オフィス退去時の原状回復はどこまで? 費用相場や工事の流れも解説
オフィスや事務所を退去する際、物件を入居時の状態に戻して返却する「原状回復」が必要ですが、何をどこまで行う必要があるのでしょうか。本記事では、原状回復のポイントや大まかな流れ、費用相場などをまとめました。これからオフィスの退去や移転などを検討している人は、ぜひ参考にしてください。
公開日 2021.11.25
更新日 2022.10.19
オフィスを退去する時、今借りている賃貸を本来あるべき姿に戻す「原状回復」が必要です。原状回復はオフィスの規模や業種などに関わらず、必ず行わなければならないため、あらかじめ費用相場やスケジュールなどの情報を集めておくとよいでしょう。本記事では、原状回復の基本的な知識に触れながら、費用や工期、大まかな流れなどを紹介します。これからオフィスの退去や移転などを検討している人は、ぜひ参考にしてください。
そもそも原状回復とは?
多くの物件は業者に内装を修繕してもらい、入居時と同じ状態に戻してから貸主に返却しなければなりません。この義務を「原状回復」といいます。しかし、すべての物件が同じ内容で原状回復を行うわけでなく、物件の種類によって「何をどこまで回復するのか」という程度や、「貸主負担で回復するものの範囲」なども異なります。あらかじめ借りている物件のルールを確認しておくことが大切です。
2020年4月以降は改正民法で義務化
原状回復は、2020年4月に施行された改正民法(621条)により義務化されました。同法は、国土交通省による「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を条文化したものです。
国土交通省は、通常消耗や経年劣化などには回復の義務が発生せず、「借主の故意や過失、通常使用の範囲を超える消耗などに対し原状回復を行う必要がある」と定めています。そのため、通常使用の範囲内であれば、経年によって変色したクロスや寿命が過ぎた設備などは、借主の負担で原状回復をする必要はないのです。
しかし、注意すべきなのは、この原状回復の条文は任意規定と考えられていることです。任意規定とは、「必要に応じて当事者の意思で変更が認められている」規定です。そのため、原状回復に関して物件独自の特約が設けられている場合、そちらを優先しなければなりません。契約時の賃貸契約書に原状回復の特約がある場合は、民法ではなく契約書の内容が適用されるので注意しましょう。
また本条文は、まだ施行されたばかりの新しい取り決めです。2020年4月1日以前に取り交わされた賃貸契約では改正前の民法が適用されるので、自社オフィスが「いつ契約した物件か」についてもよく確認しておいてください。
国土交通省は、通常消耗や経年劣化などには回復の義務が発生せず、「借主の故意や過失、通常使用の範囲を超える消耗などに対し原状回復を行う必要がある」と定めています。そのため、通常使用の範囲内であれば、経年によって変色したクロスや寿命が過ぎた設備などは、借主の負担で原状回復をする必要はないのです。
しかし、注意すべきなのは、この原状回復の条文は任意規定と考えられていることです。任意規定とは、「必要に応じて当事者の意思で変更が認められている」規定です。そのため、原状回復に関して物件独自の特約が設けられている場合、そちらを優先しなければなりません。契約時の賃貸契約書に原状回復の特約がある場合は、民法ではなく契約書の内容が適用されるので注意しましょう。
また本条文は、まだ施行されたばかりの新しい取り決めです。2020年4月1日以前に取り交わされた賃貸契約では改正前の民法が適用されるので、自社オフィスが「いつ契約した物件か」についてもよく確認しておいてください。
通常の賃貸住宅とオフィスの原状回復に違いはある?
