世界に1つだけの自転車を創り続けるサイクルアーティスト
戦後まもない頃のヴィンテージ・フレームをこよなく愛し、現代のパーツを掛け合わせて世界に一つだけのオリジナル自転車を作り出す、サイクルアーティストの谷信雪さん。彼がどのようにヴィンテージフレームに出会い、オリジナル自転車を作るようになったのか、また谷さんにとってのDIYへの想いを伺いました。
公開日 2016.07.02
更新日 2022.01.07
サイクルアーティストの谷さん。
谷さんの第一印象は、「とてもソフトでピュアな方」。もともと牛舎だったアトリエに入ると、入り口には自転車のパーツで作られた「Cycle Boy」の表札が掛けられており、中に入ると壁や棚一面に数々の自転車フレームやパーツ、タイヤがびっしり。自転車好きにはたまらない、ワクワクする空間が広がっていました。そしてそこには谷さんの人柄そのままに穏やかな時間が流れ、とても居心地の良い場所。
谷さんが集めてきたヴィンテージフレームの数々。
作業場の周りには現在製作中の自転車がいくつか並ぶなか、中央には完成したばかりのピカピカの一台が。この自転車、「Ryuka(リュウカ)」というフレームで作られており、60年前、輸出用に作られていた純日本産のフレーム。60年前と聞くと「耐久性は大丈夫なのか?」などと疑問に思いますが、現在よく見かけるクロモリよりも鉄の純度が高く強度も強い、現代では再現できない技術で作られているとのこと。ヴィンテージなのに、見た目にも機能的にも古臭さを全く感じさせないフレームでできた自転車は美しく、誰もを魅了します。
Ryukaフレームで作られた自転車
谷さんはどんな経緯で「Ryuka」のフレームに出会ったのでしょうか。
「今までは自分でパーツも作ったり、その他のヴィンテージフレームを使って自転車を作っていたんだけど、部品屋さんからRyukaというフレームを教えてもらい、その美しさに魅せられて。そこから組み立て試験を受けて合格し、ようやくこのフレームを手にできたんだよね。今ではRyuka以外触りたくないくらい。Ryukaの在庫がなくなったらヴィンテージの自転車作りを終わりにすると思う」。
扱いが難しく、希少なRyuka。また、ヴィンテージだからという理由だけで高値で販売する店が多いため、部品屋さんは谷さんが本当の価値を理解し、扱うに十分な技術を習得するまでRyukaの存在を教えてくれなかったそう。ついに信頼を勝ち取り、Ryukaに出会うまで、実に20年という歳月を要したとのこと。
谷さんが今まで作った自転車を見ると、どれも個性的で見たことのないような自転車ばかり。谷さんにとっての自転車作りとはどんなものなのでしょうか。なぜ、他と違う自転車が生まれるのでしょうか。
「自転車は、旅に出るぞ! 散歩に行くぞ! と決めて非日常に踏み入るための手段。だから、ワクワクを感じ、ドキドキを持続するものでないといけない。例えば、昔の車のようなキャブの音とか、五感に訴える自転車を作りたいんです。一台一台を作品として見ているから、大量生産は出来ない。生産性を上げるための自転車ではなく、それぞれの用途や、乗る人のことを考えて作っていきたいですね」。
自転車であって、自転車を超える、特別な乗り物。乗る人にとって身体の一部と感じられる自転車を作るんだ、と語る谷さん。
どこにもないたった一つだけのオリジナルを手に入れることができる。それは、多くの人が谷さんの自転車を求めて訪れる理由であり、DIYの醍醐味に通じる部分でもあります。
最後に、DIYerに向け、どうやって「世界に一つ」を作り出しているのか、ヒントになるお話を。
「最初は形から入っていきます。用途や乗り心地は考えないで、ある時寝て起きて思いついたデザインを形にしています。そして、一度作って乗って乗り心地を試します。あとは、ずっと眺めてますね。眺めて続けられる魅力があるかどうか、力があるかどうかを確認します。もし、その魅力がなかったら、もう一度解体して組み直します。感覚的に想像を超えるものを作りたいから」。そのため、自転車作りの最後の作業であるフレーム付けには、長さや種類を調節するのに丸一日かけることもあるそう。
思いつくままに作ってみる。そして納得いくまで何度も手を加える。それはすべてのDIYに通じる「楽しさ」であり、理想の一品を手にするまでの「正道」に思えました。
次に作る自転車のデッサンを描く谷さん。
Cycle Boy オリジナル:Trunk
色:黒(Blck) ※バッグは含まれません。
サイズ:全長 180cm
重量:19kg
価格:19万8000円 (郵送可能:目安1万7000円/都内)
耐荷重:80kgまで
カスタマイズ可能 (カスタマイズ例はこちら)
PROFILE
谷信雪
サイクルアーティスト・「Cycle Boy」オーナー。もともと某メーカーのプロダクトデザイナー。自転車屋を営んでいた父親が他界し、後を継ぐことに。「Ashida」「Ryuka」などのヴィンテージフレームに出会い、ヴィンテージをヴィンテージだからという理由ではなく、ただ美しさに魅了され、取り入れ始める。「乗る人にとって響きのある自転車」をテーマに、手作りだからこその魅力を大切にしている。
商品に関するお問い合わせは cycleboy.tani@gmail.com まで。
WRITTEN BY
Japan
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