離れを増築したい方必見! 離れ増築に関わる法規制の紹介と6つの事例

この記事では、「離れ」の増築に関わる法規制について解説します。併せて、デザインや機能性に優れた施工事例を6つピックアップし、費用や敷地面積、構造、特徴などをまとめました。離れ増築の事例を知りたい人や、活用方法を調べている人などは、ぜひ参考にしてください。

公開日 2022.03.23

更新日 2023.04.15

離れを増築したい方必見! 離れ増築に関わる法規制の紹介と6つの事例

近年、リモートワークの仕事場として自宅近くに賃貸を契約したり、住居とは別に趣味を楽しむ空間をつくったりする人が増えており、住まいの在り方も多様化が進んでいます。必ずしも新たな物件を契約することはなく、一軒家に住んでいる人は敷地内に「離れ」を増築するという手もあります。この記事では、離れの増築に関わる法律や費用の相場、増築事例などをまとめました。離れの増築アイデアを探している人は、ぜひ参考にしてください。

建物の離れとは

昔ながらの建物で、「母屋」「離れ」といった言葉を聞いたことがある人は多いでしょう。母屋とは、敷地内の中心となる建物のことで、普段私たちが生活している住まいを指します。もともとは昔ながらの住宅の中心部分を指す言葉でしたが、次第に「主人が住む建物」という意味をもつようになりました。

一方、離れとは、母屋に付属する補助的な建物のことです。かつては庭を楽しむ部屋や、炊事場・お風呂場などの水回りを扱う部屋として建てられていました。現代では離れの使い方や在り方も多様化しており、ガレージや事務所、店舗などさまざまな方法で活用されています。

離れを増築する際の法規制

生活する住居とは別に建てられた、補助的な建物である離れ。しかし、敷地面積や用途などによっては増築できないこともあるため、法律をよく確認し、業者と相談する必要があります。ここでは、新たに離れを増築する際に注意すべき法規制をまとめました。

敷地内ひとつにつき、ひとつの建物のみ

建築基準法には「一建築物一敷地の原則」という決まりがあり、基本的にはひとつの敷地につき、ひとつの建物しか建てられません。注目すべきは、この建物という語が、「どんな設備を持ったものを指しているか」ということです。

建物の種類は「用途上可分」と「用途上不可分」に分けられ、それぞれ以下のような特徴があります。
・用途上可分:浴室・トイレ・キッチンがある建物
・用途上不可分:浴室・トイレ・キッチンのいずれかがない建物

ひとつの敷地内に、用途上可分の建物をふたつ建てることはできませんが、用途上不可分の建物であれば建築が認められています。そのため現在の住まいとは別に、「水回りの設備がない趣味用の部屋や店舗、倉庫、キッチンとトイレを備えた店舗」などなら建てることが可能です。

建蔽率と容積率が基準値以内

「建ぺい率」とは、敷地面積に対して建築面積が占める割合のことです。ここでいう敷地面積とは、建物の真上から光を当てた時に地盤面に写る影を指す、「水平投影面積」を用います。床面積の合計ではないので注意しましょう。

一方、「容積率」とは、敷地面積に対して建物の延べ床面積が占める割合のことです。建ぺい率と容積率の基準値は地域によって条件が異なるため、それぞれの自治体のルールを確認しましょう。建ぺい率の上限は用途地域がわかれば簡単に数値を調べられますが、注意すべきは容積率の上限です。「指定容積率」と「前面道路による容積率」のふたつの項目がありますが、どちらか厳しいほうが適用されるので、よく数値を確認しておきましょう。

そのほかの法規制

ほかにも、離れの増築に関わる法律としては「北側斜線制限」「絶対高さの制限」などがあります。北側斜線制限とは、日当たり悪化を防ぐためにつくられた、建物の高さ制限のことです。北側の隣地境界線を起点とした屋根の高さと、傾斜の角度について定められており、基準値よりも高い建物は建てられない決まりとなっています。また、類似する法律に「隣地斜線制限」がありますが、一般的な住宅の建築には北側斜線制限が適用されるので注意しましょう。

一方、絶対高さの制限とは、第1種低層住居専用地域や第2種低層住居専用地域、田園住居地域などに適用される建物の高さ制限のことです。都市計画の内容によって上限10mまたは12mに設定されているため、その数値を超える高層の建物は建てられません。

これら以外にも離れ増築に関わる法規制はさまざまあるため、業者と相談しながら建物の高さや広さ、建てる場所などを検討する必要があります。

離れを増築する際の工事費用

離れ増築の工事費用は、1坪あたり50万〜100万円が相場です。しかし、使用する資材によって金額に幅があり、木造や鉄筋、プレハブなどの工法次第で費用は変わってきます。最も費用が安いのはプレハブで、木造、鉄筋の順に費用が高くなります。
プレハブは約50万円/坪、木造は約70万円/坪、鉄筋は100万円/坪ほどを目安とするとよいでしょう。また、施工面積が狭いとかかる費用は安く済みますが、単価は高くなりやすいため注意が必要です。

離れを増築した6つの事例

ここでは、離れ増築の優れた事例を6つピックアップし、構造や面積、予算などの詳細を解説します。離れの活用方法やデザイン、特徴などを知りたい人は、ぜひ参考にしてください。