一般住宅とオフィス・事務所・商業施設の物件では、原状回復にどのような違いがあるのでしょうか。一般住宅の場合、改正民法にあるように、生活していくうえでやむを得ない消耗や経年劣化などは、自分で補修する必要がありません。しかし、タバコのヤニや黄ばみ、ペットの臭い、誤ってつけてしまった傷など、借主の過失や通常の範囲を超える損傷などは、自分で原状回復をする必要があります。
一方、オフィス・事務所・商業施設の物件などは、賃貸契約書に特約を設け、独自のルールを定めているケースがほとんどです。特約の内容は物件によって異なるものの、「一般住宅では補修をする必要がない通常消耗や経年劣化」についても、原状回復を行わなければならない場合もあります。基本的には、一般住宅と比較して、原状回復の範囲が広いので注意しましょう。
一方、オフィス・事務所・商業施設の物件などは、賃貸契約書に特約を設け、独自のルールを定めているケースがほとんどです。特約の内容は物件によって異なるものの、「一般住宅では補修をする必要がない通常消耗や経年劣化」についても、原状回復を行わなければならない場合もあります。基本的には、一般住宅と比較して、原状回復の範囲が広いので注意しましょう。
オフィス解約時の原状回復義務の範囲とは
契約内容によって原状回復の範囲が異なるオフィス用物件ですが、具体的に何をどこまで補修する必要があるのでしょうか。一般的に通常の賃貸住宅の場合は「通常の使用を超える範囲」の損傷があった場合に原状回復義務が適用されますが、オフィス用の物件は、一般住宅よりも多くの人が利用し、業種によっては消耗の程度が大きく、通常消耗や経年劣化のレベルを予想するのは容易ではないため、100%借主の負担で原状回復が課される場合があります。什器の撤去やクロス・カーペットなどの張り替え、配線撤去などを行い、内装やレイアウトなどはすべて借りた時の状態にしての返却が必要です。
賃貸オフィスの原状回復範囲の例
賃貸オフィスの原状回復範囲の例には、以下が挙げられます。
・オフィスのパーテーションの撤去
・壁クロス、壁紙の張り替え
・天井ボードの張り替え
・窓周辺の回復、クリーニング
・配線や照明の撤去、回復、管球の交換、床下配線の撤去
・配電盤の変更の回復
・看板の撤去
完全に元通りに戻さなければ原状回復にあたらないため、まだ寿命が来ていない電球や綺麗な壁クロスなども、取り換える必要があります。
オフィスの机や椅子などは引っ越し業者に依頼すれば簡単に完了しますが、カーペットや壁クロスの張り替え・配線などの撤去などは専門業者に、オフィス内の清掃は清掃業者に依頼する必要があるでしょう。通常の賃貸住宅に比べどうしても負担は大きくなるため、退去時の原状回復の範囲は、充分に把握しておくことが大切です。
・オフィスのパーテーションの撤去
・壁クロス、壁紙の張り替え
・天井ボードの張り替え
・窓周辺の回復、クリーニング
・配線や照明の撤去、回復、管球の交換、床下配線の撤去
・配電盤の変更の回復
・看板の撤去
完全に元通りに戻さなければ原状回復にあたらないため、まだ寿命が来ていない電球や綺麗な壁クロスなども、取り換える必要があります。
オフィスの机や椅子などは引っ越し業者に依頼すれば簡単に完了しますが、カーペットや壁クロスの張り替え・配線などの撤去などは専門業者に、オフィス内の清掃は清掃業者に依頼する必要があるでしょう。通常の賃貸住宅に比べどうしても負担は大きくなるため、退去時の原状回復の範囲は、充分に把握しておくことが大切です。
オフィスの原状回復工事にかかる費用相場
オフィスの原状回復工事にかかる費用は、物件の状態や規模などによって幅があるものの、坪単価あたり2万~10万円ほどが一般的です。100坪以上の大規模なオフィスであれば、坪単価あたり5万円以上を目安とするとよいでしょう。
一方、築年数の古い物件や凝った内装のオフィス、水回りを新たに造作した場合などは、相場よりも費用が高くなる可能性があります。地域や季節などによっても費用が変わりやすいので、あくまで予算を組む際の目安程度に捉えておきましょう。
一方、築年数の古い物件や凝った内装のオフィス、水回りを新たに造作した場合などは、相場よりも費用が高くなる可能性があります。地域や季節などによっても費用が変わりやすいので、あくまで予算を組む際の目安程度に捉えておきましょう。
原状回復の工期目安
原状回復の工期は、2週間〜1ヶ月ほどが一般的です。100坪以上の大規模なオフィスについては、だいたい1ヶ月前後を目安とするとよいでしょう。注意すべきなのは、必ず賃貸契約の期間内に原状回復工事を終えなければならないことです。解約日の1ヶ月以上前には引っ越しを済ませ、万が一工期が延びた場合なども想定し、契約期間に余裕を持って工事を依頼しましょう。
原状回復工事の流れ・スケジュール
ここでは、原状回復工事の流れを項目ごとに解説します。注意すべきことや重要なポイントなども併せて紹介しますので、オフィス移転や退去のスケジュールを決める参考にしてください。
原状回復範囲・約款の確認
