自分が求める最高のモノを作るハンドクラフトレザー集団
世界各地で見つけたDIYを発信すべく始まった“Pilgrimage to sacred places(=聖地巡礼)”。引き続きポートランドの情報をお届けする中で、今回はプラクティカルなレザーとキャンバスを使ったアイテムを展開する“Red Clouds Collective”をピックアップします。
公開日 2016.07.22
更新日 2022.01.07
手にする人の生涯の愛用品となることを目指し、ノースイーストの工房でレザーのウォレットやバッグなどの日用品を手作業で生み出すハンドクラフトレザー集団。デザイナーのセス・ニーフス氏が手掛けたブッグ型のレザー製iPhoneケース“the GOOD book”は特に人気を集め、ブランドの代表作となっています。まず、そのモノ作りに対しての思いについて伺いました。
「全ての製品に対する哲学として、製品の必要性において使い勝手が良いことを心がけています。やはりモノとして便利でなくてはならないし、何年も使い続けてもらいたいので。あと可能であれば、私たちの選んだ素材が時を経て味が増していくことを楽しんでほしい。次の世代へと渡されているうちに廃れていくのではなく、味が出る。そういう気持ちで職人魂を製品に吹き込んでいます」。
その言葉を裏打ちするように工房には手入れの行き届いた工具がずらり。そしてそれらを使い、実際にレザーケースを作る工程を見させてもらいました。
すべて手作業で行う工程も1つ1つ実にこまやか。彼らの製品の高いクオリティの所以を存分に感じさせられました。
続いて、自らブランドを営む彼らにとって、ここポートランドはどう映っているのでしょうか?
「10年以上前にポートランドへ移ってきたんだけど、当時はアーティストやミュージシャンが集う街だった。そのために定職につかなくても、1日1日を生きていける街だったんだ。それが最近では若手の専門職の街に変わってきたけように感じる。当時と比べて、ポートランドへ流れ込んでくる人々の野望や創造性の意識レベルはすごく高くなり、それがデザイン産業などのスタンダードになっているね。悲しいことだけど不動産価値はどんどん上がっていて、昔のようにただアートを作りたい、手工業のクラフトだけに向き合っていきたいと言う人は住めない街になってしまったよ」。
アメリカ国内でも住みたい都市NO.01と言われるほどの注目を集めると、やはりその環境も変わるよう。ただ、それでもポートランドらしさで変わらないこともあるそう。
「僕らは4年前にこのビジネスを立ち上げたんだけど、その時間があったからこそ今成り立っていて、先進することが可能な位置を取得した。ポートランドでは僕らみたいな手工業の小企業がライフスタイルのブランドとして成長できるような場所なんだ。全体的にポートランドは支え合うコミュニティができていて、お隣さんを助ける精神が根付いているんだよ。アーティストが大きな作品を動かしたり、引っ越したり、大掛かりなことをやることになれば昼夜問わず助けてくれる。実際に手を貸してくれる人もいれば、大きな騒音が続いてもある程度は我慢してくれたりね。大きな街へと変貌を遂げていくポートランドでも、この助け合いの精神は他の街にはない良さだよ」。
この支え合いの精神は実際に自分たちでも感じることができました。外国人に対して消極的な日本人にも優しく声をかけてくれ、取材先でも色々とおもてなしを受けました。きっとこの精神は私たち日本人も見習わないといけないことなのかもしれませんね。
さらに、DIYについても伺いました。
「DIYは自分で何かを作ること。僕自身の経験から言うとモノに息を吹き込む作業。どうしてか買ってきたモノにはいつも欠けている部分があったり、余分な箇所があったりするように感じる。例えば、ウォータープルーフのジャケットが必要だけれども、好きなブランドやデザインのジャケットはウォータープルーフ加工されていないといったようにね。そういったように自分の満足する製品を市場に求めても、どこかが欠けているから『Do It Yourself=自分の求める最高のモノを作る』んだよ。そして僕たちはもう一歩先を行って、全てが完璧かを確かめる作業も怠らない。簡単に壊れてしまわないかをテストし、パスできてからやっとお客様が手にすることができるんだ」。
すべては理想の一品を追い求めるためのDIY。その要素が欲しかったら足せばいいし、必要じゃなかったら外せばいい。そうした足し算や引き算の絶妙なバランスがRed Clouds Collectiveらしさを生み出しているのでした。
この考えは「ここに収まる棚が欲しいけど、市販でちょうどいいモノがない」といったような、私たち自身が何か作りたいと思う時のきっかけと同じではないでしょうか。そしてそのきっかけから、品質を突き詰めた結果、ブランドとして成長したRed Clouds Collectiv。彼らのアイテムは、“DIYの価値”を象徴するモノでもあったのでした。
以上、今回で6回目となる“Pilgrimage to sacred places”でした。次回の更新もぜひ楽しみにお待ちください。
INFORMATION
Red Clouds Collective
URL:http://redcloudscollective.com
WRITTEN BY
Japan
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