給排水設備を総まとめ!各種用語から工事のタイミングまで解説

この記事では、給排水設備の点検・清掃・リノベーションについて詳しく解説します。「給排水設備とはどのような設備を指すのか」などの基本知識に触れながら、給排水設備工事や行うべきタイミング、法定点検などについて解説します。給排水設備の老朽化などでお悩みの際は、ぜひご一読ください。

公開日 2022.04.17

更新日 2023.04.15

給排水設備を総まとめ!各種用語から工事のタイミングまで解説

建物の築年数が経過すると、建材とともに給排水設備も老朽化していきます。古くなった設備を買い替えたり、現在の暮らしに合った間取りにリノベーションを行うのと同じように、給排水設備も一定期間ごとにメンテナンスが必要です。この記事では、「給排水設備とは何か」「主要な給排水設備はどのようなものか」といった基礎知識に触れながら、法律で定められた給排水設備の点検、給排水設備工事についてなど、給排水設備に関する知識を網羅的に解説します。

給排水設備とは?

給排水設備を総まとめ!各種用語から工事のタイミングまで解説
給排水設備とは、建物に水を供給する「給水設備」と、汚れた水を取り除く「排水設備」のことです。トイレ・洗面所・キッチン・浴室といった水回りに必要な設備であり、住宅以外にもオフィスや店舗など水を扱う建物には必ず設置されています。
水は人が日々活動する際に必要不可欠なものです。突然水が出なくなったり流れなくなったりすると、生活や仕事などに大きな影響を与えます。大切な水を問題なく使い続けられるように、給排水設備を適切に管理・メンテナンスすることがとても重要です。
なお、主な給排水設備としては以下のものが挙げられます。

【給水設備】
・給水管
・貯水槽(受水槽)
・給水ポンプ
・給湯設備

【排水設備】
・排水管
・排水槽
・排水ポンプ
・浄化槽

給排水設備はなぜ重要なのか?

建物にきれいな水が供給され、使用済みの汚水がスムーズに排出されるために、給排水設備は欠かせない存在です。給排水設備の重要性について、より詳しく解説します。

私たちの生活と密接に関わる水に関する設備

水は私たちの生活と密接に関わりを持ちます。その水を円滑に回すために欠かせないのが給排水設備です。給水設備が壊れて水が供給されなくなってしまうと、料理ができなかったり、水が飲めない、またお湯が出ないのでお風呂にも入れないというような生活への影響が出てしまいます。

水が出たとしても、水を供給する配管内が適切に管理されていないと、水にサビなどの異物が含まる可能性があります。サビが含まれた水は、少量であれば体調への影響はあまり大きくありませんが、年齢や体質により受ける影響は異なるため注意が必要です。

排水設備が壊れてしまうと、汚れた水を下水道に流せず、建物内の衛生環境が悪化する恐れがあります。また、給排水設備のトラブルは建物全体に影響を及ぼすことがあるので、大きな問題が発生するのを防ぐためにも、定期的に点検しメンテナンスすることがとても重要です。

点検とメンテナンスのための法的規制について

給排水設備については、定期的な点検や管理を行い、行政に報告することが法律で義務付けられています。この制度は、法定点検と呼ばれます。法定点検にはいくつか種類がありますが、ここでは建築基準法とビル管理法で定められたものについて確認しましょう。

建築基準法第12条では、専門的な知識を持つ有資格者の点検を受け特定行政庁に報告することが義務付けられています。対象となる建物の用途や規模が指定されていて、デパートや映画館やオフィスビルやマンションなどが対象です。報告は、建築基準法施行規則第6条第1項に定められた一部の項目を除き、基本的に1年ごとに行う必要があります。

ビル管理法の正式名称は、「建築物における衛生的環境の確保に関する法律」です。デパートや映画館やオフィスビルなどの不特定多数が利用する規模の大きな建物がビル管理法の対象で、戸建て住宅やマンションなどは対象外です。
厚生労働省が定める検査や清掃を行い、水質や環境を適切な状態に保つことが求められます。検査の頻度は、検査項目により異なります。7日以内に1回という頻繁なものから、3年以内ごとに1回というものもあり、適切な検査スケジュールの管理が必要です。

