すごいは身近に。「みんなのダンボールマン」が伝えるダンボールDIYのあたたかみ
公開日 2015.07.13
更新日 2022.01.07
配達や引越しなどで活躍するダンボール箱。しかし、モノを運んだ後はゴミになる運命が待っている。
ダンボール箱のパッケージデザインを手掛けるデザイナーの小仙浩司さんは思っていた。この身近ながら見逃しがちなダンボール箱に注目してほしいと。そんな想いから生まれたのが、オープンソースのキャラクター「みんなのダンボールマン」だ。
たかがダンボール箱、されどダンボール箱。
コンセプトは「ダンボールはリサイクル“の前にリユース”」。どこにでもあるダンボール箱を使った独創性豊かなさまざまなアイデアやアーティストをフェイスブックで紹介している。関西を中心に手作りイベントなどで、アーティストの商品を紹介・販売するほか、「make道場」田中さとしさん考案のQEスツールなどのワークショップも行っている。
「rubodan(ルボダーン)」のステーショナリーや「Carton(カルトン)」の財布は、ダンボール箱にプリントされているマークやデザインを活かした、しゃれたアイテム揃い。独特のラフな素材感や紙質本来の強さも魅力だろう。オーストラリアのデザイングループが手掛けたクリエイティブツール「メイクドゥ」は、ダンボール箱でこんなものまで作れちゃうの!?と驚きの連続だ。
たかがダンボール箱、されどダンボール箱。クリエイティブという魔法をかけるだけで、かっこ良く生まれ変わる。「rubodan」の商品開発を承認している沖縄の有名ビールメーカー「オリオンビール」のように、ダンボール箱を通して企画提携する企業も登場してきた。
「みんなのダンボールマン」では、そんなダンボールを使って活躍するアーティストやブランドを応援している。企業とのコラボも推進できたらと考えている。そして、個々で活躍するアーティストや作品を広く一般にも知ってもらい、「ダンボールってすごい」と思ってもらうのも目的だ。DIYerのモノづくりの心をくすぐるアイデアもギュッと詰まっている。
廃ダンボールで世界を救う。ステーショナリーブランド「rubodan(ルボダーン)」
2011年のゴミゼロの日(5月30日)に、沖縄を拠点に活躍するアーティストの儀間朝龍(ぎまともたつ)さんが、ダンボールを使ったステーショナリーブランド「rubodan(ルボダーン)」を立ち上げた。コンセプトは「ダンボールを分解して新しいものを作る」。
実はダンボールから簡単に“紙”を作り出すことができる。この「SIMPLEPAPERMADE」という製法を編み出したのが儀間さん。できた紙「SIMPLEPAPER」を使って、ノートやレターセット、ポストカード、名刺などさまざまなステーショナリーを製作。ダンボールにプリントされたメーカーや商品のロゴやマークなどがおしゃれだ。
きっかけは、儀間さんが2010年にJICA沖縄の企画で訪れたサモアのワークショップ。廃ダンボールを“リサイクル”ではなく“アップサイクル”として、大きく生まれ変わるよう新しい使い方を考えて誕生したという。さらに、商品作りや商品開発を障がい者の自立・就労サポートに活用するなど、誰かのために新しい仕事を生みたいと志しも高い。
「rubodan」の商品のかっこ良さ。それは見た目だけではない。廃棄物の有効活用や就労支援という、目では見えない理念までもがかっこ良い。地元・沖縄の有名ビールメーカー「オリオンビール」が、そんな「rubodan」を高く評価して企画提携の申し出を承認した。現在、同メーカーのダンボールを使ったステーショナリー商品の製作は、沖縄県浦添市にある障がい者の自立・就労サポートセンターたどり舎で行っている。
「rubodan」を特徴づける「SIMPLEPAPERMADE」。この製法を独占せず世の中に広め、「SIMPLEPAPER」を使ったアイデアをシェアしたいという想いも「rubodan」らしさだろう。沖縄や東京だけでなく、ベトナムやタイなどアジア各国でも、子どもたちに向けてワークショップを開催。ホームページやフェイスブックなどのネットも利用して普及に努めている。
「みんなでやれば、世界のゴミが少し減ります。そして、新しいモノを生み出す事ができます。使うと分かるたくさんの世界が、きっと新しい刺激となるでしょう。もしかしたら、世界を救うアイデアが浮かびあがるかもしれない」
新しいモノの考え方のヒントになることを、「rubodan」は願っている。
ダンボールの可能性を追求。財布ブランド「Carton(カルトン)」
