店舗兼住宅を建てたい! 気をつけるべき法律や施工例を紹介

いつか自分の店を持ちたいと考えている人の中には、店舗兼住宅を選択肢の中に入れている人もいるのではないでしょうか?当記事では、店舗兼住宅のメリットとデメリット、法律や住宅ローンについての注意点、間取りを決める際のポイント、実際の店舗兼住宅の施工例などをご紹介します。

公開日 2020.08.18

更新日 2022.01.07

店舗兼住宅を建てたい! 気をつけるべき法律や施工例を紹介

家賃の支払いや通勤の必要がなく、プライベートと仕事の両立を叶えてくれる「店舗兼住宅」。今住んでいる家をリフォーム・リノベーションしたり、新築で建てたりとさまざまな方法がありますが、近年、自宅での開業を考えている人の間で注目を集めています。
そこで当記事では、店舗兼住宅のメリットやデメリット、法律や住宅ローンを利用する際の注意点、間取り設計におけるポイント、実際の施工事例などをまとめました。ご自宅での開業を検討中の方は、ぜひ参考にしてください。

店舗兼住宅とは?

「店舗兼住宅」とは、「自宅兼店舗」あるいは「店舗併用住宅」とも呼ばれ、その名の通り、住宅と店舗が一体になっている建物のことをいいます。自宅とは別に店舗用のスペースを借りるよりも費用負担を抑えて商売ができるほか、通勤の必要がなく、家庭の事情に応じて仕事のスケジュールを調整しやすいといった特徴があります。
事業の形態に決まりはなく、飲食店や事務所、美容室までさまざまな用途があります。これから自分の店を持ちたいと考えている人にとっては、視野に入れておきたい魅力的な選択肢の1つといえるでしょう。
店舗兼住宅を建てたい! 気をつけるべき法律や施工例を紹介

店舗兼住宅のメリット

店舗兼住宅には、一般的な店舗とは異なる特徴があります。まずはメリットから詳しく見ていきましょう。

1.家賃のコストカット
店を経営する上で、家賃の支払いは大きな負担となりますが、店舗兼住宅なら家賃を支払う必要がありません。さらに、契約時に支払う保証金などの初期費用もかからないため、金銭的に余裕のある経営ができるでしょう。建物の建築費やリフォームの費用などはかかりますが、自宅の家賃と店舗の家賃を二重に支払うよりは安く済むことがほとんどです。

2.通勤がいらない
職場が自宅に併設されている店舗兼住宅では、当然ながら通勤の必要もありません。休憩時間に自宅に戻って家事を片付けるなど、有効な時間の使い方ができるでしょう。さらに、仕事が夜遅くまでかかっても終電を気にする必要がなく、朝の通勤ラッシュも避けられるため、通勤にかかる無駄なストレスを省くことが可能です。
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3.私生活とのバランスが保ちやすい
通勤時間を有効活用できる分、育児や親の介護との両立がしやすいというメリットもあります。子どもの急な発熱などで仕事を切り上げなければならない場合でも、比較的都合を付けやすいでしょう。

4.低金利の住宅ローンを利用できる場合がある
金融機関にもよりますが、建物の床面積の5割以上を住宅用に利用していれば、その分の面積については、事業用ローンよりも低金利の住宅ローンを組める可能性があります。

5.固定資産税・都市計画税の優遇が受けられる
住宅用の敷地は、固定資産税や都市計画税の特例措置を受けられます。住宅の敷地のうち、200㎡までの部分の固定資産税が更地の1/6に、都市計画税は1/3に軽減されます。また、専用住宅と店舗兼住宅では特例を受けるための条件が異なり、店舗兼住宅では居住用スペースが床面積の25%以上あれば、固定資産税を軽減してもらうことが可能です。

6.賃貸として貸し出すことも可能
元気に働けるうちは自分の店として経営し、高齢になって経営を辞めたあとは、貸店舗にして収入を得るという選択肢もあります。貸店舗は、アパートに比べて賃料の相場を高く設定できるのもメリットです。

店舗兼住宅のデメリット

このように、店舗兼住宅にはさまざまなメリットがありますが、その一方で以下のようなデメリットもあります。店舗兼住宅を検討する際は、メリットだけでなくデメリットもきちんと把握しておくことが大切です。

1.集客が立地の影響を受けやすい
店舗を自宅に併設している限り、立地環境に課題があったとしても、簡単には店舗の場所を移し変えることができません。仮に、店舗兼住宅を建てたい場所が駅から遠かったり、人通りが少なかったりする場合、立地条件のよいテナントを別に借りたほうが、事業が成功する確率は高くなるでしょう。

2.プライベートとの区別を付けにくい
生活の場所と仕事場を同じくすることには、プライベートと仕事の区別が付けにくくなるという側面もあります。例えば夜遅くまで営業する居酒屋などでは、どうしても騒音が生じるため、自宅にいる家族がストレスを感じやすいという問題も考えられます。家族だけでなく、近隣住民から苦情が寄せられることもあるでしょう。

3.臭いや害虫問題が発生しやすい
飲食店の営業では特に、臭いや害虫問題が発生しやすくなります。店舗の裏にごみ箱を置いていると、自宅にいても生ごみの臭いが気になることもありますし、ゴキブリなどの害虫が集まってくることもあります。食べ物を扱っている以上、仕方のないことではありますが、こうした臭いへの対策や害虫駆除を怠ると近所にも迷惑をかけてしまうため、注意が必要です。

