島津が行く! 世界のホームセンター
本来の目的では使われなくなった段ボールを、財布として蘇らせているプロジェクト「Carton」。運営するのはアーティスト・クリエイター・デザイナーの島津冬樹氏です。彼は世界中に足を運び、各地で段ボール収集に勤しんでいます。その際、必ずと言っていいほど立ち寄るのがホームセンター。アメリカにドイツ、南アフリカ、ミャンマー、ブルガリアなど、海外ではどんな場所なのか、じっくりと伺ってきました。
2022.01.07
30カ国を回って段ボール集めする男、島津冬樹
オーストラリアにて。「清掃中の看板は日本でも見かける機会こそ多いですが、売っているところはそうないはず。迷わず購入しました」。
「驚いたのがミャンマー。貯水タンクのバリエーションがとても豊富なんです。つまり、上水道が発達していないため、多くの家庭にとってマストなんでしょう」。国の発展具合まで反映するのがホームセンターなのです。島津さんが見てきた各国のホームセンター事情、一体どのようなものだったのか教えてもらいました。
海外の移動手段はほとんどが自転車。巨大なコンテナに収納して持って行くそう。
拾った段ボールで引き出し収納も製作。作業部屋にはほかにも試作品が多数並んでいます。
日本で見つけたオーストラリアのオレンジの段ボール。「オレンジが入っていたとは思えないデザイン。必須情報が少なく、すごくユルい。日本では考えられない発想に惹かれます」。
日本とは違う世界のホームセンター
ドイツでのホームセンターの定番が『OBI』。「ショップカラーのオレンジを押し出した段ボールです。パリッとしていて肌触りも良いんですよ」。
「単なるホウキなんですが、気軽に買ったら空港で輸送代として約2万も取られました。あげく、到着したら壊れているという。だけど、それも含めて思い出です!」。
『PRO1』はミャンマー屈指のホームセンターで、ビニール袋にまでデザインを落とし込んでいます。「キャッチコピーも秀逸じゃありませんか?」
ホームセンターから知るお国柄
気になる看板はブルガリアにも。「どうやら"ホスピタルホール"と書いてあるみたいで、一般家庭では使わないだろうと。でも、日常的に売っているんです。つまり、ニーズがある。人が集まる文化のある国では、ホールを示すことの重要性も高いのだろうと予想しています」。
日本と品揃えに大差がないと思えたのがドイツ。「ただ、ショップごとのイメージカラーを大切にする傾向があります。『OBI』=オレンジ、『プラクティカ』=ブルーみたいな。プライベートブランドも多いですね」。
アメリカは『ジャイアント イーグル』のガーデニング袋。「庭掃除で出た葉っぱを捨てる袋です。土に還る素材になっていて、エコ意識の強いアメリカでは当たり前の商品」。
「ヤードセールの看板は、自分の家で不用品を売っていることを示します。家すら不動産屋を介さずに売買しようとするとする、アメリカ人らしい看板です」。
ホスピタルホールの看板はブルガリアにて。「看板はその国の文化と密接にリンクしている場合が多いんです。明確な意味、目的がわからなくたって、背景を色々と考えるのも一興」。
「ドイツのホームセンターはそれぞれがイメージカラーを持っています。自社商品には必ず反映させていて、デザイン的にも優れたアイテムが多いんです」。
同じくヨーロッパ寄りのカルチャーを持つオーストラリアは、比較的DIY意識が強く、そこそこの規模のホームセンターが。「だいぶアメリカ色が濃いめです。天井が高く、ネジや釘などは大量に買うのが当たり前の雰囲気。家族連れが多いのも特徴ですね」。
南アフリカで購入したEXITと消火ホースのステッカー。「エマージェンシー系のシンボルは、どの国でもシンプルでわかりやすい。それでも微妙な違いがあって刺激を受けます」。
フィンランドのパッケージメーカーが製作するネットは南アフリカで。「正しい使い方がわからなくても、何かに使える可能性を感じたら買ってしまいます。日本で見かけない代物ならなおさら」。
オーストラリアのホームセンターに陳列されていたステッカーたち。猛犬注意や非常口、赤ちゃんが寝ていますなど、多くは万国共通のメッセージですが、NO JUNK MAILから郵便事情が感じ取れます。
意外なものを扱っているのがホームセンターの魅力。「オーストラリアの仮免マークです。90キロ以上出してはダメという表示まで」。
ホームセンターで各国の DIY 事情が想像できる
上段左から順にブルガリア、アメリカ、オーストリア、オーストラリア、アメリカ、ブルガリア。 下段左から順に南アフリカ、アメリカ、アメリカ、中国、ドイツ
DIY文化の浅いアジア圏では工具や材料が少なく、日用品中心の品揃え。
クリエイター心を刺激するオリジナリティの宝庫
島津さんに密着したドキュメンタリー映画『旅するダンボール』公開間近!
12月7日より
YEBISU GARDEN CINEMA/新宿ピカデリー
MOVIX仙台、MOVIX橋本、ミッドランドスクエア シネマ、MOVIX京都、神戸国際松 竹ほか 全国順次公開
http://carton-movie.com
島津冬樹(段ボールアーティスト)
1987年、神奈川県生まれ。多摩美術大学情報デザイン学科卒業後、大手広告代理店を経て2015年よりアーテイストに。「不要なものから大切なものへ」と掲げ、放置されている段ボールから財布を作るプロジェクト「Carton」立ち上げ。段ボールを集めるために巡った国は30以上。展示やワークショップも国内外問わず、多数開催している。
WRITTEN BY
Japan
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