“住む”を見つめ直す/クリエイティブリペア Vol.2 –椅子をリペア!【前編】–
古家具をクリエイティブにリペアする職人である荒井健二さん。好評を博したVol.1に続く今回は、リペアの実践編!クラシックな事務用の椅子がみるみるモダンなデザインへ生まれ変わります! Photography_SHINSAKU KATO Text_MITSUHARU YAMAMURA
公開日 2016.09.26
更新日 2022.01.07
自分で家具をリペアしたい!
けれど、あたりきたりじゃグッとこない。せっかくならば、元通りに「修復する」ってだけではなく、自分の手ワザと感性をめいっぱい使って、世界でたったひとつのものを「作り上げ」たい。そんな“クリエイティブなリペア”を提唱する家具職人、荒井健次さんといっしょに学ぶ、リペア実践編。まずは初心者でも比較的手を出しやすい、張り替えの方法を伝授します。
今回、サンプルとして使うのは、こちら。ニッポンが誇る老舗家具メーカー「天童木工」の事務用椅子。スクエアなフォルムはシンプルで、レトロなかわいさもあるけれど、張られた黒いビニールレザーが、いかにも生真面目な印象。
▲後ろから見るとプライウッドの木目が見えて、レトロな雰囲気も。
この椅子の最大の特徴とも言えるのが、座面と背もたれが一体型で、すべてを張り地で覆っていること。こういった椅子は生地を変えるだけで、ガラっと印象が変わるんです!
ってことで、まずは解体から。この椅子は接着面にビニールコードが埋め込まれパイピングがなされていたため、マイナスドライバーを使ってテコの原理で持ち上げ、手で引っ張って外します。どうしてコードが出ているのかって?それは後ほど。
さらに溝の部分にカッターを押し込むようにし、スライドさせて張り地を切っていきます。「ほんとは留められた針を抜くのですが、切ってしまっても、仕上がりに大きな支障はありません。かんたん裏技です!」ただ、できるだけ生地が残らないように、きれいにまっすぐ切るのがコツ。
左が身ぐるみ剥がされて(?)ヌードになった状態の座面。これはウレタンもきれいで、比較的状態がよいけれど、中にはもっとヘタれたり、変色したり、ボロボロになっているものもあるとか。そんな時はもちろん、さらにふわふわ感、むちむち感を出したい時にも、緩衝材を補充します。
一般的に椅子のクッションは、現在すでに張られているウレタン、もしくはもっと硬くしたい時はチップウレタンを使いますが、今回荒井さんが選んだのは、わた。曰く、「わたはウレタンを保護しつつも、ふんわりとした風合いが出るので、ひと味違う座り心地なんです」とニヤリ。いずれもホームセンターなどで購入可。ただ、古くなったぬいぐるみやふとんなどの中わたをバラして再利用するというのも、ひとつのアイデア。
これでひとまず椅子の解体は完了! 次はクリエイティブリペアで重要な張り地作りを紹介します!
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パッチワークで生み出す、1点ものの張り地!
そして肝心カナメの張り地。「もちろん1枚でもいいですが、バラバラの色柄の好きな生地をパッチワークするのも面白いと思います」と荒井さん。やり方はこう。まず、剥がしたもとの張り地を型紙がわりに使い、ひとまわり大きなサイズで布地をとり、並びや組み合わせを考えます。これぞセンスの見せどころ!
ちなみに荒井さんは、ファッションブランド「ミナ・ペルホネン」のインテリア用ファブリック「dop」のハギレを一部に使っています。そう、実は荒井さん、この「dop」を古い家具に張ることを許された、数少ない職人さんのひとりだそう。
それらをミシンで繋ぎ合わせます。表に来る生地どうしを合わせ、端を縫います。見ると表と裏、逆を縫ってる!?と一瞬ビビりましたが、これは「dop」が両面使える生地だから。念のため。
そして縫い合わされた張り地を本体に合わせ、さっそくタッカー、もしくは鋲打機と呼ばれる、でっかいホッチキスのような道具を使って留めていきます。ホームセンターでも数千円で売っていますが、100円ショップで「工作用ホッチキス」という名で同じ機能のものを(少し高く300円で)見かけたという情報も?
ちなみに荒井さんが使っているのは、“エアータッカー”と呼ばれる空気圧で針を打ち込むタイプのもの。高価ですが、こちらのほうがきちんと奥までしっかり入るとか。
まずはポイントとなるところの溝におおまかに留め、その後全体へ。かなりびっしりと隙間なく刻んで打ち込んでいるのが分かります。「中に押し込んで、力を入れてぐいっと。角はシワが抜けるように、力強く引っ張りながら」がコツ。
最後に余った生地を切っていきます。タッカーを打ち込んだ外側にカッターの刃を入れて、スライドさせます。
写真を見るだけで伝わってくるこだわりのクリエイティブリペア! 張り地制作もいよいよ大詰めです!
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魂を込める最後の総仕上げに突入!
余り生地を切る、これが意外と地味に時間がかかる作業。でも完成間近のため、気持ちはウキウキ、ワクワク。荒井さんも思わず笑顔がこぼれます。
最後はパイピング。そう。このコードはタッカーのあとを見せないための工夫だったのです。今回は編んで椅子の座面にも使われる籐(ラタン)を使用。トンカチを使って、しっかりとキワに押し込みます。
そして、ようやく張り地が完成!座面にはシワひとつなく、キワにはペーパーコードが埋められているので、見た目もきれいです。
さて、次回は脚のリペア編!スチールの脚がどうクリエイティブに変わっていくのか。気になるところ。
Information
長野県で暮らす荒井さんが、地元にアトリエ兼ショップをオープン!機会のある方はぜひ!
Ph.D.(フッド)
公式ホームページ:http://www.ph-d.jp/
公式フェイスブックページ:https://www.facebook.com/ph.d.jp/
住所:長野県東御市羽毛山897-1
電話番号:050-5309-2102
メール:info@ph-d.com
営業時間:アトリエ/10:00〜18:00(不定休:お越しの際はメールにて事前のご連絡をお願いいたします)
ショップ/13:00〜18:00(土・日・祝日、イベント等でクローズの場合があります。Facebookヘージをご確認ください)
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