主要な給水設備

ここでは、主な給水設備について具体的に紹介します。「機能や素材・設置される場所・耐用年数の目安・発生しうるトラブル」など、給水設備のメンテナンスを検討するうえで知っておきたい情報をまとめました。

上水道を引き込む給水管

給排水設備を総まとめ!各種用語から工事のタイミングまで解説
給水管とは、道路の下に流れている水道本管から、建物内に飲用水を引き上げる配管のことです。蛇口から出てくる水はこの給水管を通っており、水回りや給湯器などに給水管をつなげることで水を供給します。給水管では浄化や殺菌処理が行われた水を扱うため、ステンレスや硬質塩化ビニル、樹脂といった「耐久性が高く腐食しにくい素材」が使用されています。

給水管の耐用年数は素材によって異なり、目安は20〜30年ほどです。しかし、築年数40年を超える住宅など、古い建物に使用されている「水道用亜鉛メッキ鋼管」という給水管は、耐用年数15年ほどと相場よりも耐久性が低いため注意しましょう。漏水・サビなどのトラブルに加えて、鉛の溶出も発生しやすく、新たに設置することは禁止されている素材です。もし現在も使用している住宅は一度メンテナンスや交換を依頼するとよいでしょう。

水をストックする貯水槽(受水槽)

貯水槽とは、水道本管から引き上げた水を一時的にストックしておく場所です。多くの水を供給する集合住宅やアパート・マンション・ビルなどに設置されることが多く、1階の陸上部分に設置される貯水槽を「受水槽」、屋上に設置されている貯水槽を「高置水槽」と呼びます。貯水槽と受水槽は混同しやすいですが、貯水槽は「水を溜めておく設備全般」を指すのに対し、受水槽は「建物に設置される貯水設備」を指します。

貯水槽の耐用年数は15〜20年ほどで、基本的には年1回以上の清掃義務があります。貯水槽は強化プラスチックやステンレスなどでできており、メンテナンスを怠ると菌やサビなどが発生する恐れもあるからです。また、古い貯水槽に亀裂が入り水漏れへつながることも多いため、耐用年数が過ぎたものはすぐに交換し、定期的な点検・清掃を行うことが望ましいでしょう。

水を行き渡らせる給水ポンプ

給水ポンプとは、水が建物全体に行き渡るように圧力をかける装置のことです。給水ポンプは建物や用途などによって、「揚水ポンプ」「加圧ポンプ」「増圧ポンプ」の3種類に分けられます。

揚水ポンプは、受水槽から屋上の高置水槽まで水を汲み上げる装置です。ビルやマンションなどの高層の建物に高置水槽とセットで設置されており、給水する際は重力で上階から下階に水を行き渡らせます。

加圧ポンプは、受水槽からそれぞれの部屋に給水する装置です。主に高置水槽のない低層のアパートや、小規模のマンションなどに使われています。

増圧ポンプは、受水槽や高置水槽のない建物に設置される装置です。水道本管から直接水に圧力をかけることで、それぞれの部屋に給水します。貯水槽を設置する必要がないため、メンテナンスコストを削減できるメリットがあります。

給水ポンプの耐用年数は、使用頻度や種類などにもよるものの、20年ほどが目安となります。貯水槽と同じく年1回は点検を行い、結果を保健所に提出する必要があります。

お湯を作り届ける給湯設備

給湯設備とは、お湯を供給するための設備のことで、「給湯専用ボイラー」「湯沸かし器」「循環ポンプ」などの総称です。玄関横やベランダ、浴室の近くの外壁などに設置されることが多く、お湯を使う場所ごとに複数の給湯設備を設置する「局所方式」と、ひとつの給湯設備から配管でそれぞれの場所に分配する「中央方式」の2種類に分けられます。

給湯設備の耐用年数は7〜10年ほどで、故障時には「お湯が出なくなる・ぬるくなる、水圧が弱くなる」といったトラブルが見受けられます。また、ボイラーは着火時に設備に負荷がかかりやすいため、こまめに電源を点けたり消したりしていると、相場よりも寿命が短くなるので注意しましょう。

