外壁に使われるスパンドレルとは? よく使用される建物も解説
外壁は建物の外観を担うだけではなく、防災の面でも大きな役割があります。そのため、新築やリフォームの際は特に慎重に選択する必要があります。本記事では、外壁のひとつであるスパンドレルの機能や性質について詳しくご紹介します。
公開日 2022.12.25
更新日 2024.02.07
建物の外壁を選ぶことは、建物の外観を選ぶこととほぼ同じと言っても過言ではありません。そのため、新築やリフォームの際は特にこだわりを持って選ぶ人が多い部分です。しかし、外壁には美観だけでなく防災面においても重要な役割があるので、そういった観点からも慎重に選ぶ必要があります。そんな外壁のひとつにスパンドレルがあります。本記事ではスパンドレルがどのようなもので、どんな建物に有効なのかを詳細に解説していきます。
スパンドレルとは?
スパンドレルとは、端的に言えば「防火区画」に用いられる外壁のことです。これだけ聞いても、なんとなく「火災を防ぐための壁かな?」というくらいのイメージしか浮かばないかと思います。ですので詳しく掘り下げていきましょう。
スパンドレルを、防火区画に面する外壁に設置するのには理由があります。ビルなどの大きな建物で火災が起きてしまうと、火の手はあっという間に広がってしまい、甚大な被害を及ぼすでしょう。そこで防火区画には、燃えにくい構造の壁や防火扉、床などを用い、広い建物を一定の区画に区切ることで、火災が広がってしまうのを防いだり、避難経路を確保したりする役割があります。防火区画は、条件によって設置が義務付けられており、詳細は建築基準法施行令第112条に規定されています。
防火区画は設置するだけでも建物内の火災被害を小さくするために有効です。しかし、もしそこに接している外壁や窓に火災対策が施されていなかったら、外壁や外気を伝って延焼が起こってしまう可能性があります。そのため壁や床、庇、袖壁も火災対策が施された構造にする必要があります。その構造を総称してスパンドレルと呼ぶわけです。
スパンドレルを、防火区画に面する外壁に設置するのには理由があります。ビルなどの大きな建物で火災が起きてしまうと、火の手はあっという間に広がってしまい、甚大な被害を及ぼすでしょう。そこで防火区画には、燃えにくい構造の壁や防火扉、床などを用い、広い建物を一定の区画に区切ることで、火災が広がってしまうのを防いだり、避難経路を確保したりする役割があります。防火区画は、条件によって設置が義務付けられており、詳細は建築基準法施行令第112条に規定されています。
防火区画は設置するだけでも建物内の火災被害を小さくするために有効です。しかし、もしそこに接している外壁や窓に火災対策が施されていなかったら、外壁や外気を伝って延焼が起こってしまう可能性があります。そのため壁や床、庇、袖壁も火災対策が施された構造にする必要があります。その構造を総称してスパンドレルと呼ぶわけです。
スパンドレルが必要な建物
スパンドレルは、防火区画の機能を正常に保つための構造であるため、一部を除いて設置しなければなりません。つまり、防火区画が必要な建物のほとんどに設置が求められているということです。それでは、どのような基準で建物に防火区画が必要とされているのかご説明します。
面積区画
面積区画とは、建物の規模や構造が一定の基準を満たす場合に設置する必要がある防火区画のことです。詳しい内容は建築基準法施行令第112条の第1項~第4項に規定されていますが、一部例をあげると「主要構造部を耐火構造とした建築物で、延べ面積が1,500㎡以内の場合、1時間準耐火構造の壁・床で区画する」などがあります。このように規定される防火区画にはスパンドレルの設置が必要です。
高層区画
防火区画のうち、11階以上の建物に設置する必要がある防火区画のことです。高層の建築物では、はしご車による救出などが困難であるため、特別により厳しい規制が設けられています。
建築基準法施行令では、第112条の第5項~第8項に規定が記載されています。例えば「一般の建築物で11階以上の部分は、床面積100㎡以内ごとに区画し、区画の床・壁の構造は耐火構造にする」という内容が規定されています。このような防火区画にも、スパンドレルの設置が必要です。
建築基準法施行令では、第112条の第5項~第8項に規定が記載されています。例えば「一般の建築物で11階以上の部分は、床面積100㎡以内ごとに区画し、区画の床・壁の構造は耐火構造にする」という内容が規定されています。このような防火区画にも、スパンドレルの設置が必要です。
竪穴区画