オフィス・事務所・商業施設などの原状回復で重要視されるのは、契約書の内容や契約時の取り決めです。オフィスの退去が決まったら、まずはそれらの内容を確認し、「何をどれくらい補修する必要があるのか」を把握しましょう。
多くの場合は、「原状回復の費用はすべて借主が負担すること」「通常消耗や経年劣化などに関わらず入居時の状態まで回復させること」などが特約によって詳しく定められています。
しかし、小規模のオフィスなどでは、稀にそのような特約が設けられていなかったり、内容が曖昧だったりするケースも見られます。そのような場合は、改正民法の内容に沿って原状回復を行うのが一般的ですが、まずは貸主や管理会社に内容を確認するとよいでしょう。原状回復の範囲や費用などをめぐりトラブルが発生することも少なくないため、あらかじめそれらを明確にしておくことが大切です。
多くの場合は、「原状回復の費用はすべて借主が負担すること」「通常消耗や経年劣化などに関わらず入居時の状態まで回復させること」などが特約によって詳しく定められています。
しかし、小規模のオフィスなどでは、稀にそのような特約が設けられていなかったり、内容が曖昧だったりするケースも見られます。そのような場合は、改正民法の内容に沿って原状回復を行うのが一般的ですが、まずは貸主や管理会社に内容を確認するとよいでしょう。原状回復の範囲や費用などをめぐりトラブルが発生することも少なくないため、あらかじめそれらを明確にしておくことが大切です。
貸主側への解約連絡・施工業者の手配
原状回復の範囲を確認したら、貸主側への退去通告や施工業者の手配などを進めていきます。解約予告期間はテナントごとに異なり、小規模なオフィスなら3ヶ月ほど、大規模なオフィスなら6ヶ月ほどが一般的です。期日を過ぎると退去できないこともあるので、契約書の内容をよく確認し、適切な方法で期間に余裕を持って解約通知を提出しましょう。
また、オフィスの移転を行う場合は、物件の選定や引っ越し作業、新オフィスの内装工事など、さまざまな作業が必要です。オフィスの規模が大きいと工期も長くなるため、スケジュールに余裕を持って半年以上前から解約告知を行っておくとよいでしょう。
また、オフィスの移転を行う場合は、物件の選定や引っ越し作業、新オフィスの内装工事など、さまざまな作業が必要です。オフィスの規模が大きいと工期も長くなるため、スケジュールに余裕を持って半年以上前から解約告知を行っておくとよいでしょう。
原状回復工事の現地調査・見積もり
工事を依頼する業者は、必ずしも借主が自分で選ぶわけではありません。契約書に指定業者が記載されている場合は、その業者に依頼する必要があります。指定外の業者に依頼するとトラブルに発展する可能性もあるので、注意しましょう。
業者に問い合わせをしたら、現地調査に来てもらい、見積もりを依頼します。指定業者が決まっていない場合は、複数の業者に相見積もりを依頼し、金額や実績、担当者の雰囲気、打ち合わせの様子などを考慮しながら適切な業者を選ぶとよいでしょう。最初から1社に絞ると費用の相場を把握しづらいため、2〜3社ほどを目安に複数の業者を比較検討するのがオススメです。
業者に問い合わせをしたら、現地調査に来てもらい、見積もりを依頼します。指定業者が決まっていない場合は、複数の業者に相見積もりを依頼し、金額や実績、担当者の雰囲気、打ち合わせの様子などを考慮しながら適切な業者を選ぶとよいでしょう。最初から1社に絞ると費用の相場を把握しづらいため、2〜3社ほどを目安に複数の業者を比較検討するのがオススメです。
工事のスケジュール調整~着工~引き渡し
見積もりが完成し、原状回復工事の内容が決定したら、スケジュールの調整を行います。着工日や完成予定日などを明確にし、きちんと物件の契約期間中に作業が完了することを確認しましょう。
工事期間中は、スケジュール通りに作業が進んでいるかを定期的に報告してもらい、現場を業者に任せきりにしないことが大切です。工事が完了したら、「契約内容に沿った工事が行われているか」「すみずみまで補修が行われているか」などを貸主や管理会社に確認してもらい、問題がなければ引き渡しを行います。
オフィスの移転を行う場合は、退去の手続きと同時に、新しいオフィスの準備を進める必要があります。「原状回復工事の着工時に、新しいオフィスで仕事を継続可能となっている」のが理想的でしょう。追加工事の発生や工期のずれなども視野に入れ、余裕を持ってスケジュールを立てることが大切です。
工事期間中は、スケジュール通りに作業が進んでいるかを定期的に報告してもらい、現場を業者に任せきりにしないことが大切です。工事が完了したら、「契約内容に沿った工事が行われているか」「すみずみまで補修が行われているか」などを貸主や管理会社に確認してもらい、問題がなければ引き渡しを行います。
オフィスの移転を行う場合は、退去の手続きと同時に、新しいオフィスの準備を進める必要があります。「原状回復工事の着工時に、新しいオフィスで仕事を継続可能となっている」のが理想的でしょう。追加工事の発生や工期のずれなども視野に入れ、余裕を持ってスケジュールを立てることが大切です。
原状回復時の注意点は?
