粂井製作所:モノ作りしながら、場所を築き上げていく試み/CIRCLE of DIY Vol.16

老若男女問わずDIYを発信する人々を紹介し、大きな“CIRCLE=円”を作ろう!という本連載。第14弾は大阪市此花区(このはな)にある工場跡地をリノベーションし、作業場とコミュニティースペースを築く木工アーティスト、粂井仰さん(くめいごう)にフィーチャーします。

粂井製作所:モノ作りしながら、場所を築き上げていく試み/CIRCLE of DIY Vol.16

これまでの「CIRCLE of DIY」

これまでの「CIRCLE of DIY」
大阪市の中部西端に位置しており、内陸部は北側が淀川、南側は安治川に挟まれ全域がほぼ平地の此花区。西側は大阪湾の埋立地となっており、沖合に人工島の舞洲と夢洲があります。

大阪在住でないと馴染みがないかもしれませんが、アミューズメントパークのユニバーサル・スタジオ・ジャパンがあるエリアなんです。そして、なんとこの此花区は新しい宿泊スタイルを提供するプラットフォーム「Airbnb(エアビーアンドビー)」が発表したデータによると、2015年から2016年にかけて大阪市此花区への海外観光客が激増しており、その注目度はオーストラリアのメルボルン、フィッツロイに次いで世界第4位にランクインしてるんです。なお、ランクインした地域の共通点として“都会の便利さとリラックスしたムードが楽しめるのんびりした地域・壮大な緑・アクセス良好なローカル食を楽しめる”の3つがあるそう。

そんなエリアで木工プロダクトの製作を粂井仰さんの作業場は、なんと工場跡地。DIYer(s)でも過去にベルギー在住の若いカップルが古い繊維工場の跡地をリノベーションしている記事をアップするなど、気になって仕方がなかっただけに伺ってみることに。

まずは工場の内部をご覧いただきましょう。

右が粂井さんの木工作業場で、お隣はこの場所を共に作り上げている金属作家の花里政信さんのスペース。それぞれ木工と鉄工の特徴を得た扉になっています。

先ほどとは逆の位置から見た工場内部の様子。作業場の向かいの2Fにも展示スペースを設置。

左のやぐらがコミニュケーションスペース。

ここまでの広々とした空間。そしていい感じに退廃していて、雰囲気も抜群。なぜこの場所を作業場としたのか? そして今後の展望、粂井さんのモノ作りに対する思いなどを聞いてきみました。

—すごくスケールの大きな場所だと思ったんですが、この場所を選んだきっかけは何だったんですか?

「前のアトリエから移ってきて丸3年になりますが、とにかく広さで選びました。やはり大阪の中心部から少し離れているとはいえ、やはりここまでの規模はなかなかないんですよ。ただ本当にボロボロだったんで、広さの割には安くしてもらってます」

1つ1つ丁寧に受け答えしてくれる粂井さん。

—ボロボロというと、どのくらい?

「屋根とか穴だらけだったので自分たちで補修しましたよ(笑)。なので、自分たちで作業したとはいえ結果的に修復の部分でけっこう材料費がかかりました。とはいえ木工の仕事とはまた違ったことをやっているのでDIYの感覚でやっています。ただ、仕事の合間でやっているので、正直まだまだ進められてないですが......」

高速道路で使用されていた街灯を安く購入できたとのことで、自分たちで設置したとのこと。

—作業場以外のスペースを作った目的は?

「一応はPULLという名前を掲げてイベントができる場所として設けました。最終的にはあのスペースを含めた工場全体を解放して、人の出入りができる場所にしたいんですよ。現段階でも、展示などはやっているけど整え切れてないから、まだまだあんまり大きくはできいない。とりあえず人が集まれるスペースだけを先に作った感じになっています」

白で統一された空間になっている展示スペース。

—エリア的にはどうお考えですか?

「徐々にゲストハウスやお店ができたり、同じような若手のアーティストが増え始めたりはしているんです。その流れもあって、今後賑わっていくんじゃないかって言われているエリアだったので選んだというのもあります。ただ、本格的に賑わうまでに時間はもう少しかかりそうかなという肌感ではありますが」

—この外見のインパクトは海外からの観光客に興味持たれそうですね。この場所の完成系と言えるイメージはあるんですか?

「借りた時点では理想があったんですけど、なかなかそれに近づかないんですよ(笑)。やり始めて、色々と触ってみると思い描く形が変わってきたのもあって。とりあえずは人の出入りがちゃんと出来るぐらいは整えるのが先ですね」

外観はこんな感じです。

—ここまでの規模感だと補修も大変そうですよね。続いて、粂井さんのモノ作りについて伺いたいのですが、どういう経緯から木工を選んだんですか?