紙でできたダンボールは、軽量かつ丈夫で、簡単に加工ができる。使用後はリサイクルされるため環境にも優しく、入手が安価なのも特徴だ。配送やラッピングをはじめ、さまざまなシーンで活用され、現代社会の生活に欠かせないすばらしい素材である。けれども、世の中にあふれている取るに足らない素材だけに、そのことに気づいている人は少ない。
利用されたダンボールの多くは、ゴミとして廃棄され、リサイクルされてダンボールへと生まれ変わって再び利用される。リインカーネーションのようにぐるぐると、利用と破棄とリサイクルを続けているのがダンボールの一般的な宿命だろう。
しかし、一部のダンボールはその一連の流れから逸脱する。デモ隊のプラカードになったり、絵を描くキャンバスになったり、運送のかご代わりになったり……。これをダンボールの「二次利用」と考えているのが、アーティストの島津冬樹さん。二次利用されたダンボールはとてもパーソナルで物語を持っているという信念のもと、財布や名刺入れなど身近なアイテムに作り変えることによってダンボールのすばらしさをもっと知ってもらいたいと立ち上げたブランドが「Carton(カルトン)」だ。
「Carton」の財布は、ダンボール製というまずその斬新さに目が引きつけられる。ダンボール特有の質感とポップさもたまらない。デザインもカラーも豊富で、どこかで見たことのある親しみやすさにも心惹かれる。紙ながら強度のある素材に加えて、不意な雨や水にぬれても使える耐水性があり、1年~3年は使えるよう設計されている。しかも、ボロボロになった財布を自分で簡単に直せる修理キットを、非常に安価で販売をしているところも良い。
革や布の財布と比べると使い勝手は今ひとつという声もある。しかし、クラシックカーのように愛さずにはいられない個性と魅力にあふれている。
シンプルなのに無限大。クリエイティブツール「メイクドゥ」
コンピューターで検索すれば、すべての答えが見つかる。それは錯覚だ。近年では自分の頭で考えずに情報を鵜呑みにしたり、知識を得るだけで実践能力が伴わなかったり、失敗を恐れて無難に済ませたり、そんな子どもや若者が増えている。情報化やマニュアル化による弊害。それは、クリエイティブな世界にも浸透し、独創性やオリジナリティが画一化されつつあるという。
幼稚園や小学校で展示されている作品が、似たような絵や造形、色使いであることに驚き懸念を抱いたという田中さとしさんは、身近なありふれたモノを素材に使ったモノづくりを通して、創造力や発想力、実践力、コミュニケーション力など生きる力を育成するプロジェクト「make道場」を主宰。全国でワークショップを開催している。
そんな彼が注目しているのが、オーストラリアのデザイングループが開発した「メイクドゥ」。モノとモノをつなげたり組み合わせたりすることで、モノづくりを楽しめるコネクターキットだ。
キットの中には、モノをつなげるジョイント&ストッパー、ドアの蝶番のように接合部分を曲げられるヒンジ、ダンボールを切ったり穴を開けたりするノコギリ型の工具が入っている。これらを使うだけで、ダンボール箱やお菓子の空箱など身近にあるありふれた素材が、ロボットやクルマ、家、恐竜、花などさまざまモノに簡単に生まれ変わる。何度でも繰り返して使うことができるのもうれしい。
しかし、田中さんが初めてこのキットを現地から取り寄せた時、子供へのクリスマスプレゼント用の注文だと書き添えたのに、真っ黒でボロボロの使い古した印画紙に包まれた荷物が。それを見て、「海外からゴミが送られてきた!」と驚かされた。そして包みを開き、使用済みのコピー用紙の裏に書かれたメッセージを目にして、心が震えた。
――ゴミが届いたと思っただろう?今すでにあるモノを使うのが、一番環境に優しいんだ。君のアイデア次第で、価値がないと思っていた資源ごみが、とても価値あるモノに変わるんだ。このパッケージは、ほんの一例さ。
「メイクドゥ」は単なるコネクターキットではない。創造性と遊び心を通して社会に明るい変化をもたらしたいと誕生したクリエイティブツールなのだ。身の回りにある材料を見つけることから始まり、考え、作り、遊び、みんなで共有し、みんなの作品を見て刺激を受けて次のモノづくりに活かす……そんな一連の大きな願いが込められている。
作品やアイデアは「メイクドゥ」や「make道場」のホームページに多数掲載されている。子どもたちがワークショップで作った愛らしい作品から秘密基地になりそうな巨大なドーム、田中さんが作ったデザイン性に優れたカブトムシや魚などまで、見るだけでもわくわくした気持ちにさせられる。DIYersの製作魂にも火が付くに違いない。
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Japan
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