防火区画のうち、階段やエレベーターの昇降路など、いわゆる吹き抜け部分が一定の基準を満たす場合に設置する必要のある防火区画のことを竪穴区画と呼びます。こちらも面積・高層区画同様に、建築基準法施行令に規定があり、第9項には「耐火構造、準耐火構造等で3階以上もしくは地階に居室のある建築物の吹き抜け部分は準耐火構造にする」と規定されています。このような防火区画にもスパンドレルの設置が必要です。
異種用途区画
防火区画のうち、さまざまな用途の部分が混在する建築物に必要な防火区画のことです。例えば、百貨店や映画館のような建物に設置が求められます。
異種用途区画は、建築基準法施行令第12項~第13項に詳しい規定があります。この異種用途区画に関してはスパンドレルの設置は不要です。この防火区画だけ不要なのは、用途の違う区画ごとに防火設備で区画しなければならないと定められているためです。また、建物の運用をスムーズにするためという側面もあります。もしこの例外がなければ、テナント入れ替えなどで用途変更を行うたびに外壁の改修工事が必要になってしまう恐れがあります。こういった理由から、異種用途区画にはスパンドレルの設置は不要となっていますが、面積区画、高層区画、竪穴区画のどれかを兼ねている場合はスパンドレルの設置が必要になるので注意しましょう。
異種用途区画は、建築基準法施行令第12項~第13項に詳しい規定があります。この異種用途区画に関してはスパンドレルの設置は不要です。この防火区画だけ不要なのは、用途の違う区画ごとに防火設備で区画しなければならないと定められているためです。また、建物の運用をスムーズにするためという側面もあります。もしこの例外がなければ、テナント入れ替えなどで用途変更を行うたびに外壁の改修工事が必要になってしまう恐れがあります。こういった理由から、異種用途区画にはスパンドレルの設置は不要となっていますが、面積区画、高層区画、竪穴区画のどれかを兼ねている場合はスパンドレルの設置が必要になるので注意しましょう。
設置する位置
スパンドレルは、防火区画にただ設置さえすれば延焼を防げるというものではありません。火の回り方を想定した効果的な位置に設置する必要があります。防火区画の開口部から別室へ火が回り込むのを防ぐことのできるような位置に設置するのが基本的な考え方です。外壁のリフォームを検討する時は、建築物の防火区画について確認すると同時に、適切な位置にスパンドレルを設置できているかも確認するとよいでしょう。
スパンドレルがよく使用される建物
スパンドレルには外装材としての一面もあります。その場合は金属化粧板の一種という意味合いで使われ、主に建物の外壁として使用されています。
限られた建物だけに使用できるというわけではなく、住宅・商業施設・ビルなど幅広い建物に使用でき、その用途の幅広さも特徴のひとつとなっています。また、施工性の高さもスパンドレルの特徴です。外壁以外でも、ネオンや看板の下地などで利用されるほどです。
それらの特徴からリフォームでも活躍できる外壁材としても知られており、木目調のデザインが施されたものや角波がオシャレにあしらわれたものなど、デザイン性の高いスパンドレルも登場しています。
ちなみに近しい言葉に「サイディング」がありますが、こちらは外壁に使うボード状の外装材のことで、大きく分けて窯業系、合成樹脂系、金属系の3種類あります。外装材という観点で見た時、スパンドレルはこのサイディングのうちのひとつに分類されます。
限られた建物だけに使用できるというわけではなく、住宅・商業施設・ビルなど幅広い建物に使用でき、その用途の幅広さも特徴のひとつとなっています。また、施工性の高さもスパンドレルの特徴です。外壁以外でも、ネオンや看板の下地などで利用されるほどです。
それらの特徴からリフォームでも活躍できる外壁材としても知られており、木目調のデザインが施されたものや角波がオシャレにあしらわれたものなど、デザイン性の高いスパンドレルも登場しています。
ちなみに近しい言葉に「サイディング」がありますが、こちらは外壁に使うボード状の外装材のことで、大きく分けて窯業系、合成樹脂系、金属系の3種類あります。外装材という観点で見た時、スパンドレルはこのサイディングのうちのひとつに分類されます。
スパンドレルの種類
外壁に適したスパンドレルは大きく分けて3種類あります。それぞれの特徴や性質を押さえ、建物に適したスパンドレルを選択しましょう。
アルミスパンドレル
1種類目はアルミニウム製のスパンドレルです。スパンドレルの中でも最も主流とされており、軽量でありながら耐久性も高いという特徴があります。その耐久力は屋外における厳しい条件下でも発揮されるため、ビルの外装として使用されるケースも多く、特に長期にわたって美観を維持したいという場合には、アルミニウム製のスパンドレルが好まれる傾向があります。
鋼板スパンドレル
