ポンと置いて小物を簡単収納!!江戸時代から愛される木工トレイをDIY

森で伐採した生木を、斧やナイフなどの手道具で加工。暮らしに役立つ道具を手軽にDIYできる温故知新な木工スタイルが、“グリーンウッドワーク”です。「豆皿」に続いて「グリーンウッドワーク 生木で暮らしの道具を作る」(学研プラス)からご紹介するのは、日本の伝統的な木工品の1つである「我谷盆(わがたぼん)」。こちらも、みずみずしい生木を削り出すことで完成する、渋〜い逸品です!

2022.01.07

ナイフでさっくり削れる木工=グリーンウッドワーク

1970年代後半〜80年代にかけて、欧米で生まれたとされる自然派の木工スタイル=グリーンウッドワーク(Green Wood Work)。“Greenwood”は“乾燥していない生木”、“Woodwork”には“木工”という意味があり、その名の通り生木を斧やナイフなどの手道具で加工して日用品を作る木工スタイルのことを指します。

「採れたての生木って、木工に使えるの!?」なんて具合に驚く人がいるかもしれませんが、テーブルソーやトリマーなどといった機械がなかった時代は、むしろそちらが一般的。多くの人々は、柔らかくて削りやすい生木で日用品を作っていたそうです。もちろん、ここ日本でも例外ではありません。

みずみずしい生木で伝統的なお盆をDIY

日本古来のグリーンウッドワーク。その一例として挙げられるのが、「我谷盆」という伝統的な木工品です。なんだか独特な名前は、高度成長期にダム建設の影響で廃村となった石川県・我谷村(わがたにむら)が由来だとされます。その歴史は古く、木地師(きじし)と呼ばれる木工職人や、農家の人々が副業として作っていたという記録が、江戸時代の資料にも残っているそう。

当時は、煙草盆や神棚に供えるお米を入れる容器などとして使われていたようですが、現代ならクリップやアクセサリーをまとめたり、メガネトレーにしたりするのが小粋な使い方かもしれません。

というわけで今回も、グリーンウッドワークのテクニックを完全網羅したガイドブック「グリーンウッドワーク 生木で暮らしの道具を作る」(学研プラス)より、「我谷盆」の作り方を抜粋してお届けします。
ただし、前にご紹介した「豆皿」のレシピと比べると「我谷盆」は製作難易度が少々高め…かもしれません。あくまでダイジェスト版としてお届けするので、技法やキレイに仕上げる秘訣が気になる人は、書籍を併せてチェックしてくださいね。

材料

今回は、長さ30cm、直径15cmの栗の丸太を使用。我谷盆といえば栗が定番ですが、他の樹種を使っても問題ありません。

道具

(左上から時計回りに)

・斧
・木槌(片側にゴムシートを貼った大きめのもの)
・平ガンナ
・反りガンナ
・自作の削り台
・深丸ノミ5分(15mm)
・平ノミ8分(24mm)
・竹串と角棒(深さを測るため)
・ノコギリ
・セン
・削り馬(※1)

※1 削り馬は写真に写っていません。

粗彫りして、木口面を仕上げ彫りする

ここでは、木材の内側を所定の深さまで彫り、木口(木材を横に切った切断面)を生木のうちに仕上げ彫りします。
まずは、丸太を真ん中から斧で割り、もう一度半分にカットしましょう。
削り馬(※21)に板を挟み、表と裏をセン(※32)で削って均一の厚みに(約20mm)。その後、板を縦に挟んで両側を削って幅を揃えましょう。センを持っていない場合は、カンナでも代用可能です。

※2 上の台に材料を挟み、ペダルを踏んで固定する道具。
※3 大きな板や、長い棒を削るときに用いる道具。両手で持ち、手前に引いて削る。
削り馬の後ろに木材を当てて固定し、ノコギリで任意の長さにカット。削り馬がなければ、作業台でも代用可能です。その際は、材を載せて手でしっかり押さえるか、クランプで固定してノコギリで切りましょう。
木裏(芯に近い側面)を上にして、縁から8mmと12mmのところに目安の線を引きます。外側の線同士が交わるところには、半径20mmの円弧を描いてください。外側の線は横から見た縁のてっぺん、内側の線は縁の底を表します。これは、作業を進める上でとても大切な工程です。
木裏(芯に近い方)に目安の線を引いたら、削り台(写真は著者自作のもの)に木材を固定して四隅から彫り始めます。45度に丸ノミを傾けて、角に書いた円弧の中央から内側に木槌で叩き入れてください。その両側にも少し重なるように、ノミを叩き入れましょう。すると、円弧に沿ってノミの跡が3つ並びます。
続いて、木口と木端(木材の芯に直角な断面)に平ノミを叩き入れます。どちらもノミの角度は45度。木端側は木目に沿っているため割れやすいので、木口より軽めに叩いてください。
丸ノミで底を掘る際は、体に近い側の中央あたりから左端へ。溝と溝の間は、平ノミの幅と同じぐらい空けておきましょう。左側を彫り終えたら板を反転させ、溝を端から端までつなげて掘ってください。
平ノミで溝と溝の間をさらって平らに。一度の作業で5mmほど掘り下げることが可能です。表面が平らになったら溝を彫り、同じ作業を繰り返しましょう。
角棒に竹串を差した道具を用意して、最も深い場所の深さを測ってください。底の厚みが6〜7mmになったら、次の作業に進みましょう。
丸ノミを垂直に持ち、円弧に沿ってノミの跡3か所に叩き入れてください。木口の壁は、刃先を外側の線に合わせて彫ります。この際、溝の底を内側の線と平行にするのがポイント。
木口側をキレイに仕上げるためには、平ノミの平らな面を上にして、壁の隅に向けて叩くのがコツ。強い力をかけすぎると割れてしまうので、注意が必要です。上からも丸ノミで軽く叩くと、余分な材を取り除けます。

