【空き家の明日Vol.3】3つのコンセプトの部屋にDIY
DIYと言う視点から日本の空き家問題について考える【空き家の明日】。今回は千葉県松戸市のまちづくりプロジェクト MAD Cityで展開している「いろどりマンション」を訪れ、3LDKの部屋をそれぞれ異なった3つのコンセプトの空間に仕上げるというDIYに挑んだ、加藤敬さんのお部屋をピックアップしました。
公開日 2019.01.16
更新日 2022.01.07
今回の「空き家の明日」では、千葉県松戸市でクリエイティブな自治体を作るという取り組みをしているプロジェクト、MAD Cityが展開している「いろどりマンション」を取材。原状復帰が必要なくDIYし放題のこの物件には、クリエイティブな人々が集まり、思い思いに部屋を作り上げています。その中のひとつ、「敬花~ITSUKA~」という屋号で、空間デザイン、プロダクトデザインをされている加藤敬さんに、どのように部屋を作ったのか伺いました。
そもそも空き家の定義とは?
国土交通省では1年以上住んでいない、または使われていない家を「空き家」と定義しています。 その判断基準として、人の出入りの有無や、電気、ガス、水道の使用状況ないしそれらが使用可能な状態にあるか、物件の登記記録や所有者の住民票の内容、物件が適切に管理されているか、所有者の利用実績などが挙げられています。
3つの空間に仕切ることで落ち着けるように
この物件を選んだ理由は?
「自分で自由に室内を作れるのと、広さが魅力でした。以前にジュエリーの会社に勤めていたのですが、ウィンドウディスプレイもイベントも内装も全部自社でやる会社だったので、そこで自分で空間を作り上げる作業にはまってしまったんです」
それぞれの部屋のコンセプトがしっかりと分かれているようですが、このような形にした理由は?
「全部壁を取っ払って広い部屋にしても良かったのですが、僕はそれがなんか落ち着かない気がして…(笑)。なので、仕切りを入れて空間は分けようと考えていました。それと縦に長い間取りを活かしたかったので、床は3つの空間すべて同じ寸法の正方形をタイルのように貼っていきました。3つの空間はそれぞれ、土間の作業スペース、畳の小上がりとカフェっぽさを出した落ち着けるスペース、一番奥は収納とアイデア出しのためのスペースです」
アイデア出しスペースの一角。窓が大きくとられ、光が差し込んでくる。
さまざまな職業を経て身に着けた知識を、自分ひとりで形にしていく作業
どのような手順でDIYをしたのか教えていただけますか。
まず最初にすべての部屋の壁を壊してスケルトンにし、穴が開いているところを修繕したりするところから始まりました。
部屋をスケルトンにする作業。
入口から入った空間はもともと和室だったのですが、コンクリートをしいて土間にし、ちょっとした実験や制作ができるような作業スペースにしようと。
完成した土間の作業スペース。ベンチの下には収納スペースも。
玄関はコンクリートを丸くしたいなと思っていて、曲げ合板で形を作りましたね。
曲げ合板で作った弧を描く土間部分。
あとは廊下と部屋を仕切っていた壁を壊して、ポールを立てました。空間を仕切りつつ、開放感もでるようにしようと考えたんです。
ポールを立てている途中の作業風景。
中央のスペースも土間がつながっているんですね。
はい、気軽に来てコーヒーを飲んでもらえるように、カフェっぽさを意識したテーブルとイスを置きました。
カフェスペース。手作りのテーブルは折りたたむことができるようになっている。
このスペースのこだわりは、前からやってみたいと思っていた、じゅらく壁という手法で壁を塗ったことと、畳の小上がりを作ったことです。
畳の小上がり。お茶を飲んだり、友人と将棋をさしたりくつろげるスペース。
じゅらく壁は和風建築の代表的な塗り壁です。最初は難しくてぽろぽろと落ちてきたのですが、だんだんうまくなって最後はきれいに塗ることができました。小上がりは木材で足を組んで、その上に畳をはめこんで作りましたね。木材は赤い感じにして漆を塗っています。あまり和室っぽくないかもしれないですが、台湾でそのような空間を見たことがあって自分もやってみたいなと思って。あとは少しだけ光を取り入れるために、窓枠を入れました。
白い壁に木製の窓枠が、温かみを感じさせる。
アイデア出しのスペースは、どのようなところにこだわりましたか?
