始動。この連載では、全5回にわたってIDÉEの取り組みを紹介していきます。連載第2回目となる今回からは、プロジェクトに参加する3組のクリエイターのインタビューをお届け。トップバッターは、クリエイターユニット「Bouillon」のお二人です。 Text_瀬尾麻美

UPCYCLE OUR LIFE  Vol.2 工業×工芸の美しい融合。 Bouillonが提案する生活の“うまみ”とは?

「愛着のあるモノと長く付き合う暮らし」を提案するライフスタイルショップ「IDÉE」が、アップサイクルとDIYをテーマに展開するプロジェクト「IDÉE GARAGE」。

 

このプロジェクトがそもそも始まったきっかけや、IDÉEの具体的な活動内容が知りたいという方はこちらをどうぞ。

 

そして今回スポットを当てるのは、このプロジェクトに外部クリエイターとして参加する「Bouillon」のお二人。大学時代からの友人という服部さんと那須さんは、国際的な展覧会でも注目を集める気鋭のクリエイターというよりも、どこかお笑いコンビのような(←失礼!)独特の雰囲気をまとっています。

 

二人の作り出すプロダクトの数々を見れば、彼らのほのぼのとした人柄やデザインのぬくもりを存分に感じることができるはず。

 

服部隼弥さん(左)さんと那須裕樹さん(右)。愛知県を拠点に活動するクリエイターユニットです。

 

Bouillonの作品:「Owara-nai / Product」(2016)

藁細工は、収穫した藁を「藁綯い(わらない)」という工程によって縄にするところからスタートします。藁綯いの作業は藁を継ぎ足して延々と続くため、当時の人々の間では藁綯いのことを「おわらない」と言いながら、藁を綯っていたそう。一本一本、人の手で丁寧に綯って作られた藁縄を巻いた壁掛け時計と鏡は、程よい距離感で暮らしの中に溶け込みます。

 

「nen-rin」(2016)

石川県白山市で40年の時を経て成長した樹木から採取した年輪を内側に閉じ込めたスツール。木という素材こそ感じられませんが、刻まれた年輪からは山という大きな存在感と、樹木が育った記憶に触れることができるはず。

 

「Mesh」(2016)

椅子の座面などにも使用され、しなやかで粘りのある籐素材を使ってデザインしたシェルフ。籐で張られた天板が軽快な印象で、どこか懐かしい表情も漂います。

 

-まずは「Bouillon」というユニット名について。これは、いわゆるフランス料理などに使う、あのブイヨンのことでしょうか?

那須 そうですね、あのブイヨンです。名前については結成時に二人でいろいろと案を出して考えました。例えば、二人の名前を取って合わせるとか(笑)。でもどれもしっくりこなくて…やっぱり、ただカッコいいだけのものだと、自分たちが愛着を持てないというか。その時に思いついたのが、物事の“うまみ”みたいなもの。

 

-うまみ、ですか。

服部 簡単に言うと、木も素材だし鉄も素材ですけど、その一つ一つに歴史や伝統があるわけです。そういうストーリーも一つの価値として考えて、素材の“うまみ”を活かした料理のように、シンプルでくせになる“うまみのきいた暮らし方”を提案したいと思ったんです。

 

-なるほど。そこでお二人の想いが一致したというわけですね。

服部 想いというよりは、クセみたいなものですね。僕らは昔から、考えすぎるんですよ。

 

那須 うん、考えすぎる(笑)。普通の人が気にならないことまで気に留めて、それで1時間以上話し込んでしまうこともあります。

 

服部 例えば、僕らは今わりと職人さんと一緒になって仕事をすることが多いんですけど、その時に彼らの技だけじゃなく、「あの人は何故あんなこと言ったんだろう」とか、ちょっとした会話のほうが気になったりするんです。

 

那須 「あの人は職人肌だけど、こういうところに引っかかるんだ」とか。そういうふとした瞬間に人間のいちばん素直な気持ちがでると思うんですよね。

 

服部 良く言えば、深く物事を考えられているということだけど、悪く言うとネガティブ(笑)。二人とも、石橋を叩きまくって渡るタイプだから、考えないと不安で不安で仕方がないんです。だから僕たちの場合は、形の美しさがどうこうというよりも、まずは作品のコンセプトが第一にあって、それをいかに深めながら形にしていくかが勝負になるわけです。

 

-素材をじっくり煮詰めてうまみを出す。まさにBouillonたる所以ですね。

那須 食べながら打ち合わせしていることが多い、というのもあるんですけど(笑)。

 

Bouillonのお二人が「IDÉE GARAGE」プロジェクトのために制作したアップサイクルの椅子「Baton Chair」。廃棄される予定のパイプ椅子に籐の座面や背もたれをアレンジし、しなやかで温かみのあるダイニングチェアへと見事に生まれ変わらせました。

 

-今回、IDÉE GARAGEに参加されたきっかけを教えてください。

那須 最初は3月に行われたミラノサローネの会場で、IDÉEのMDの方に新作のスツールを気に入っていただいて。「一緒に何かやりたいですね」とお話したのがきっかけです。

 

服部 僕らもリデザインというのは昔からやっていたので、IDÉEさんの提案するアップサイクルとDIYというコンセプトには共鳴するものがありました。そして、“元々あった形や元あった居場所を残す”という以前から持っていたテーマを、よりわかりやすい形で表したのがこの「Baton」シリーズのチェアです。

 

-パイプ椅子を素材として選んだのは?