【事例1】モダンな雰囲気が特徴の「ジムショ」

離れを増築したい方必見! 離れ増築に関わる法規制の紹介と6つの事例
こちらは「SuMiKa」に掲載されているリノベーション事例です。もともと資材や工具置き場として使用されていた小屋を、ナチュラルモダンな建築設計事務所へ改装しました。外壁は機能性・デザイン性に優れたガルバリウム鋼板を使用し、軒天は玄関周りと統一感をもたせたラワンベニヤを貼るなど、異素材を組み合わせたデザインが印象的。もともと内装の床に使用していた床材の余りを建具に使用するなど、費用を抑える工夫も見られます。

・構造:木造軸組住宅(在来工法)
・敷地面積:50㎡未満
・延床面積:50㎡未満
・予算:100万円以上〜150万円未満

【事例2】統一感がありロマン溢れる「バイクガレージ」

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こちらは「SuMiKa」に掲載されているバイクガレージの増築事例です。斜めの屋根と木目の外壁がオシャレな、まるで隠れ家のようなガレージです。広さは3坪ほどで、限られたスペースの小型ガレージですが、引き抜き金物を使った台風対策や、通気工法を取り入れた外壁、断熱材など機能性もしっかりと確保しています。2〜3台ほどのバイクが収納可能なだけでなく、ちょっとした作業部屋やゲストハウス、リモートワークスペースなど幅広く活用できそうです。

・構造:木造(2×4)
・延床面積:50㎡未満
・予算:100万円以上〜150万円未満

【事例3】昭和初期に建てられた古民家を再生した「八反田の家」

離れを増築したい方必見! 離れ増築に関わる法規制の紹介と6つの事例
こちらは「SuMiKa」に掲載されている古民家リノベーションの事例です。昭和初期に建てられた昔ながらの建物の改装と、平家の増築を行いました。既存の建物には耐震・断熱工事を施し、昔の雰囲気を残しつつも現在の生活に合う間取りに改修。襖や畳、障子や引き戸など古民家の魅力はそのままに、水回りなどの設備を一新しました。増築部分は、外装に青森ヒバや漆喰を使用し、内装は障子を用いるなど和のデザインを採用することで、既存部分との調和を重視しています。

・構造:木造(全般)
・敷地面積:300㎡以上
・延床面積:200㎡〜300㎡未満
・予算:3,500万円以上〜4,000万円未満

【事例4】電気工事店に増設したオシャレな住宅

離れを増築したい方必見! 離れ増築に関わる法規制の紹介と6つの事例
こちらは「SuMiKa」に掲載されている増築事例です。すでに敷地の中には電気工事店が建っており、後付けで住宅を増築しました。「たくさんの友人を招いてパーティーが行える、柱や壁のない、できるだけ広いリビング・ダイニング・キッチンを」との要望を受け、柱の少ない鉄骨造の住まいを増築。複数の吹き抜けや連窓、ハイサイドライトなどを設け、室内に自然光が届く明るい空間を目指しました。外装は既存の電気工事店と合わせてホワイトでまとめ、デザイン性の高いガルバリウム鋼板を使用しています。

・構造:鉄骨造
・敷地面積:200㎡〜300㎡未満
・延床面積:150㎡〜200㎡未満
・予算:3,000万円以上〜3,500万円未満

【事例5】5坪の小さな「みいちゃんのお菓子工房」

離れを増築したい方必見! 離れ増築に関わる法規制の紹介と6つの事例
こちらは「SuMiKa」に掲載されているお菓子工房の増築事例です。住宅街にある50㎡未満の敷地に、約5坪の小さなお菓子工房をつくりました。建物の裏には川が流れており、「道路から川までの抜け感を活かせないか」と考案した結果、建物の半分をガラス張りにする大胆なデザインに。採光や風通し、開放感をアップさせつつ、壁に隠れているほうに機能を詰め込むことで、プライバシー性を確保しています。外観は親しみやすい三角の屋根や木目、ホワイトの塗装などを用いて、ナチュラルで可愛らしい雰囲気に仕上げています。

・構造:木造軸組住宅(在来工法)
・敷地面積:50㎡未満
・延床面積:50㎡未満
・予算:700万円以上〜1,000万円未満

【事例6】モルタルと杉板のコントラストが特徴の「house HD」

離れを増築したい方必見! 離れ増築に関わる法規制の紹介と6つの事例
こちらは「SuMiKa」に掲載されている、母屋と事務所を別棟で建てた事例です。「中庭がほしい」という依頼者からの要望を受け、母屋と事務所を分けることで生まれる隙間を中庭として使えないかと考案し、このような設計になりました。将来、この中庭にデッキを設け、リビングの延長として外に出られる空間に改装するそうです。母屋はグレーのモルタルでスタイリッシュな外観に仕上げ、離れの事務所は杉板をメインに用いたナチュラルなデザイン。アクセントに母屋と同じグレーを施すことで、まとまりのある外観になっています。

・構造:木造軸組住宅(在来工法)
・予算:2,500万円以上〜3,000万円未満
離れとは、母屋に付属する補助的な役割をもつ建物のことです。もともとは庭を眺める部屋や水回りをまとめた部屋として使用されていましたが、現代ではライフスタイルに合わせた多様な活用方法が見られます。しかし、離れは浴室・トイレ・キッチンのすべての設備を設けられないことや、建ぺい率・容積率の上限など、守るべき法律が決まっています。場合によっては希望通りの建物が建てられないこともあるので、離れ増築を検討している人は、あらかじめプロに条件を相談することが大切です。
離れ増築に関する詳しい情報を知りたい人は、さまざまな建物の増築実績が豊富な「株式会社カシワバラ・コーポレーション」にご相談ください。

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