この部屋は弧を描く窓枠を新たに作ったところが大きな特徴でしょうか。前から一度やってみたいと思っていて。作り方は左右均一の弧を描くために木材をガイドとして曲線を作り、カットした板を組み上げた下地に貼り付けました。
なだらからなカーブを描く窓枠。
あとはベッド、本棚、タンスもDIYで作りました。
木枠から作ったベッド。マットレスの下は収納スペースになっている。
去年の9月に入居して、土日に少しずつやって今年の8月にやっと完成しました。今は一旦完成としていますが、今後は天井をフレームで組んでみたいなと思っています。
白、黒、木材でスタイリッシュな印象に。家具に関してはご自身でDIYしたものと、もらいものしかないというから驚き。
お話を聞いていると、前からやりたいと思っていたことを形にされているようですが、アイデアはどこからわいてくるんですか?
大学院修了後に京都の伝統工芸など、ものづくりにかかわる会社で、もの以外にもコーヒーや抹茶の勉強をしたり、大阪のインテリアデザイン会社、そのあと東京にきて花屋やジュエリーの会社と、転々としていました。それぞれの場所で勉強してきたことも、ここで形にしています。デザインはアイデアをどう形にするかも仕事なので、やってみようと思ったことをまずは自分で形にしてみようと、ここで試しています。
『想いを形として仕上げる』をコンセプトに、デザインに力を入れていきたい
これから「敬花~ITSUKA~」という屋号で活動されていくとお聞きしましたが、それをやろうと思ったきっかけを教えてください。
デザインをする上で物に求められる機能とか、もう既にありふれているとよく聞くようになりましたが、『本当に出尽くしてるかな、もっと考えられるんじゃないかな』と疑問に思っていたことと、暮らしの中にもっと一個人それぞれの想いが入ってきてもいいんじゃないかなと考えたことがきっかけです。そんなそれぞれの想いを形にするきっかけになったり、デザインとして魅力を発揮させる場面に携わりたいなと思っています。あとは本当に一人になってみて、どこまでいけるのか試してみたいと思って動き出しました。
『想いを形として仕上げる』、『暮らしに彩りを添えるデザイン』をコンセプトに、プロダクト、花、ワークシヨップ、インテリア、ディスプレイの仕事をやっていこうと思っているので、デザインやモノ作りにさらに集中して取り組んでいきたいなと考えているところです。
今後、DIYで取り組んでみたいことはありますか?
『敬花~ITSUKA~』の活動の一環として、一軒家兼店舗をまるごと手掛けてみたいという思いはありますね。免許を持っていないので2級建築士の資格も取得して、花屋兼カフェ兼インテリアショップのような空間を作れたらいいなと。一歩一歩進んでいきたいと思っています。
INFORMATION
「敬花~ITSUKA~」加藤敬さん
『想いを形として仕上げる』、『暮らしに彩りを添えるデザイン』をコンセプトに、プロダクト、インテリアのデザイン、花を用いた空間のデザインを行う。ワークショップも企画中。
itsuka.design@icloud.com
『想いを形として仕上げる』、『暮らしに彩りを添えるデザイン』をコンセプトに、プロダクト、インテリアのデザイン、花を用いた空間のデザインを行う。ワークショップも企画中。
itsuka.design@icloud.com
WRITTEN BY
Japan
DIYer(s)編集部です。DIYのアイデアやハウツー、おすすめツールやショップ情報まで幅広くお届けします!
Instagram
https://www.instagram.com/diyersjapan/