島津が行く! 世界のホームセンター

本来の目的では使われなくなった段ボールを、財布として蘇らせているプロジェクト「Carton」。運営するのはアーティスト・クリエイター・デザイナーの島津冬樹氏です。彼は世界中に足を運び、各地で段ボール収集に勤しんでいます。その際、必ずと言っていいほど立ち寄るのがホームセンター。アメリカにドイツ、南アフリカ、ミャンマー、ブルガリアなど、海外ではどんな場所なのか、じっくりと伺ってきました。

公開日 2018.11.19

更新日 2018.11.19

島津が行く! 世界のホームセンター

30カ国を回って段ボール集めする男、島津冬樹

島津が行く! 世界のホームセンター
多摩美術大学を卒業後、大手広告代理店に入社し、現在はアーティストとして活躍している島津冬樹さん。 段ボールを再利用したウォレットが話題のブランド「Carton」の運営も行っています。旅にハマったのは大学2年生の時。初海外だったN.Yでカルチャーショックを受けたそう。「当たり前なんですが、走っている車やビルの形、すべてが日本と異なっていて」。そして、段ボールとの出会い。「日本の無愛想なそれとは全然違う、デザインを学んでいた僕に突き刺さるカッコよさ。世界には自分の知らない素敵な段ボールがあることを知り、ほかの国のも見てみたい! との欲求が生まれました」。2018年末時点で、訪問した国は30以上。積極的に観光地を回るわけではなく、ただ面白いもの、日本では会えない異文化アイテムを探して過ごすと言います。そのちょっぴりクレイジーな姿は、彼が題材の映画『旅するダンボール』が製作されるほど。「メインターゲットの段ボールをゲットするため、ホームセンターには必ず行きます。使われなくなったのが放置されているだけでなく、引っ越し用としてオリジナル段ボールが売っているんです」。
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オーストラリアにて。「清掃中の看板は日本でも見かける機会こそ多いですが、売っているところはそうないはず。迷わず購入しました」。

ホームセンターでしか買えない看板類も興味深いアイテム。「言語、デザイン、色など、国の個性が出ていて面白い。表示されている内容も含め、さまざまなことが読み取れます」。さらに、わざわざ海外で手に入れる必要のない日用品まで。「だって使うたび、いつどこでどのように買ったのかって、ストーリーが思い出せるでしょう? 苦労して手に入れたからこそ大事にもしますし」。世界各地で手に入れた多岐に渡るコレクションは、インスピレーションを得るための重要なアーカイブにもなっているとも。
「驚いたのがミャンマー。貯水タンクのバリエーションがとても豊富なんです。つまり、上水道が発達していないため、多くの家庭にとってマストなんでしょう」。国の発展具合まで反映するのがホームセンターなのです。島津さんが見てきた各国のホームセンター事情、一体どのようなものだったのか教えてもらいました。
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海外の移動手段はほとんどが自転車。巨大なコンテナに収納して持って行くそう。

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拾った段ボールで引き出し収納も製作。作業部屋にはほかにも試作品が多数並んでいます。

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日本で見つけたオーストラリアのオレンジの段ボール。「オレンジが入っていたとは思えないデザイン。必須情報が少なく、すごくユルい。日本では考えられない発想に惹かれます」。

日本とは違う世界のホームセンター

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「ショップロゴが入った段ボールって、日本では見かけませんよね」。段ボール自体は日本のホームセンターでも購入できますが、無地が当たり前。「海外、特に欧米だと店ごとにオリジナルのデザインが施されているんです。個性があって、まぁオシャレで」。売っている商品は地域で若干違いがありますが、品質はどこもあまり変わらないとか。「僕がクオリティを意識して買っていないからかもしれませんが(笑)」。
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ドイツでのホームセンターの定番が『OBI』。「ショップカラーのオレンジを押し出した段ボールです。パリッとしていて肌触りも良いんですよ」。

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「単なるホウキなんですが、気軽に買ったら空港で輸送代として約2万も取られました。あげく、到着したら壊れているという。だけど、それも含めて思い出です!」。 

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『PRO1』はミャンマー屈指のホームセンターで、ビニール袋にまでデザインを落とし込んでいます。「キャッチコピーも秀逸じゃありませんか?」

ホームセンターから知るお国柄

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「アメリカのホームセンターは、やっぱりイメージ通り巨大。店舗数も半端じゃないんです。DIYが盛んなのはもちろん、庭の手入れを年中している人たちですから、ガーデニング用品が豊富ですね」。島津さんがよく購入するプラスチック看板にも、国のキャラクターがハッキリと。「家の売買まで自分でする国民性ですから、House For Saleなんて日本にはない一枚が普通にあります」。そしてキャップ類にも注目を。「スタッフ用のユニフォームキャップが販売されています。店員たちがプライド持って働いている感じですね」。
気になる看板はブルガリアにも。「どうやら"ホスピタルホール"と書いてあるみたいで、一般家庭では使わないだろうと。でも、日常的に売っているんです。つまり、ニーズがある。人が集まる文化のある国では、ホールを示すことの重要性も高いのだろうと予想しています」。
日本と品揃えに大差がないと思えたのがドイツ。「ただ、ショップごとのイメージカラーを大切にする傾向があります。『OBI』=オレンジ、『プラクティカ』=ブルーみたいな。プライベートブランドも多いですね」。
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アメリカは『ジャイアント イーグル』のガーデニング袋。「庭掃除で出た葉っぱを捨てる袋です。土に還る素材になっていて、エコ意識の強いアメリカでは当たり前の商品」。

