塗装のプロ“COLORWORKS”を突撃!「インテリアペイント」を通した住まいのこだわり方#1

日本人とペンキとの出会いは1854年のペリー来航時とも言われています。「黒船」と呼んだ艦船に塗られていた塗料はタールやピッチを原料とし、その耐久性の高さに当時の日本人は驚愕したそうです。ここから日本の塗料の歴史は大きく変わっていくことになりました。現在に至るまでペンキは様々な進化を遂げてきましたが、特に昨今のDIYブームから住まいをペンキで仕上げる人も年々増えているようです。以前に比べ「質感」や「性能」にこだわったペンキを購入できるほど選択肢が増えてきましたが、欧米のそれに比べると大きな差があるようです。 そこで今回こだわるのは「ペンキ」。ここではあえて「ペイント」と呼ばせて頂きます。90年代初頭からアメリカやイギリスから良質なペイントを輸入、塗料のみならずペイントの「カルチャー」から「色彩の効果」までも取り入れ発信し続ける「COLORWORKS」に、「インテリアペイント」のこだわりをお聞きしました。リノベーションに「インテリアペイント」を取り入れたいという方に必見の内容となっております!

公開日 2023.06.27

更新日 2023.06.27

塗装のプロ“COLORWORKS”を突撃!「インテリアペイント」を通した住まいのこだわり方#1

「COLORWORKS」のはじまり

COLORWORKSは、1964年創業の秋山塗料㈱の輸入部門として1994年にスタート。開始当初はどのような塗料を輸入していたのでしょうか?

塗装のプロ“COLORWORKS”を突撃!「インテリアペイント」のこだわり方#1
COLORWORKSが創設されるまでの秋山塗料は、日本の塗料を販売する会社でした。2代目の社長が海外で見てきたインテリアペイントの素晴らしさに感銘を受け、日本にはまだなかった輸入ペイントの市場と文化を取り入れるべく94年にCOLORWORKSを創設しました。
最初に取り扱ったのはアメリカでは名高い「ベンジャミンムーア」のインテリアペイントでした。ベンジャミンムーアの取り扱いが終わりイギリスの「Farrow&Ball」、オリジナルブランドの「HIP」と繋がっていきます。

オリジナルブランド「HIP」の誕生

グッドデザイン賞を受賞した御社の定番ペイント「HIP」。ラベルが印象的で最近ではホームセンターでもよく見かけます。「1488のカラーバリエーション」「3種のツヤ」「ゼロVOC」など発売当初はかなり画期的な商品だったと思います。この商品が生まれた経緯、そして「HIP」と他ペイントの差は何でしょうか?

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COLORWORKSの創設当時からオリジナルプロダクトの必要性を副社長の秋山は感じていました。それまでのペンキのイメージを変えたいという思いから、女性も扱いたくなるような「カワイイ」「オシャレ」なものにすべくデザインとブランディングに務めてきました。

実は「HIP」はアメリカ製なんです。豊富な「カラーバリエーション」や「耐久性」などが実現できるのは、やはり輸入ペイントならでは。ご使用頂いた方なら分かると思いますが、同じ量の国内のペイントと比べて粘度が高く、HIPのほうがずっしり重いことが分かります。これが「耐久性」や高い「隠ぺい力」に繋がります。このように、発売当時は国内のペイントと比べるとあらゆる点が規格外で且つ価格も高いことから、業界では異端児として見られていたかと思います。

希望の色を叶えてくれる「調色」

COLORWORKSがインテリアペイントを浸透させることができた理由の一つとして「調色」があるかと思います。欧米では当たり前の調色ですが、日本では小売の調色サービスは、馴染みがありません。最近はホームセンターでも調色をしてくれるところもあるようですが、調色の特徴やメリットはなんでしょうか。

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まず、HIPでは1488通りの色を作ることができます。カラーチャートからお選び頂いた色を正確に作るには、4種類の「ベース」と呼ばれる白色のペイントに12種類の「顔料」から決められた量を注入した後、しっかりと撹拌しなければなりません。これは「缶内調色」と呼ばれるもので、顔料はコンピューターで正確に決められた量を注入することで何度作っても同じ色を再現できます。

調色は国内メーカーでも以前からあったのですが、一斗缶(約18L)のような職人向けの量を作らなければなりませんでした。しかし、HIPであれば1クォート(0.9L)から調色が可能で、1缶で5m2分(畳2.7枚分)ほど塗ることができます。COLORWORKSは創設当初より小売を念頭に入れていました。この手軽さがHIPの人気を後押ししてくれたのだと思います。

実は選べる「ツヤ」

ホームセンターなどでペイントの「ツヤ」を選ぶということはあまりできせん。欧米ではインテリアペイントのツヤは重要で各メーカーがこぞって独自の質感を表現しています。このツヤは使い分けることで「効果」が変わると言われています。このツヤの違いがもたらす「効果」や「使い分け」などがあれば教えて下さい。

塗装のプロ“COLORWORKS”を突撃!「インテリアペイント」のこだわり方#1

キャビネットと壁ではツヤが異なる

HIPは「Flat(ツヤ消し)」「Egg Shell(2分ツヤ)」「Semi Gloss(5分ツヤ)」の3種類、イギリス製のFarrow&Ballでは「2%」「7%」「20%」「40%」といったツヤ展開です。ツヤの表現は各社によって異なり、ツヤによって「見え方」や「耐久性」などが大きく変わってきます。
 
