JOURNAL CRAFTSMAN SHIP | HIDEYUKI MATSUDA ~後編~

ORGAN CRAFTでは、住宅やオフィス、店舗のリノベーションやプロデュースだけではなく、家具や店舗什器の開発、イベント会場でのエリアディレクション設計など様々なものを作ることを主軸に展開している工務店です。 ORGAN CRAFTのweb内で連載しているJOURNALという色々な業種の作り手さんと対談する記事を紹介していきます。

2022.01.07

ORGAN CRAFTが、Web内にて連載しているJOURNALでは、
"CRAFTSMANSHIP"をテーマに、様々な業界で活躍する作り手さんと
ORGAN CRAFTのディレクターである渡會が対談するコンテンツを展開しています。

これまでフラワーコーディネーター、アートディレクター、醤油の醸造家、落語家など多岐に及ぶ方と対談をさせていただきました。

今回は鉄を扱うアーティスト、松田英之さんの後編です。
大阪市役所にも飾られた大阪万博2025誘致PRオブジェを筆頭に様々な展示物を手掛けている松田さんのCRAFTSMANSHIPとは?
是非ご覧いただければと思います。

ストリート生まれだからこそ 自分に嘘をつかずにまっすぐに

前編では、松田さんの溶接の世界に戻ったきっかけや、活動の始まりについてお聞きしました。後編では、鉄の魅力やクラフトマンシップについてお聞きしました。



渡會:ズバリ、鉄という素材の良さを教えてください。

松田:硬くて独特の匂いがしますよね。要は無骨なんです。僕らはロボット世代なんで、どうしても無骨なものに惹かれるんですよ。その質感を出すために、GRAND COBRAの作品は出来るだけ素地のまんま。色を塗ることはあまりしません。グラインダーを施すことで表面に波が出て、そこに光が当たると奥行きが生まれるんです。さらにサビが出てくるのも鉄の醍醐味じゃないですかね。経年変化でより無骨になってくれる素材って、他にないような気がします。

渡會:そんな鉄を使うGRAND COBRAならではの強みはありますか?

松田:フリーハンドで鉄を扱うことです。基本的にはすべて自分自身で鉄をサンダーでカットして素材を作ります。良いも悪いもあまり干渉されたくないのが理由ですけど、一人で汗水流して完成させたものって思い入れがあるじゃないですか。3Dプリンターでデータ化して、それに向かって効率的に作り上げる手法もありますが、やっぱり自分自身は手仕事に対する憧れを持ち続けていますね。前にも言いましたが、僕はちゃんとした学校生活を経ているわけではないので、先人が昔ながらの製法で行うフリーハンドにこだわっています。多少は遠回りしているのかもしれませんが、コンピューターに頼らないのがGRAND COBRAならではじゃないでしょうか。

エキシビションを通してもっと世に広めていく

渡會:これから作りたいものってありますか?

松田:めちゃくちゃありますよ。1年くらい構想している大きなエキシビションですね。まだ半分くらいしか完成していなくて、2018年中には何とかカタチにしたいなと。ローポリのスカルプチャー(少ないポリゴン数で形成された3Dの造形物)で何とか作品にしたいなと思っています。まだまだカタチに出来ていないので、気になる方はあまりアップ出来ていない鳴かず飛ばずのインスタをチェックしてください(笑)。


渡會:NOTEWORKSさんで企画しているエキシビションも楽しみです。

松田:これですよね(床に並べられたサンプルを眺めて)。「スモークワールド」というネーミングで、有名なテーマパークにあるアトラクション「イッツ・ア・スモールワールド」をパロッた作品なんです。中にインセンを立てて煙突から煙がモクモクと出るオブジェなんですが、結構手の込んだデザインになっています。パーツを貼り合わせて家を作り、色を塗ってサビさせ、さらにサビを与えます。そこからステンシルで柄を入れると、かなりの時間が必要になるんですよ。

自分の進んだ道をまっすぐに突き進んでいきたい

渡會:松田さんの人柄が出た温もりのある作品だと思います。最後にGRAND COBRAにとってのクラフトマンシップとは?

松田:江戸時代中期の絵師、曾我蕭白の「画を望めば我に乞うべし、絵図を求めんとならば円山主水(円山応挙)よかるべし」という名言が自分の信条でもありますね。曾我蕭白はボストン美術館が作品を数多く所有するほどの世界的な絵師ですが、その当時はまったく見向きもされない存在でした。同時代を生きた円山応挙を絵図(説明図)といって認めておらず、自分の作品にプライドを持っていたんです。インテリじゃなくてストリートから生まれたであろう曾我蕭白の生き方に自分がリンクしたというか。

渡會:このセリフは自分の作品に対して絶対的な自信があるという表れですね?

松田:本当にその通りです。めちゃくちゃカッコええなと。そういう感覚で物作りに取り組んでいきたいと思っています。売れてる売れてへんは関係なく、腐り続けずに一つの作品に対する熱量を注ぎ込むスタイルに感銘を受けましたね。例え作った作品がボツになっても、その仕事に掛けた力はウソじゃないわけですから。ストリート生まれのアーティストだからこそ、自分の信じた道をまっすぐに突き進んで行きたいですね。
TEXT:Shohei Kuroda
Photo:Takeshi Uematsu(VELBED.)

WRITTEN BY

ORGAN CRAFT

Japan

内装を創ることは、そこに住む人のドラマを感じること。そして創造すること。
職人の手によって 生まれ変わるその部屋は、新たなストーリーを作り出す。
リノベーションも時代と共に、多種多様になり、時を経て老朽化していく部屋を原状回復が
ゴールではなく、魅力的に「磨き上げること」で送り出したい。
一部屋、一部屋、丁寧に磨きあげる。また、そこに住む、新たな物語を想像する。
魅力的な部屋は時を超え、そこに住む人と共に輝ける時間を再生する。
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