主要な排水設備

ここでは、主な排水設備の特徴を詳しくご説明します。排水設備でよくあるトラブルや、耐用年数などを知りたい人は、ぜひ参考にしてください。

汚れた水を排出する排水管

排水管とは、日常生活で発生する汚れた水を建物の外に排出し、下水処理場へ送る配管のことです。排水管は設置される場所や排水の種類などによって次のように細かく区別されています。
野外に設置されるものを「屋外排水管」・室内に設置されるものを「屋内排水管」・トイレの排水を流す「汚水排水管」・そのほかの水回りで出た生活排水を流す「雑排水管」・雨どいから流れる雨水を下水管に流す「雨水排水管」などです。

排水管の寿命は使用頻度や水質、パイプの材質などによって異なり、台所は15年ほど、洗面所・浴室は30年ほど、トイレは35年ほどです。材質は「耐火被覆二層管」「塩ビライニング鋼管」「鋳鉄管」などがあります。耐火被覆二層管は耐久性が低く、相場よりも早く寿命が訪れることもあるので注意しましょう。また、排水管は汚れが溜まると詰まりの原因になるため、2年に1回ほどの頻度で高圧洗浄を行うのが一般的です。

自然に流せない汚水を放流する排水ポンプ・排水槽

通常、排水は重力によって自然に下水道へと流れていきますが、建物の構造や配管の向きなどによっては水圧で押し流す必要があります。そのような場合に設置されるのが、排水槽と排水ポンプです。

排水槽は流れづらい排水を一時的に貯めておくタンクのことで、排水槽に貯められた排水は排水ポンプによって下水道へと放流されます。排水層は、トイレからの排水専用の「汚水槽」と、そのほかの生活排水専用の「雑排水槽」に分けられ、どちらも地階に設置されるケースがほとんどです。

排水ポンプの耐用年数は、使用状況や稼働の頻度などにもよりますが、7~10年ほどが一般的です。吸い込み口にゴミが詰まったり、稼働頻度が多過ぎたりすると故障の原因になりやすいため、「大きなゴミや水に溶けないものは流さない」「適切な大きさの排水槽を設置する」などの対策を行うとよいでしょう。

汚水をきれいにする浄化槽

浄化槽とは、微生物の働きなどによって排水を浄化する装置のことです。下水道が整備されていなかった一昔前に多く見られた装置で、現在都心ではあまり使われておらず、地方や古い住宅などで多く使用されています。
現在使われているのは、トイレの排水や生活排水などをすべて一緒に処理する「合併処理浄化槽」という浄化槽で、住宅の裏側や脇、倉庫などに設置するケースが多いでしょう。また、排水層と混同する人も多いですが、排水層は排水を建物の外に排出するため一時的に貯めておくタンクのことで、水をきれいにする機能はありません。

浄化槽の耐用年数は20〜30年ほどで、毎年1回は定期点検を行うことが浄化槽法で定められています。浄化槽の汚れが溜まると、臭いや虫などの発生の原因となるため、定期的にメンテナンスを行うことが望ましいでしょう。

給排水設備の工事はいつやるのか?

給排水設備の工事はどのようなタイミングで行うのが適しているのでしょうか。工事の種類と併せて、給排水工事をするべきタイミングについて解説します。

工事の種類について

給排水設備は、キッチン・トイレ・洗面台・浴室などの水に関わる住宅設備機器や、給水管・排水管・排水桝・雨水桝・給湯設備などを指します。

給排水設備に関する工事は、上水道工事と下水道工事に分けられます。

上水道工事は、浄水場から送られてきたきれいな水が、蛇口をひねるだけで問題なく出るようにするための工事です。配管から建物内に水を引き込む方法は、建物の高さにより適したものが選ばれます。3階までの低層の建物であれば選ばれるのは一般的に、直接引き込む直圧直結給水方式です。建物が高くなると、直圧直結給水方式では水が届かなくなってしまうので、加圧ポンプ式や、受水槽を経由する方法などが選ばれます。

下水道工事は、トイレやキッチンや浴室などで使われ、排水溝へ流れた汚水を下水処理場へ送るために必要な工事です。別名、雨水・汚水排水管工事とも言います。
下水道工事は、さらに屋内排水管工事と屋外排水管工事に分けられます。家の中から外へ排水するための工事が屋内排水管工事で、外から下水処理場まで排水するための工事が屋外排水管工事です。

工事はどのタイミングでやるのか?

