Sami Elu:音楽をDIYするミュージシャン:/CIRCLE of DIY Vol.18

自らの手でプロダクトやカルチャーを生み出すDIYerをフィーチャーし、DIYの輪(サークル)を広げる連載企画。今回は、なんと割り箸でピアノを作り演奏しているという、ミュージシャンのSami Eluさんをピックアップしました。

Sami Elu:音楽をDIYするミュージシャン:/CIRCLE of DIY Vol.18

建築業を営む友人から場所を借り、アトリエを構えているSami Eluさん。昭和初期を思わせる雑然とした建物の中で楽器作りをしています。来日して10年になるという彼は流暢な日本語で語り始めてくれました。

What Does a Chopstick Piano Sound Like? 🎹

「10年前日本に来てから色々なところを転々としてきましたが、この場所を貸してもらえることになり、念願のアトリエを構えることができました。楽器製作に使えるかもと思って、ついつい色んなものを拾ってくるので、保管場所があるのは本当にありがたいです」

今Sami Eluさんが作っているのは、ピアノと鉄琴を組み合わせた楽器。作り始める時に設計図などはなく、試行錯誤しながら作っていくのだそう。

丁寧に心を込めて製作する新作の楽器。どんな音が出るのか楽しみです。

工具使いはお手の物。

「僕が作り出す楽器は、偶然出来上がるものが多い。なんとなくピアノとか、なんとなく弦楽器、というイメージだけがあって、作り始めるんです。よく見てもらえばわかるんですけど、ピアノの鍵盤とかかなり雑です(笑)。きれいにきっちり作るっていうよりは、周りにあるものやホームセンター、100均などから調達してきたもので、自由に作っていきます。結果的に失敗作となったものもたくさんあるけれど、作ってる過程は本当に楽しいんです」

鍵盤も一つ一つ自分の手でカットしているので、多少荒いところも。試行錯誤している感じがよくわかります。

今作っている楽器も、ピアノと鉄琴が一緒になっていたら面白いかもという自由な発想から、スタートしているのだとか。

これがSami Eluさんに注目を集めるきっかけとなった割り箸ピアノ。音の精度などを求めて改良を続け、これは5台目だそう。左側には鍵盤、右側には弦楽器ゾーンがあります。

左手では鍵盤を演奏。

右手にはスティックを持ち、弦を弾いて演奏します。和琴とアコースティックギターを組み合わせたような独特の音色が特徴。

元々、ピアノやアコーディオンのミュージシャンだったSami Eluさん。楽器の手作りを始めたきっかけは何だったのでしょうか。

「楽器を作ろうと思った理由は色々あるんですけど、ジョン・ケージ(※)のような実験音楽や、即興音楽に興味があって、音を作り出せないかと思ったのが大きなきっかけですね。既製品のピアノの音はきれいなんだけど、面白みがないなあと思っていて。音を解放するというか、新しい音を探すために、自分で楽器を作ってみたいと思ったんです。割りばしピアノは、弦もついてるし、音もきれいだし、最近はこればかり作ってますね」

※ジョン・ケージ…1912年アメリカ生まれの作曲家。実験音楽家として活躍し、前衛芸術全体に影響を与えた。代表作「4分33秒」は全楽章を通じて、楽器を全く演奏しないまま曲が終了する。

写真右下の鍵盤が弦をたたく部分が割り箸でできています。

「割り箸を使うことにしたのも偶然なんです。初めて作った楽器が、竹材に弦を張って作った琴だったんですね。その時に、弦をそのへんにあったもので試しに叩いていたら、割り箸がとても柔らかくてきれいな音色が出たんです。これはいいぞと思って、早速割り箸を使ってピアノを作ってみることにしました。割り箸の素材や種類によって音色が変わって面白いですよ。今一番よく使っているのはセブンイレブンのお弁当についてくるやつかな(笑)。きれいな音を出すにはできるだけ柔らかいほうがいいんですけど、そういうものは折れやすい。バランスが難しいです」

Sami Eluさんの割り箸ピアノには弦を弾いて演奏する部分もある。この発想にはどのようなルーツがあるのだろう。

「弦を張ったのは、ピアノの端に空いているスペースがあるので、そこを何かに使えないか考えたんです。そこで思いついたのが、一人でピアノと弦楽器を演奏できたら、音楽の幅がかなり広がるんじゃないかというアイディア。ただ、今までも弦楽器を作った経験が何度かあったんですけど、弦をピンと張るには木材にかなりの強度がいるんです。それで木が割れて失敗したことがあったので、このアトリエを貸してくれている松浦さんに相談したら、素材を考えながら作ってくれることになって。松浦さんは建築とかリフォームのスペシャリストなので、木材の強度や向き不向きを色々アドバイスしてくれて助かっています」

