リフォーム費用の減価償却とは?10分でわかる、耐用年数や経費計上の仕組み

当記事では、リフォーム費用の減価償却について解説します。賃貸運営における減価償却の考え方に触れつつ、対象となるリフォーム内容や具体的な計算式、節税のポイントなどをまとめました。賃貸運営を行うにあたり、費用や税金をなるべく節約したい人は、ぜひ参考にしてください。

公開日 2021.02.26

更新日 2023.05.08

リフォーム費用の減価償却とは?10分でわかる、耐用年数や経費計上の仕組み

建物を長く使うためには、適切な時期にリフォームを行う必要があります。マンションや一戸建て住宅を賃貸運営している場合、リフォームをすると税金面ではどんな変化があるのでしょうか。今回は、リフォーム費用の減価償却にスポットを当てて、対象となる施工内容や計算方法などを紹介します。賃貸運営における税金対策を知りたい人や、これからリフォームを行われる不動産オーナーをされている人も、ぜひご一読ください。

そもそも減価償却って?賃貸経営における経費の考え方

マンションやアパート、一戸建て住宅の賃貸で収入を得ている場合、物件取得でかかった費用は経費として計上できます。その際、金額すべてを一括で計上するのではなく、減価償却の考え方を用いて、複数年にわたって少しずつ計上するのがポイントです。ここでは、賃貸経営における減価償却仕組みについて紹介します。

減価償却とは「複数年にわたって経費を計上する仕組み」のこと

リフォーム費用の減価償却とは?10分でわかる、耐用年数や経費計上の仕組み
住宅などの資産は、使用を続けることによって年々その価値が減少していきます。「減価償却」とは、そのような資産の取得などにかかった費用を、一括で経費とするのではなく、複数年にわたって分割で経費計上する仕組みのことです。
あくまで時間経過とともに価値が減少する建物や機械装置などが対象です。土地や骨董品など年月を経ても価値が減らないものは、減価償却の必要はありません。

減価償却では、物件取得にかかった経費を分割で計上しますが、金額の算出方法は物件の耐用年数によって異なります。鉄筋や木造など、建物の構造によって目安とする耐用年数が変わるので注意しましょう。

耐用年数とは?リフォームしたらどう変わるの?

「耐用年数」とは、資産を使用できる期間として国が定めた年数のことです。減価償却費を計算する時、この耐用年数が金額を決めるポイントになります。
耐用年数は建物の構造によって異なります。住宅用の場合、「鉄筋コンクリート造は47年・木造や合成樹脂造は22年・木骨モルタル造は20年」です。ほかの工法についても詳しく定められているので、詳しくは国税庁のホームページを参考にしてください。
(参照元:https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/shisan/info/hyo01_02.pdf
なお、建物のリフォームを行った場合、耐用年数が変化する可能性もあるので注意しましょう。傷の補修やクロスの張り替えといった、小規模な修繕であれば減価償却の必要はありません。

しかし、増改築や大幅なリノベーション、スケルトンリフォームなど建物の価値が高くなる大規模リフォームを行う場合は、新築同様の耐用年数で新たに減価償却を行う必要があります。
例えば、築30年の鉄筋コンクリート造りの建物をフルリフォームした場合、リフォーム費用は残りの17年で減価償却するのではなく、新築と同じ47年で行います。

物件を取得した時だけじゃない!減価償却の対象になるリフォームとは?

どのような修繕を行うのか、リフォーム費用はいくらかなどによって、リフォーム時に減価償却が必要かどうかは異なります。ここでは、減価償却の対象となるリフォームを具体的にご説明しましょう。経営的なメリットを考慮しつつ、リフォーム内容を選ぶ方法も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

「資本的支出」or「修繕費」、どちらにあたるかが判断ポイント

減価償却の必要性を判断するうえでは、リフォーム費用が「資本的支出」と「修繕費」のどちらに当たるのかがポイントとなります。

資本的支出とは、建物の価値や耐久性を向上させるリフォームにおける費用を指します。金額が20万円以上で、現状維持のための修復ではなく、建物の価値を著しく向上するリフォームは資本的支出に該当します。
一方、修繕費とは、「建物の原状回復を目的とした小規模なリフォーム費用」のことです。原則、工事費用が20万円以下のものを指しますが、3年以内の周期で定期的に行っている修繕であれば、20万円以上でも修繕費扱いとなるケースも。また、災害で受けた損傷を修復するリフォームも、修繕費として計上します。

原状回復が基本!「修繕費」にあたるリフォームの具体例

修繕費の基準は「費用が20万円以下か」「原状回復を目的としているか」などです。修繕費と資本的支出を判別する具体的な方法は定義されていないので、あくまで目安として捉えておき、リフォーム前に税理士に確認すると安心です。
リフォーム費用の減価償却とは?10分でわかる、耐用年数や経費計上の仕組み
具体的には、「屋根・壁の塗り替え」「クロス・フローリングの張り替え」「台風で損傷した屋根の修繕」「雨漏りの修理」「壊れた設備の交換」などの施工が該当します。

内装リフォームも?「資本的支出」にあたるリフォームの具体例

資本的支出の基準は「費用が20万円以上か」「資産の価値や耐久性が明らかに増す修繕か」などです。費用が20万円以上でも、維持管理のために行った屋根・外壁塗装、退去時のリフォーム費用の負担分などは、修繕費扱いとなる場合もあるので注意しましょう。

資本的支出となるのは、「建物の増改築」「非常階段の設置など、建物に追加で設備を取り付ける施工」「用途変更のための内装リフォーム・間取り変更」「グレードの高い設備を導入するリフォーム」などです。
リフォーム費用の減価償却とは?10分でわかる、耐用年数や経費計上の仕組み

「資本的支出」と「修繕費」、メリットが大きいのは正直どっち?