那須 誰もが知っているように、パイプ椅子は大量生産を目的に作られている工業生産品です。でも、よく見ると実はとてもシンプルで美しい形をしているなと思って。

 

服部 実際、廃棄されて積み上げられたパイプ椅子を見た時に、もともと使われていた際のたくさんの記憶を感じました。私たちにとって身近な素材であるパイプ椅子がなぜこんなふうに大量に廃棄されて、使われなくなっていくか。それをアップサイクルすることの意味を考えた時に、使われなくなった椅子は椅子として新たに“バトンを引き継いでいく”という具体的なイメージが湧いてきたんです。

 

素材の調達は、デザイナー本人がみずから産廃業者やリサイクルショップに足を運んで行いました。

 

那須 これは例え話ですけど、椅子を野球選手だと考えると、廃棄されたパイプ椅子は現役を引退した選手。これをどうアップサイクルするかというと、プロの選手なら、引退後は監督になったりコーチになったりトレーナーになったりするわけじゃないですか。選手じゃなくても、同じ野球業界、同じ舞台で活躍していく。そう考えると、この椅子はやっぱり椅子としてこれからも活躍していくのがベストなんじゃないかと思って。

 

服部 さらに、ただDIYをして誰でも作れる椅子にするのではなく、何かもう一つ別の価値を与えるために、日本の伝統工芸である“手編み”という要素を加えることにしました。

 

-そこで、パイプ椅子の背もたれと座面に籐を巻いたと。工業×工芸の大胆なマッチングが実現したわけですね。

那須 ええ。今回は、もともと知り合いだった岐阜の家具職人の方に制作を依頼しました。今は籐の製品もほとんどが海外の製品だそうで、職人の道もなかなか厳しいものがある。そういう意味でも、この作品が日本の伝統工芸に目を向けてもらう一つのきっかけになればいいかなと思っています。

 

-椅子のプロトタイプは、すべてご自身たちの手で試作したとか?

服部 はい。まずはパイプ椅子を解体するところからはじめて、とりあえず一通り自分たちでDIYしてみました。籐を巻く作業も、職人さんに『一回は自分で巻いてみろ』と言われて挑戦したら、手が痛くて痛くて…。モノをつくるというのは、ものすごく大変なことですよ。改めて身に沁みました。

 

Baton Chairの制作過程。フレームだけにしたパイプ椅子に塗装を施し、ペーパーコードを巻いて背もたれと座面を試作した。

 

籐を背もたれに巻きつける作業。「簡単に見えて、実はめちゃくちゃ難しいし、手が痛い…。職人さんの技術の凄さがわかりました」(服部さん)

 

BouillonのBaton Chairをはじめ、IDÉE GARAGE参加クリエイターが制作した椅子は六本木「IDÉE CAFE PARC」のテラス席で実際に座ることができる。

 

-今回のプロジェクトに参加して、いかがでしたか?

那須 みなさんも当然そうだと思うんですけど、パイプ椅子のことをこんなに深く考えたことが今までなかったので(笑)、それは面白いなと思いましたね。

 

服部 だいたい、パイプ椅子を買う時にお店や業者の方に「なんで?」という顔をされる(笑)。「なんか祭でもやるの?」って。

 

那須 塗装屋さんにパイプ椅子のフレームを持って行った時も、「なにこれ?」と言われましたね。それに対して、「これはね、座面を籐で組んで新しく椅子にするんですよ」と説明するのも僕としては楽しかったです。

 

服部 今回、パイプ椅子の歴史をいろいろ調べてみたのですが、今でこそオフィスで会議用に使うアイテムという扱いになっているパイプ椅子も、元々は家具としてデザインされているわけで。新たな価値を与えられたパイプ椅子が、一つの家具の選択肢として住居や店舗といった空間で活躍していくことができれば、アップサイクルをする意味もあったと思っています。

 

那須 それから、今回は特にIDÉE GARAGEのチームのみなさんがとにかく意欲的だったので、僕らも頑張ってやろうという気になれましたね。他のクリエイターの方々の姿勢やデザインにもたくさん刺激を受けました。夏休みの自由研究的な気持ちで思いっきり楽しめたと思います。

 

「ただカッコいいものを作りたいのではなくて、その背景にあるストーリーを“うまみ”にしていきたい。やれば出来るけど、やらないと何も生まれない。だから僕ら、いつもギリギリなんですよ」(服部さん)

 

「僕らはかれこれ10年の付き合いなので、もうお互い顔は見飽きてます(笑)。ただ議論が盛り上がると、深夜まで話し込むことも。その作業がいちばん大事だと思っています」(那須さん)

 

 

11月に行われた「IFFT Interiorlifestyle living」では見事にYoung designer awardを受賞したBouillonのお二人。おめでとうございます!

 

次回は、IDÉE GARAGEに参加するもう一人の若手クリエイター、Yuma Kano(狩野佑真)さんのインタビューをお届けします。

 

PROFILE

Bouillon(服部隼弥、那須裕樹)

共に1987年生まれ。2010年に名古屋芸術大学(SpatialDesign専攻)を卒業し、2016年4月にデザインスタジオBouillonを設立。2016年の「Salone Sattelite Award」にて2nd prize受賞。

http://www.design-bouillon.jp/

 

INFORMATION

IDÉE SHOP Midtown

東京都港区赤坂9-7-4 D-0316

東京ミッドタウン Galleria 3F

11:00~21:00

Tel.03-5413-3455

http://www.idee.co.jp/

 

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