こちらは、四隅・木口の仕上げ彫り終了時点の写真。木口は硬いので、生木のうちに掘り終えるようにしましょう。

粗彫りして、木口面を仕上げ彫りする

1〜2日置いて表面を乾燥させたら、底と木端面(長辺側)を仕上げていきましょう。
丸ノミで手前中央あたりから左方向へ、底の溝を彫ります。少しずつ重ねながら、平行に掘りすすめるのがコツです。手前に数本彫ったら反転させ、溝を端から端までつなげて彫りましょう。
両端から掘り進め、削っていない箇所が真ん中に残ったら、溝があと何本入るかを検討しつつ掘り進めてください。溝の重ね具合で、本数を調整します。
続いて、平ノミの平らな面を上にして底の溝にのせ、木端の隅に向けて叩きます。
木端の両側に切れ目を入れたら、平ノミの平らな面を外側にして持ち、切れ目に向かって上から叩いてください。この際、最初に描いた線(内側)の延長線上に、木端の壁の底がくるようにし、余分な材を取り除きましょう。
丸ノミの溝を木端の壁まで延長。その際、強く叩きすぎて壁を傷つけないようにしてください。
続いて、木端の壁を丸ノミで彫って仕上げていきます。丸ノミを垂直に持ち、底の溝に位置を合わせるように彫ってください。底に丸ノミの跡が残らないよう、力加減に注意しましょう。
以上で、内側が完成です。

裏面を仕上げ、面取りと塗装をする

無塗装でも魅力的な「我谷盆」ですが、塗装するとより渋〜い印象に。ここでは、栗の木片とスチールウールを用いた「クリシブ仕上げ」をご紹介します。
裏返しにして起き、木口と木端に平ガンナで15度程度の角度をつけます。厚さ20mmの場合、淵から5mmのところに線を引いておきましょう。カンナがなければ、斧やノミ、ナイフを使ってもOKです。
裏返しにして置き、四隅を平ノミで3箇所ずつ削って落としてください。この際、表側にある四隅の円弧とマッチするようにしましょう。
裏面を反りガンナで削っていきます。木目と直角になるよう削ると、刃が食い込まずスムーズに削れるでしょう。意匠的な加工のため、真っ平らにする必要はありません。
表/裏/外/内を確認し、尖っているところをカンナで削って面取り。ノミや小刀などを使ってもOKです。
木灰を水で溶いて作った灰汁に、5〜10分ほど浸します。ノミの鉄と栗が反応して現れた黒ずみが消え、材が赤みを帯びたら布で拭き取りましょう。
最後に「シブ塗り」を行いましょう。カットしたときに出た栗の木片とこぶし大のスチールウールを水の入った鍋に入れ、数十分煮ると黒い液体が出来上がります。これを冷まして刷毛で塗り、拭き取らずに乾かせば「我谷盆」の完成です!

ダイジェスト版としてお届けした「我谷盆」レシピ、いかがでしたか?本格的な木工レシピが満載の本書には、、作業時の注意点やクオリティアップの秘訣などが、より詳しく解説されています。さらに、伐採や斧、ナイフなどといったグリーンウッドワークを楽しむために必須となる技術も完全網羅。愛嬌たっぷりの日用品を生木で作ってみたいという人は、下記リンク先も要チェックです!

INFORMATION

著者紹介

久津輪 雅(くつわ まさし)
1967年生まれ、福岡県出身。20代はNHKディレクターとして「クローズアップ現代」(NHK)などを担当。30代で木工に転じ、イギリスで家具職人に。40代からは岐阜県立森林文化アカデミーで木工教員。グリーンウッドワークの研究・開発・普及をライフワークにしている。

WRITTEN BY

DIYer(s)

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