4.不動産取得税の軽減措置の適用外
店舗兼住宅には、不動産取得税の軽減措置が適用されません。不動産取得税とは、土地や建物を購入したり、建物を建てたりした際にかかる税金のことで、住宅にかかる税率は軽減措置によって3%(2021年3月31日まで)に設定されていますが、店舗兼住宅の場合は標準税率の4%が課税されます。この1%の差をどう捉えるかは人それぞれですが、少なくとも不動産取得税において住宅と同様には扱われない点は覚えておきましょう。

店舗兼住宅を活用する際の注意点

店舗兼住宅を活用するにあたり、いくつか注意しておくべきポイントがあります。

住宅ローン

店舗兼住宅を建てるためにローンを組む際、居住用スペースと店舗スペースで利用できるローンがそれぞれ異なります。住宅ローンを利用するためには、「建物の床面積のうち居住部分が5割以上」「店舗は自己使用」など、いくつかの条件をクリアしている必要があり、間取りにある程度の制限が生じます。
一方、店舗部分には事業者ローンを利用します。ちなみに、この事業用ローンの金利は住宅ローンよりも高めです。また、店舗兼住宅の居住スペースが総床面積の25%に満たない場合、固定資産税の「住宅用地の特例」を受けられないことも覚えておきましょう。

事務所利用にする場合

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店舗部分を事務所として利用する場合にも気を付けるべきポイントがあります。居住用と事務所用の物件では登記の種類が異なり、固定資産税の税率にも違いが生じます。住居契約で入居した場合は、事務所としての利用ができないため、登記を事務所用に変更してください。

事前に知っておきたい店舗兼住宅の設計ポイント

店舗兼住宅を設計する際には、事前に知っておきたいポイントがあります。実際に営業を始めてから不便が生じないよう、しっかり頭に入れておきましょう。

1階部分に店舗を設計

道路からの視認性が低い2階以上に店舗を設置すると、集客力が一気に落ちてしまいます。そのため、店舗の配置は1階にするのがベストといえるでしょう。
道路と面する側には大きな窓を設け、外側から店内の様子を確認できるようにすることもポイントです。店内の雰囲気や混み具合などが一目でわかるため、入店のハードルを下げることができます。
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店舗の立地が駅から遠い場合や郊外にある場合は、駐車場を確保しておくことも重要です。頻繁に仕入れが必要になるようであれば、荷捌き用のスペースを備えておくことが望ましいでしょう。ただ、花屋やベーカリーのように利用客の滞在時間が短い場合や、店舗の近くに時間決め駐車場があるような場合は、無理に駐車場を用意する必要はありません。

店舗と住宅部分の動線をわける

店舗兼住宅の設計では、それぞれの動線をわけることが鉄則です。店舗では商品の在庫や現金を取り扱うため、防犯性を高めるためにも店舗の入り口と自宅の玄関は離して配置し、動線が重ならないようにしましょう。店舗の入り口に監視カメラを取り付けておくとより安心です。
もし、将来的に店舗スペースを貸し出す予定があるのであれば、店舗と住宅の区画を完全にわけることをオススメします。

お客様の利便性を考慮

当然ですが、利用客にとって使いやすい設計にする必要があります。もし面積に余裕があるのであれば、店内のトイレは客用・スタッフ用の両方を設けるとよいでしょう。さらに、車いすのままでも入れるようトイレの幅を広めに取ると親切です。
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トイレを設置するためには、排水管の勾配を確保するために床を高くしなければならないケースがありますが、店の出入り口に段差が生じると車いすやベビーカーの利用者、高齢者には入店が困難になってしまいます。どうしても段差ができてしまう場合は、スロープや手すりを設置し、バリアフリー設計を意識しましょう。

店舗兼住宅の施工事例を紹介

店舗兼住宅の設計ポイントを押さえたところで、ここからはオシャレな店舗兼住宅の施工事例をご紹介します。

和室を海苔問屋に!解放感あふれるデザインの店舗兼住宅

ASTERよりご紹介する、築25年の戸建て住宅を店舗兼住宅にリノベーションしたこちらの建物。住宅スペースはもともと和室だった部屋の壁を撤去し、広々としたリビングに改装しています。現在は海苔問屋として営業している店舗スペースも、元和室の天井と床を撤去することで、開放感あるモダンな空間に生まれ変わりました。

築40年の戸建をプライベートサロン化した事例

築40年の戸建物件の一部をリノベーション。席数2席のプライベートサロンとしてオープンしました。店内は清潔感のある白を基調とし、床にはナラ材を採用。温かみのある店舗兼住宅が完成しています。こちらもASTERよりご紹介の事例です。

インダストリアルな雰囲気が魅力のライブスタジオ兼住宅

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SuMikaより、3階建ての建物のうち、1階をライブスタジオとした店舗兼住宅のご紹介です。防音性を高めるため1階のみをRC構造とし、2・3階の居住スペースには木造在来工法を採用して、コストを削減。ライブスタジオの壁と天井には打ち放しのコンクリートを採用し、インダストリアルな印象に仕上げています。

家賃の支払いやストレスフルな通勤の必要がなく、仕事とプライベートとの両立を叶えてくれる店舗兼住宅。これから自分の店を始めようと考えている人にとって、有力な選択肢の1つになるでしょう。
ですが、実際にどこに相談するのか、どの業者に依頼するのかを悩みますよね。
店舗兼住宅を検討の際は、「カシワバラ・コーポレーション」に相談してみるのがオススメです。創業以来70年にわたり、法人向けオフィスや個人向け住宅のリフォーム・リノベーションなど6,000棟以上もの工事を手掛けてきた、実績ある会社です。プロの目線から有益なアドバイスをもらえますので、ぜひ一度問い合わせてみてはいかがでしょうか?

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