光を吸収する「ツヤ消し」ほど落ち着いたイメージになるので、照明を入れる天井にはツヤ消しを提案することが多いです。ただ、ツヤ消しは手垢などの「汚れ」が付きやすいので、手が触れるような壁に使う場合は、汚れが付いても落としやすい2分ツヤのEggShellを提案させて頂くこともあります。また、基本的にペイントはツヤがあるほど「強度」が高くなり、水拭きなどのメンテナンスが容易になります。なので建具(ドアなど)や家具など使用が激しいと思われる箇所にはFarrow&Ballの家具用(ツヤあり)をおすすめしています。

壁や建具が異なるツヤであっても「調色」によって同色にすればお部屋に一体感を出すことができますし、逆に異なる色でアクセントをつけても良いと思います。「色」と「ツヤ」は常に並列で考え提案させて頂いています。

「色がもたらす」効果

COLORWORKSの社名からも「色がもたらす効果や作用」について尽力されているように思います。昨年には銀座にFallow&Ballのサロンをオープン。「カラーコンサルタンシー」というパーソナルなカラーコーディネイトのサービスも開始しました。インテリアにおける「色」選びの重要性をお聞かせください。

塗装のプロ“COLORWORKS”を突撃!「インテリアペイント」のこだわり方#1
ペイント自体の効能や成分などはもちろん重要ですが、COLORWORKSでは創業より「色」の提案にこだわってきました。インテリアに色を取り入れることで、気持ちに変化が生まれ、住まいが豊かになると考えているからです。長い間、日本の住まいでは使う色の選択肢が少なく、ほとんどが「白」を基調にした明るく清潔なイメージが保たれてきました。しかし、「白」にも様々なものがあり、あまりに白すぎれば「緊張感」を生む原因となります。色には意味があり、それらの微妙な差で気分の変化をもたらします。

これはお客様のエピソードなのですが、大学受験を控えたお子様の部屋の模様替えするということで現在の生活環境などをヒアリングした上で、Farrow&Ball No.245 Middleton Pinkを選ばれた母子がいらっしゃいました。それまでは物が散らかった部屋だったのですが、ペイントで色を変えたことによって部屋をきれいに使うようになり(片付けるようになり)、勉強に集中できるようになり無理だと思っていた国立大学に受かったということで感謝の言葉を頂きました。

インテリアペイントの普及へ邁進

「HIP」の登場によって、これまでの塗料との差に気づいた人も少なくないかと思います。気軽にペイントを楽しめるブランディングなどで従来のペイントの概念を変えることに尽力されてきましたが、これまでインテリアペイントを普及させるのに苦労した点などありますか。

塗装のプロ“COLORWORKS”を突撃!「インテリアペイント」のこだわり方#1
塗装のプロ“COLORWORKS”を突撃!「インテリアペイント」のこだわり方#1
ペイントが普及しづらい側面として「壁紙」との対比が挙げられます。工務店さんやコーディネーターさんは、扱い慣れたクレームの発生しづらいものをお施主さんに提案する傾向にあります。中でも「コスト」「施工性」などから言うと壁紙の右に出るものはないかもしれません。

壁紙はテクスチャーによってある程度陰影ができる為、下地の不陸(デコボコ)があったとしても表面的には目立ちにくいのです。一方ペイントはシビアで、下地の処理を丁寧にする必要があり、ちょっとした凹凸が仕上がりに影響したり、「クラック(ひび割れ)」の原因になったりします。このように少しでもクレームになる可能性を秘めていると、提案しづらくなるわけです。

しかし、このような状況を受け入れてばかりでは、住まいは豊かにはならないと考えています。そこで弊社では日本の地震が多いという特性や、欧米とは異なる施工方法などを考慮し「カラーワークスペーパー」という、ペイントする際の難易度を下げる下地クロスを開発。クレームを気にしてペイントを採用しにくかった方々にも受け入れていただけるようになりました。

ペイントの普及は大変難しく「市場」を変え、「ユーザー」を変えていかないと普及は難しいと考えています。「ペンキ」という言葉を使わないのもその一つです。我々が使う「インテリアペイント」は、これまでの「ペンキ」の持つイメージを払拭し気軽にスタイリッシュに使ってもらうための地道な活動でもあります。

まとめ

これまで語られてきた「ペンキ」とは似て非なるものを、COLORWORKSの「インテリアペイント」に感じて頂くことができたのではないでしょうか。輸入ペイントには当たり前に存在する「調色」や「ツヤ」が見た目だけでなく耐久性などにも影響してくるとは驚きでした。今回取り上げた「HIP」にはこればかりではなく「抗菌作用」や「セラミック微粒子」配合など上記では語り尽くせないほどの性能を持っています。リノベーションに取り入れたいとお考えの方は、まずはショールームに足を運ぶことをおすすめします。

想像以上にインテリアペイントの沼は深く、内容が盛りだくさんとなったため今回は2部構成でお伝えしていきます。次回は伝統的かつ最新鋭のペイントメーカー「Farrow&Ball」とリノベーションに大変参考になる「カラーコーディネイト」の話を伺います。お楽しみに!
カラーワークス東京ショールーム 〒101-0031 東京都千代田区東神田1-14-2 TEL:03-3864-0810
ファクトリー&ショールーム 〒242-0002神奈川県大和市つきみ野1‐1‐40 TEL:046-278-3029 
カラーワークス神戸ショールーム 〒652-0032 兵庫県神戸市兵庫区荒田町1-4-1-102TEL:078-862-8802
Farrow&Ball銀座サロン〒104-0061 東京都中央区銀座5-9-15銀座清月堂ビルB1F TEL:03-6264-5531 (要予約)

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