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「ヤードセールの看板は、自分の家で不用品を売っていることを示します。家すら不動産屋を介さずに売買しようとするとする、アメリカ人らしい看板です」。

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ホスピタルホールの看板はブルガリアにて。「看板はその国の文化と密接にリンクしている場合が多いんです。明確な意味、目的がわからなくたって、背景を色々と考えるのも一興」。

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「ドイツのホームセンターはそれぞれがイメージカラーを持っています。自社商品には必ず反映させていて、デザイン的にも優れたアイテムが多いんです」。

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「少し毛色が違うのが南アフリカ。ヨーロッパ文化をベースにしながら、アジアっぽい乱雑さもある感じです」。佇まいはホームセンターなのに、DIYするギアや材料より、日用品が多い印象だそうです。そして、少しお金のある家なら、セキュリティ会社と契約しているのが当たり前の環境なので…。「防犯グッズが充実しています。各種ロックに柵、ネットなど。高級住宅街とスラムが道一本隔てただけ、という地域がそこいらにある国ですからね」。
同じくヨーロッパ寄りのカルチャーを持つオーストラリアは、比較的DIY意識が強く、そこそこの規模のホームセンターが。「だいぶアメリカ色が濃いめです。天井が高く、ネジや釘などは大量に買うのが当たり前の雰囲気。家族連れが多いのも特徴ですね」。
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南アフリカで購入したEXITと消火ホースのステッカー。「エマージェンシー系のシンボルは、どの国でもシンプルでわかりやすい。それでも微妙な違いがあって刺激を受けます」。

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フィンランドのパッケージメーカーが製作するネットは南アフリカで。「正しい使い方がわからなくても、何かに使える可能性を感じたら買ってしまいます。日本で見かけない代物ならなおさら」。

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オーストラリアのホームセンターに陳列されていたステッカーたち。猛犬注意や非常口、赤ちゃんが寝ていますなど、多くは万国共通のメッセージですが、NO JUNK MAILから郵便事情が感じ取れます。

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意外なものを扱っているのがホームセンターの魅力。「オーストラリアの仮免マークです。90キロ以上出してはダメという表示まで」。

ホームセンターで各国の DIY 事情が想像できる

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上段左から順にブルガリア、アメリカ、オーストリア、オーストラリア、アメリカ、ブルガリア。 下段左から順に南アフリカ、アメリカ、アメリカ、中国、ドイツ

お国柄が現れるホームセンターの中でも、個性を掴みやすいのがボンドなのだとか。「ドイツやアメリカなど、DIYが日常的なエリアではボンドの容器が工夫されていて、持ちやすくコンパクトなのが多いです。口も塗りやすい形状。一方、アジア圏だとボリューム重視の傾向強め。特に中国はチューブ式より、大きなタライに入っているのがスタンダードのようでした」。やはり、大規模なホームセンターがある国ほどDIYが盛んで、アジアだと個人で何かを作り出すレベルには至っていないようす。「アジアはまた別の価値観だと思います。物を大事にする精神がすごいんですよ。例えばミャンマーは修理屋がたくさん。おっさんが軒先で営んでいる場合もあるほどです。ラジオやキャリーケースなんかは、そういった人たちに小銭で直してもらって、長い年月使うんです。必要とされる技術が違うんですね」。
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DIY文化の浅いアジア圏では工具や材料が少なく、日用品中心の品揃え。

クリエイター心を刺激するオリジナリティの宝庫

DIY先進国のドイツでは、トイレやバスタブといった大型かつ、水回りの工事が必要なアイテムまでホームセンターで買えるそうです。逆に作り出すより、直す方に重点を置かざるを得ないミャンマーのような国は、生活のための必需品が充実。その土地の文化や人々の暮らしを如実に反映するホームセンターは、島津さんのようなクリエイティビティ溢れる人物にとって刺激だらけといえます。身近な存在なのに異文化。そんなアイテムに触れて、新鮮な思いがしたいのなら、次の海外旅行では観光地を狙わず、普通の町の普通のホムセン巡りに挑んでみては?

島津さんに密着したドキュメンタリー映画『旅するダンボール』公開間近!

世界30カ国の街角で捨てられた段ボールを拾って、かわいくてカッコいい段ボール財布に。<不要なものから大切なもの>を生み出す、いま世界からもっとも注目の<段ボールアーティスト>島津冬樹の活動に迫ったドキュメンタリー映画。あなただけの大切なもので、未来を支えるアップサイクル。

12月7日より
YEBISU GARDEN CINEMA/新宿ピカデリー
MOVIX仙台、MOVIX橋本、ミッドランドスクエア シネマ、MOVIX京都、神戸国際松 竹ほか 全国順次公開

http://carton-movie.com
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島津冬樹(段ボールアーティスト)


1987年、神奈川県生まれ。多摩美術大学情報デザイン学科卒業後、大手広告代理店を経て2015年よりアーテイストに。「不要なものから大切なものへ」と掲げ、放置されている段ボールから財布を作るプロジェクト「Carton」立ち上げ。段ボールを集めるために巡った国は30以上。展示やワークショップも国内外問わず、多数開催している。

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