資本的支出と修繕費のどちらで計上すべきか。これは、状況次第で決まります。悩んだ場合は、経営的なメリットを考慮して選択するとよいでしょう。
例えば、利益が多く出た年は、翌年の税金を抑えるために、なるべく経費をたくさん計上したいものです。この場合、資本的支出で計上して減価償却するよりも、修繕費としてまとめて計上したほうがメリットは大きいでしょう。

また、銀行へ融資を申し込む場合などは、営業成績の好調さをアピールして、審査に臨みたいところです。そのためにはなるべく経費計上額を抑えたいため、リフォーム費を資本的支出として計上する方がよいでしょう。

具体的な計算式は?リフォーム費用を減価償却する2つの方法

資本的支出にあたる大規模なリフォームを行う際は、リフォーム費用の減価償却を行います。計算方法は「定額法」と「定率法」の2種類があり、リフォームを行う箇所によって使用する計算方法が異なるので、注意が必要です。ここでは、減価償却を計算する時の注意点や、具体的な計算方法を紹介します。

外装塗装や断熱工事など建物部分のリフォームは「定額法」で計算

設備交換や内装の修繕、外壁塗装など、建物の劣化状況によって必要なリフォームはさまざまです。減価償却を行う際は、建物のどこを修繕するのかが大きなポイントとなります。
リフォームを行った箇所が「建物部分」なのか、あるいは「建物付随設備」なのかで計算方法が変わるため、複数箇所をリフォームした場合は特に注意しましょう。建物部分のリフォームは定額法で計算しますが、建物付随設備のリフォームは定額法・定率法のどちらでも計算できます。
リフォーム費用の減価償却とは?10分でわかる、耐用年数や経費計上の仕組み
建物部分に該当するリフォームは、外装塗装や断熱工事、間仕切り壁の撤去・増設などです。定額法とは、毎年同じ金額を計上する償却方法で、「リノベーション費用×定額法の耐用年数に応じた償却率」で計算します。償却率は国税庁のホームページに記載されているので、チェックしてみてください。

例えば、鉄筋コンクリート造りの建物を100万円で外壁塗装したとしましょう。鉄筋コンクリートの耐用年数47年では償却率0.022と定められているため、100万円×0.022=22,000円となり、年間22,000円の減価償却費を計上します。
(参照元:https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/shotoku/shinkoku/070412/pdf/3.pdf

【定額法の計算式】
リフォーム費用×定額法の耐用年数に応じた償却率

トイレやエアコンなど、建物附属設備部分は「定率法」でも計算可

リフォーム費用の減価償却とは?10分でわかる、耐用年数や経費計上の仕組み
定率法とは、毎年同じ金額を償却するのではなく、年を経るごとに少しずつ償却費が減少していく計算方法です。トイレやキッチン、照明、エアコンの設備交換など、建物付随設備のリフォームは定率法でも計算できます。

定率法の計算式は、「(リフォーム費用-償却累計額)×定率法の耐用年数に応じた償却率」です。償却率は国税庁のホームページに記載されているものを用いてください。

例えば、100万円でトイレの設備交換を行った場合、耐用年数15年なので償却率は0.133です。償却年が1年目だとすると、(100万円-0)×0.133=133,000円となります。
(参照元:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/pdf/2100_02.pdf

【定率法の計算式】
(リフォーム費用-償却累計額)×定率法の耐用年数に応じた償却率

どちらを選ぶべき?「定額法」&「定率法」の違いとそれぞれの利点

建物付随部分のリフォームでは、定額法と定率法のどちらか好きな方法で減価償却できます。では、それぞれどんな違いがあるのでしょうか。
基本的に、定額法では毎年同じ額の経費を計上しますが、定率法は1年目に最も多い経費を計上し、だんだん償却費が下がっていきます。
例えば、100万円でトイレのリフォームを行った場合を考えましょう。
・定額法での毎年の計上額は67,000円です。
・定率法では1年目が133,000円、2年目が115,311円と徐々に償却率が減少します。
(参照元:https://keisan.casio.jp/exec/system/1339479951

経費はまとめて大きな金額を計上するよりも、分散させたほうが節税効果は高いと言われています。例えば、所得税では「超過累進税率」と呼ばれる税率が採用されており、一定の所得を超えると税率がアップする仕組みです。所得が高く、税率が引き上がっている時に、多くの経費を計上すれば、税率が低い時よりも節税効果は高くなるでしょう。
この点で、定額法では経費を分散して計上できるため、高い税率の時に経費を使える可能性が高くなるでしょう。そのためトータルで見ると、定額法のほうが手元に多くの資金が残りやすい場合もあります。ただし定額法は、資金を改修するのに時間がかかるデメリットもあります。

一方、定率法は1年目に高い金額を経費計上可能なため、手元に早くお金が戻ってきます。「資金繰りのために早く経費を手元に戻したい」「資金繰りのためにお金が必要」などの場合は、定率法がオススメです。
リフォーム費用の減価償却とは?10分でわかる、耐用年数や経費計上の仕組み
建物など時間経過によって価値が下がっていく資産は、減価償却が必要です。間取り変更リフォームや新たに非常階段を取り付けるリフォームなど、物件に価値を追加する施工は資本的支出とみなされ、減価償却の対象となるので注意しましょう。税金面で損をしないためにも、「修繕費の範囲でリフォームしたい」などの希望は、信頼できるプロに相談するのがオススメです。リフォームに関するご相談は、経験豊富な「カシワバラ・コーポレーション」にぜひお任せください。

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