2種類目は鋼板スパンドレルです。鋼板スパンドレルはその中でカラー鋼板、ガルバリウム鋼板、フッ素系の3種類に分けられます。それぞれに特徴があり、例えばガルバリウム鋼板は3種類の中で特に耐久性に優れています。耐候性や耐熱性が優れているだけでなく、塩害に対しても耐性をもっているため、設置予定の建物が厳しい気候にあってもオススメできるスパンドレルです。
耐久性に優れたガルバリウム鋼板ですが、一方でコストが高くなってしまうというデメリットがあり、その面ではカラー鋼板に軍配が上がります。ただ、カラー鋼板はサビや腐食が生じやすいという点も覚えておきましょう。そのため、予算や建物周辺の環境と相談しながら、どれを採用するのか考える必要があります。
耐久性に優れたガルバリウム鋼板ですが、一方でコストが高くなってしまうというデメリットがあり、その面ではカラー鋼板に軍配が上がります。ただ、カラー鋼板はサビや腐食が生じやすいという点も覚えておきましょう。そのため、予算や建物周辺の環境と相談しながら、どれを採用するのか考える必要があります。
木目スパンドレル
3種類目が木目スパンドレルです。「木目」という言葉がついているものの、こちらは木製のスパンドレルというわけではありません。素材自体はアルミニウムを使用しており、アルミスパンドレルと同様です。
アルミスパンドレルと違う点は、塩化ビニールの化粧シートにより木目調に加工されているという点です。化粧シートによりリアルな質感が再現されているため、木特有の温かみのあるデザインとアルミニウムの耐久性を両立したいケースにオススメです。ただし、木目スパンドレルの中には、外壁材として使用できるものと使用できないものが存在するため、それを踏まえて慎重に検討しなければなりません。
アルミスパンドレルと違う点は、塩化ビニールの化粧シートにより木目調に加工されているという点です。化粧シートによりリアルな質感が再現されているため、木特有の温かみのあるデザインとアルミニウムの耐久性を両立したいケースにオススメです。ただし、木目スパンドレルの中には、外壁材として使用できるものと使用できないものが存在するため、それを踏まえて慎重に検討しなければなりません。
スパンドレルの設置の仕方
スパンドレルを設置する際は、防火性能がしっかりと発揮されるよう注意しなければなりません。外壁として設置する際や、開口部を設けたい場合には覚えておきたいポイントがあります。
外壁として設置する
1つ目は外壁として設置する方法です。この考え方に基づいてスパンドレルを設置する時は、防火区画の壁や床が接する外壁部分に、幅90cm以上の外壁として設置します。この外壁は準耐火構造であることが求められます。このように設置することにより、火が隣の部屋へ回り込んでしまうのを防止します。
ちなみに準耐火構造とは端的に言えば「火災による延焼を抑制するために必要な構造」のことです。主要構造部を炎に晒してどれくらいの時間耐えることが可能なのかを計測し、要件を満たしたものが準耐火構造として認められます。
ちなみに準耐火構造とは端的に言えば「火災による延焼を抑制するために必要な構造」のことです。主要構造部を炎に晒してどれくらいの時間耐えることが可能なのかを計測し、要件を満たしたものが準耐火構造として認められます。
外壁から突出する庇、床、袖壁を設置する
2つ目は外壁から突き出る遮蔽物として設置する方法です。外壁から50cm以上突き出るような形で、準耐火構造の庇や床、袖壁などを設置し、延焼を防ぎます。例えばバルコニーのあるマンションであれば、そのバルコニーがスパンドレルとして、上下階への延焼を防ぐ役割を担っています。
スパンドレルの開口には防火設備の設置が必要
スパンドレルは基本的に、開口せず使用するものです。しかし、室内環境や建物のデザイン上の理由により、開口部を広くとりたい場合には、開口部を防火設備にすることが求められます。防火設備とは、開口部からの延焼を防ぐために設けられる網入りガラスなどの設備のことで、20分以上の耐火・遮炎性能が基準となっています。
スパンドレルは火災が起きてしまった時、被害を小さくするために必要な構造物です。しかしながらその用途の広さ、施工性の高さから外装材としての側面も持っており、メーカーからもデザイン性の高いものが多く発売されています。もし新築や外壁リフォームをお考えであれば、機能と美観の観点から建物に合ったスパンドレルをぜひ採用してください。
スパンドレルは火災が起きてしまった時、被害を小さくするために必要な構造物です。しかしながらその用途の広さ、施工性の高さから外装材としての側面も持っており、メーカーからもデザイン性の高いものが多く発売されています。もし新築や外壁リフォームをお考えであれば、機能と美観の観点から建物に合ったスパンドレルをぜひ採用してください。
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