「今でこそ木工を仕事にしてますけど、本当はモノ作りならなんでもよかったんですよ。知り合いに木工をやってる人がいて、手伝いをやりだしたらハマっていったという流れ。美術系のことをやりたかったという思いはあったけど、大学も社会学部だったので特にそういうところ出身ではないんです」

額縁を作るために木材をカット中。

—それはまた意外ですね。

「逆に木工所に勤めていた時に木工の学校も通っていました。独立してはかれこれ、6、7年目になりますね」

—仕事ではどういったモノを作るのが多いんですか?

「店舗什器がほぼですね。注文をいただいて、ラフを描いて打ち合わせして製作。あとは設計事務所さんのほうから図面を送ってもらってという場合もあります。自分のInstagramにはその注文を受けた商品と、自分で適当に考えて作ったモノをアップしています」

粂井さんの手掛けた椅子とハンガーラック。個性的なフォルムが存在感を放っていました。

—個人的に丸みのあるシルエットを用いた作品が多いなと印象を受けましたが、製作時のそういったインスピレーション源はあるんですか?

「特にはないですね。ただ丸系が好きで思いついて作ったほうは多くなってます。なので最近は直線を使ったシンプルな形でカッコイイのが作れないかなと目論んでますね」

壁には様々な道具が陳列。

—なぜそう思ったんですか?

「ごちゃごちゃさぜずに良いモノを作るってのが今の目標なんです。ただ、シンプルになればなるほど、デザインが洗練されてないと成り立たない。正直丸いほうが面倒だし、手間がかかるんですけどね(笑)」

扉にも立体感を持たせる細やかな仕様が。

—他のアーティストの作品は見たりしますか?

「興味はあるけど、特定の人というよりは骨董品が昔から好きでよく触れているので自分のベースになっている。モノの良し悪しを見る面ではそこが生きていると思いますね。あとは隣が金物をやっているので、それは勉強になる。前までは全然知らなかったけど、見ていて要領もつかめてくる。そうすることで、製作の幅も広がる」

花里さんの作業場も見せていただきました。金属に特化しているだけに粂井さんの作業場とはまた違った雰囲気。

工具を収納した棚も含めて、自身の手で作ったそう。

重厚感のある材料たち。

—すぐ隣にいるのは確かに相談できるのでいいですね。話は変わりますが、DIYの印象は?

「最近のホームセンターは便利だし、オシャレなパーツも手に入りやすいから、自分の手でやってみることが浸透しているように思います。自宅の家具に一手間加えて個性を出したり、ちょうどいいサイズがないから作ってみたり、感度が高い人がやっているイメージ」

どの場所を切り取っても絵になる場所でした。

—この広がりはプロ目線から見ていかがですか?

「悪い印象はまったくないですし、むしろもっとやってほしい。その方が僕らのやってる細かな技術もより伝わるのかなと思うし、プロダクトの仕組みがどうなってるのか気になってほしい」

アンモナイトや骨董品など、飾られていたオブジェも気になりました。

—それは間違いないですね。やってこそわかることは多いと思うので。モノ作りの魅力はなんだと思いますか?

「達成感ですかね。自分で作ったっていう気持ち良さがある。要領がわかったら、作るモノがいろいろ広がっていくと思う。僕自身も木工以外のことに挑戦して失敗することもあれば、発見もあったりして楽しいんですよ。壁にジョリパッドを塗ってみたり、障子の和紙を貼ってみたり、モルタルをいじってみたり、ガラスを切ったり。結局、そういうことで材質の特徴がつかめて、次やることをイメージできる。重複しますが、絶対木工だったわけではないんで、色んなことに興味あります」

工具以外の塗料などもキレイに収納されていました。

—その興味の中で、作ってみたいモノはありますか?

「薄いというか細い家具を作ってみたい。強度はギリギリの」

—え!なんでそこ行き着いたんですか?

「木工の家具ってゴツゴツした重厚感のあるモノが多いので、逆にそんなモノってないと思うんですよ。めっちゃ軽くてみたいな。そういうことを実験的にやってみたいなっていつも思っています」
ユーモアに富んだアイデアを少年のような表情で語ってくれた粂井さん。そんな同士が手掛ける作品に加え、この工房はまた大阪という土地で新たなDIY文化を波及する場所になりそうです。関西圏のお住まいの方はぜひ開催されるイベントの際は訪れてみてはいかがでしょうか。きっと筆者のように、そのスケールの大きさに圧倒されると思いますよ。

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