このように事業用オフィスの原状回復には、各業者への依頼などさまざまな手続きが必要となります。具体的にはどのような点に注意して進めればよいのでしょうか。
原状回復範囲を明らかにする
まず、原状回復範囲を明確にしておく必要があります。
原状回復の範囲は主に「経年劣化」「通常消耗」「特別消耗」の3種類に分けられ、オフィスの原状回復の場合「特別消耗」の部分の回復が義務付けられていることがほとんどです。
「経年劣化」は壁などが日焼けによって変質したり、設備が長年の使用により劣化したり損傷したりすることを指します。
「通常消耗」は故意ではなく日常的な使用によってついた汚れ・損傷を指します。オフィスの場合、人の出入りによる床のすり減りや、機械や机を設置したことによるカーペットや床の損傷などが挙げられます。
「特別消耗」は、借主が故意につけた汚れ・損傷を指します。喫煙などで発生した壁の変色などはここに該当します。
経年劣化や通常消耗はオフィスを使用していれば避けられない現象のため、この部分の原状回復は義務付けられていないことも少なくありません。
しかし、契約内容によって原状回復範囲は異なるため、事前にオーナーや管理会社に確認しておきましょう。
原状回復の範囲は主に「経年劣化」「通常消耗」「特別消耗」の3種類に分けられ、オフィスの原状回復の場合「特別消耗」の部分の回復が義務付けられていることがほとんどです。
「経年劣化」は壁などが日焼けによって変質したり、設備が長年の使用により劣化したり損傷したりすることを指します。
「通常消耗」は故意ではなく日常的な使用によってついた汚れ・損傷を指します。オフィスの場合、人の出入りによる床のすり減りや、機械や机を設置したことによるカーペットや床の損傷などが挙げられます。
「特別消耗」は、借主が故意につけた汚れ・損傷を指します。喫煙などで発生した壁の変色などはここに該当します。
経年劣化や通常消耗はオフィスを使用していれば避けられない現象のため、この部分の原状回復は義務付けられていないことも少なくありません。
しかし、契約内容によって原状回復範囲は異なるため、事前にオーナーや管理会社に確認しておきましょう。
見積価格が適正かどうか確認する
また、原状回復の見積価格が適正かどうかもチェックしておきましょう。
原状回復は管理会社の指定した業者が担当することが一般的ですが、見積もりの際原状回復義務以外の工事が含まれてしまうケースもあります。
パッと見積もりの内訳を見ただけではどの部分が原状回復の範囲なのかが分かりにくいため、一般的な相場より価格が高いと感じた場合は、見積書の内訳をひとつひとつくまなくチェックしてください。また、ビルの共用部分が見積もりに含まれてしまうケースもあります。この場合は、特約に記載がなければ、原状回復の必要はありませんので、契約書や管理会社との打ち合わせ時にしっかり確認しておきましょう。
原状回復は管理会社の指定した業者が担当することが一般的ですが、見積もりの際原状回復義務以外の工事が含まれてしまうケースもあります。
パッと見積もりの内訳を見ただけではどの部分が原状回復の範囲なのかが分かりにくいため、一般的な相場より価格が高いと感じた場合は、見積書の内訳をひとつひとつくまなくチェックしてください。また、ビルの共用部分が見積もりに含まれてしまうケースもあります。この場合は、特約に記載がなければ、原状回復の必要はありませんので、契約書や管理会社との打ち合わせ時にしっかり確認しておきましょう。
原状回復の工事ができる曜日や時間を確認する
原状回復の工事は、オフィスの立地や周囲の環境によって騒音などの問題が発生するため、曜日や時間帯が限られます。管理会社やオーナーとすり合わせて、いつどの時間に原状回復の工事をするか、必ず確認してください。
原状回復は、賃貸物件を退去する際に必ず行わなければならない義務です。多くの物件は、内装を入居時と同じ状態に戻してから、貸主に返却しなければなりません。一般住宅であれば、通常消耗や経年劣化は貸主の負担で修復してもらえるものの、オフィス・事務所・商業施設などの多くは、100%借主の負担で原状回復する必要があります。詳しい内容は物件によって異なるため、賃貸借契約書をよく確認してから実行に移しましょう。
オフィスリフォームでも実績豊富な「カシワバラ・コーポレーション」なら、移転に伴うオフィスリフォームやレイアウントなどについて、詳細にご相談いただけます。ご連絡お待ちしております。
原状回復は、賃貸物件を退去する際に必ず行わなければならない義務です。多くの物件は、内装を入居時と同じ状態に戻してから、貸主に返却しなければなりません。一般住宅であれば、通常消耗や経年劣化は貸主の負担で修復してもらえるものの、オフィス・事務所・商業施設などの多くは、100%借主の負担で原状回復する必要があります。詳しい内容は物件によって異なるため、賃貸借契約書をよく確認してから実行に移しましょう。
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