日本の琴にインスピレーションを受けているというだけあって、どこか和な印象の音色。演奏する曲はオリジナルのものがほとんどだそうですが、最近は日本の曲のカバーも弾いているそう。この日は「さくら」、「やさしさに包まれたなら」、そして「一休さん」を弾いてくれました(笑)。 

アトリエには他にも様々な楽器が。

このように弦が張ってあります。

「これは最初の頃に作った、割り箸ピアノの原型になったもの。この弦をたたいて音をだします。イランの楽器であるサントゥールを真似して作りました。アジアの音楽がすきで、そこからインスピレーション受けている楽器がたくさんあるんです」

日本に来たきっかけも漢字に惹かれたことが大きかったそうで、アジアの文化にはとても興味があるんだそう。なんでも自分で楽器を作り出してしまうSami Eluさんですが、物作りは昔から好きだったんでしょうか。

「興味は持っていましたね。日本に来てから、ミュージシャンをしながら溶接工の仕事をしていたこともありました」

「これはその溶接工の仕事をしていた時に作った楽器。バリで見たドラムに似たものを作りたくて、何個か作りました。溝の場所や深さによって音が変わるので作るのが楽しかったですね」

まだまだ試行段階の材料たち。

アトリエでは様々な材料に混じって、あちこちに転がっている廃材に目が付きます。

「以前は廃材を使って作ることにこだわっていたんです。費用もかからないし、今まで全く別の用途で使われていたものが、楽器になるのが面白いなあって。自転車の一部をカットして、パーカッションを作ったりしたこともありましたね。でも色々作っていくうちに、音に張りを出すには、素材の強度が結構大切だということがわかってきたんです。耐久性もあんまりなかったりしますしね。今もこうやって使えそうなものを拾ってきて色々試すことはありますけど、材料は買うことが増えてきましたね。一番大切にしているのは音色で、材料の組合せによって、思いもよらない音が出たりすることもあって面白いですよ」

そんなSami Eluさんは最近ワークショップにも力を入れているのだそう。大人から子どもまでみんなが楽しめるイベントを多く手がけています。

「これは子供達のワークショップ用に作りました。僕が割り箸ピアノで演奏している間に、子供達はこの楽器をたたいて自由に音楽を作り出してもらうんです」

YouTubeを見ながら、見よう見まねで一つずつ竹を削って作ったのだそう。

「ワークショップも面白いかなあと思ってます。設計図があって、それに沿ってみんなで作って、最後に完成した楽器を演奏するみたいなもの。あとはこの前代々木公園でやった、僕が演奏してみんなに自由に踊ってもらう、っていうイベントも面白かったですね。その場にいる人がお互いを刺激しあって即興で音楽やダンスができていくんです。日本人はカラオケにはいくかもしれないけど、自由に歌ったり踊ったりするのは、少し苦手でしょ(笑)?でもとっても楽しい体験だから、そういう場を作っていきたいですね」

「楽器を作れる友達が作って、僕にくれた1品」。周りの人から影響を受けることもあるそう。

アイディアが尽きないSami Eluさん。最後に、今後どんな活動に力を入れていきたいかを聞いてみました。

「作りたい楽器はいっぱいあって、時間があればもっとたくさん作れるのになあって思っていますね。中でも今作りたいと思っているのは、ベースの弦を使った大正琴。どんな音がするか、どんな音楽が作れるか、面白そうでしょ。今はストリートミュージシャンとして、ほぼ毎日路上で演奏しているんですけど、これからはライブハウスとかホールでコンサートみたいな形で演奏したいですね。同じ空間にいる人たちに演奏に参加してもらったりして。それって屋外で偶然出会った人たちの前でやるのとはまた違った面白さがありそう。その他にも、ワークショップを通して音楽も楽器も誰かが作ったものだけじゃなくて、自分で作っていける、その楽しさを発信していきたいですね」

Sami Eluさんの目指す音楽のDIY。これから更なる広がりを見せていきそうだ。

PROFILE

Sami Elu

自ら作り出した割り箸弦楽器「幻ピアノ」を演奏する唯一無二のアーティスト。ライブでの演奏やストリートでのパフォーマンスのほか、ワークショップやファッションイベントなど幅広いシーンで活躍する傍ら、アトリエでは日々素敵な音を探してオリジナル楽器作りに励んでいる。

URL: http://samielu.com/
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