【タイニーハウス】 Vol.3 -手づくりの家でシンプルに暮らす-

日本で初めてのタイニーハウス・ワークショップが開催されたのは、2014年のこと。2016年の第2回目は富士山に加え、八ヶ岳や南アルプスも一望できる北杜市の廃工場に場所を移し、全8回、4週間ごとに1泊2日で開催。前回に引き続き、ワークショップ後半の工程をレポートします。

公開日 2016.10.30

更新日 2022.01.07

【タイニーハウス】 Vol.3 -手づくりの家でシンプルに暮らす-

【9・10日目(12月)】 

八ヶ岳の気温もぐんぐん下がり、工場内では日中でも息が白くなる中、みんな一生懸命、自分の仕事を見つけて作業をします。12月は2日とも大工仕事。年末までに小屋の形にまでもっていくべく、黙々と進めていきます。今までのような大まかな構造づくりから一転、細かい造作が増えてきました。玄関ドアの取り付けや古材を使った建具作り、使う工具も溝切りやトリマー、電動カンナなどになり、これまで以上に神経を使う集中力の必要な作業が続きます。

十日町の学校、小谷の古民家、道志の蔵などから工場に集められた廃材。これまでの物語を想像し、素材の風合いや色味を確認しながら、自分たちの思い描く場所に配置し、新しい命を吹き込みます。

このタイニーハウスは室内の一部を1段上がったところに座敷のような空間を作ろうと決定。その小上がり風スペースの背面には、立派な引き違いの格子窓が入ることになりました。窓辺にコップを置けるように枠に奥行きを設けてあり「この窓から景色を眺めながらコーヒーを飲んだらおいしいだろうなー」と、みんなで想像を膨らませました。

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【11・12日目(1月)】

年始、大寒波で大雪の中にもかかわらず欠席者はゼロ。広島、岡山、大阪、奥能登…と全国各地から集まったみんなに課せられたのは、板に柿渋の塗装をして外壁を貼っていく作業。オレンジピールが配合された柿渋は、独特の匂いはありません。防水紙と防水テープをきっちりと建具まわりに貼ったら、外壁の下地を留めていきます。今までのところ、普通の家を作っているように見えましたが、実際はタイヤの付いた車(被牽引車)なので、タイヤのフェンダーや車幅灯、テールランプやナンバープレートも装備しなくてはなりません。

この日のゲストはgreenz.jpから、鈴木菜央さんと増村江利子さん。お二人とも最近タイニーハウスに住み始めた大先輩。家が小さくなったことと、持ち物が少なくなったことで、身の回りのモノや状態に気が回るようになったとか。それらを一つずつ自分の手で改善していく、暮らしを楽しむ姿勢が印象的でした。

【13・14日目(2月)】

次回が最終回。お披露目会の告知も開始し、いよいよタイニーハウスを完成させないとマズイぞという雰囲気が漂い始めました。スタートと同時に、前回完了しなかった外壁、塗装、加工、釘打ち。また室内の壁には構造用合板を速やかに張ります。というのも、2日目は珪藻土の左官作業。室内の壁ができていないと塗ることができず、外壁が終わっていないと、せっかく仕上げた珪藻土の壁を、裏からの釘打ちの振動で台無しにしてしまうからです。

なんとか初日で外壁と内部の下地をほぼ終わらせて(左官の直前までパテ埋め、シーラーの塗布をしていましたが…)、2日目は珪藻土の施工へ。珪藻土について詳しくレクチャー。

水槽に沸かしたお湯の入った容器を入れた実験では、珪藻土の塗ってある板が入った水槽は、入っていない水槽に比べて湿度が低く、その調湿効果に一同納得。

珪藻土を丁寧に撹拌した後は、いくつかのグループに分かれて塗りました。みんなコテを持つのも初めてでしたが、指導してもらいながら、少しずつ滑らかに塗れるように。全面が珪藻土で覆われる頃には、コテで絵が描けるようになる人までも現れ、「まだまだ塗れる、壁が足りない!」と、壁が少ないタイニーハウスを恨めしく思うほど。

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【15・16日目(3月)】

泣いても笑っても最終回。アメリカからタイニーハウス界のパイオニア、ディー・ウィリアムスさんを迎えてのレクチャーから。14年間タイニーハウスに暮らし、多くの人に勇気と笑顔を与え続ける彼女の想いや哲学、現地での技術的な事例紹介など。スライドごとにたくさんの質問と多くの脱線で、あっという間に1日目が終わってしまいました。

ワークショップの最終日は山盛りの残工事を片付けること。屋根の板金、室内の天井、腰壁、床、小上がり、キッチン、ドア、電気工事。翌日のオープンハウスは快晴の予報。家族や友達、タイニーハウスに興味のある人たちが大勢来るので、完成を間に合わせるべく朝早くから工場に出て来て作業を開始。

急に工場周辺を片付け出すディーさん。「あ、タイニーハウスに登る階段がない!」と言って、廃材で小さな踏み台を作っていました。

【 Open House 】

8カ月間、工場の中で作ってきたタイニーハウスが初めて外に出ました。まだまだ未完成の部分は、お客さんが来るまでやることに。

お披露目会にはたくさんのお店が並び、軽トラモバイルハウスや、天ぷら油で走るジープ、タイニーハウス・トレーラーの展示も。またステージでは音楽、映画上映、トークショーなどがあり、大盛況。肝心のタイニーハウスは?というと、お客さんもいる中で、ちょこちょこと作業を続け、会の終了前になんとか完成。お客さんには「制作風景を見られてよかった(笑)」との声も。

「タイニーハウスに限らず、こんな生き方(暮らし)がしたいなと思ったら、想像してみることが大切なんだよ」とディーさん。「挑戦してみる、それがどんな結果になろうとも、そのプロセスを楽しむこと」。

ここ最近、日本でも少しずつ認知が高まってきたタイニーハウス。興味が沸いた、という方は、選択肢の一つに加えてみてはいかがでしょうか?

MOVIE INFO

「暮らし」をテーマにしたプロジェクトsimplife

Simple+LifeからなるSimplife /シンプライフ=「 自由になれる、身の丈の暮らし方」というアイデアを提案しています。

ロードムービー simplife

tiny house workshop

 

SERIESE

“住む”を見つめ直す/タイニーハウス Vol.1 -手づくりの家でシンプルに暮らす-

 

“住む”を見つめ直す/クリエイティブリペア Vol.1 -古家具を自分色に再構築-

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