給排水工事は主に目に見えない部分に関わる工事であるため、基本的には新築時やリフォーム時に行われます。しかし、それ以外のタイミングでも給排水工事を行った方がいい場合があります。

それは、水の色がおかしい時です。蛇口から出てくる水がいつもと違うと感じた時は、配管内に問題が発生している可能性があります。例えば赤っぽい水が出る場合は、給水管の内部が酸化したり腐食したりしている恐れがあります。一方で青っぽい水が出る場合は、水に銅管から溶け出した銅が含まれている恐れがあります。この青さは目視ではっきりと確認できるほど濃ゆい色ではありませんが、水に浸けた布地に青い色が付くことや、水があたるタイルの目地が青く染まることなどが兆候として挙げられます。

そのようなトラブルがない場合でも見えない部分で給排水設備の劣化が進んでいる可能性があるので、建物の経過年数を考慮し、トラブルが起こり得る設備の工事を検討することも有効です。

給排水設備の点検・維持・リノベーション

安全な水を供給する給排水設備は、人の健康に関わる大切な項目です。給排水設備は、法律によって点検や整備が義務付けられているものもあり、しっかりと内容を確認する必要があります。ここでは、給排水設備の点検や維持、リノベーションにまつわる知識をまとめました。

法で定められた給排水設備の点検・整備

給排水設備を総まとめ!各種用語から工事のタイミングまで解説
給排水設備の点検や清掃などを義務付ける法律は、「建築基準法・水道法・建築物衛生法」などです。

建築基準法では、「特定行政庁が指定する5階建て以上・延べ面積1,000㎡以上の建物は、1年に1回は給排水設備の法定点検を行わなければならない」と義務付けられています。地域の自治体によって独自の建築物を定めている場合もあるため、ホームページなどで情報を確認するとよいでしょう。
水道法では、貯水槽のサイズによって管理の方法が決められており、10㎥以上の貯水槽は1年に1回の清掃・点検義務があります。また建築物衛生法では、排水設備の清掃を6ヶ月に1回行うことが義務付けられています。どちらも上記の頻度を最低基準として定めており、状況に応じて回数を増やし、設備を清潔に保つことが大切です。

トラブルになる前にリノベーション

給排水設備を総まとめ!各種用語から工事のタイミングまで解説
給排水設備の不具合により、水・お湯が出なくなったり、悪臭が発生したり、排水が詰まったりとさまざまなトラブルが起こり得ます。水は生活に欠かせない資源であり、不衛生な水は人体に悪影響を及ぼすリスクもあるでしょう。給排水設備の耐用年数を参照すれば、トラブルが発生する時期をある程度予想できるため、先手を打って計画的にリノベーションを行うことが望ましいでしょう。

【給水設備の耐用年数】
・給水管:20〜30年
・貯水槽:15〜20年
・給水ポンプ:20年ほど
・給湯設備:7〜10年

【排水設備の耐用年数】
・排水管:台所は15年ほど、洗面所・浴室は30年ほど、トイレは35年ほど
・排水槽・排水ポンプ:7〜10年
・浄化槽:20〜30年
給排水設備を総まとめ!各種用語から工事のタイミングまで解説

まとめ

給排水設備とは、建物に安全な水を供給し、生活で汚れた水を排出するための装置のことです。水回りを扱う建物には必ず設置されており、一定期間ごとにメンテナンスや交換などを行う必要があります。

特に、年1回の定期点検や貯水槽の清掃、排水設備の清掃などは法律上義務付けられています。該当する建物においてはそれらのルールを順守し、清潔な状態の維持に努めなくてはいけません。適切な検査や管理を行わないとトラブルが生じ、日々の生活に支障が生じたり、健康に悪影響を及ぼしたりする恐れがあります。

こうしたことを考慮すると、ライフラインである給排水設備については、実害が発生する前に余裕を持ってリノベーションしておくことが望ましいでしょう。給排水設備のメンテナンスを検討している人は、水回りのリノベーション経験が豊富な「カシワバラ・コーポレーション」に、お気軽にお問い合わせください。

DIYer(s)

WRITTEN BY

DIYer(s)

Japan

DIYer(s)編集部です。DIYのアイデアやハウツー、おすすめツールやショップ情報まで幅広くお届けします!